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間章
間章6幕 プレゼント<present>
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「こちらでございます」
そう案内された浴室には靴下を脱いで裸足になり、ブラシで浴室を掃除するメイドが3人いました。
「女給1役の伊藤でございます。代表して失礼します」
「では19時30分頃は何をされていましたか?」
「はい。私はまずお車からおろした瑠麻お嬢様のボストンバッグをお部屋に持っていき、片付けました。女給2役は智恵理お嬢様の荷物を片づけるようにと女給5役から命じられておりました。女給3役は私達よりも早く浴室へやって来て、掃除の準備をしておりました」
「なるほど。その間にどなたかとすれ違ったりはされましたか?」
「私はどなたともあっておりません。しかし女給2役は執事4役と会っているはずです」
「そうなのですか?」
「はい。私が智恵理お嬢様のお部屋に荷物を片づけ終えた後、浴室へ向かう間に、お車の整備に使用する機材を持った執事4役とすれ違っております」
そうメイド2が答えます。
「なるほど。私の部屋のクローゼットで鍵をみませんでしたか?」
「あっ智恵理お嬢様。あの鍵はどこにあってもよかったものなので推理に関係なしでございます」
「あっそうなんですか」
「それともう一つ情報でございます。執事6及び女給6には犯行が不可能です」
「なぜですか?」
「彼らはまだ帰ってきておりません」
「そうなんですか」
執事3人、メイド3人から話を聞いた限りだとこの6人に犯行は無理そうですね。
となると、まだ帰ってきていない二人を除いた、残りの執事2人、メイド2人が犯人ということになります。
全く他の人から話が出なかった執事5役と厨房に入ったというメイド2人が特に怪しいですね。
自分は探偵だと言い聞かせ、頭を必死に回転させつつ、執事4に会いに行くことにしました。
執事4に会うためにガレージまでやってきました。
車の整備をしていますね。
「すいません。今よろしいですか?」
「もちろんでございます。執事4役でございます」
「19時30分頃は何をされていましたか?」
「私は、館内設備を担当しております。お嬢様が到着する前より、厨房の換気設備の点検をし、その後2階の部屋すべての電球を取り替えておりました」
うん。怪しすぎる。
「そちらを終えた後、ガレージに向かい、お車のメンテナンスをさせていただこうとしたのですが、機材が足りていなかったので一度取りに行っておりました」
「だれかとすれ違ったりとかはしましたか?」
「女給2役と階段であっております」
この辺の食い違いはないですね。
「わかりました。ありがとうございます」
「推理がんばってくださいませ」
「? はい。有馬さん残りメイドさんのところに案内してください」
「かしこまりました」
案内されたのは遊技場でした。
ビリヤード台からダーツ、バーカウンターなどが設置されており、改めて富の無駄遣いを感じます。
「先ほどぶりでございます」
そう女給5と書かれたバッヂを付けている田辺が迎えてくれます。
「19時30分頃には何をされていましたか?」
「はい。その時間より少し前に女給4とともに厨房へ行き、こちらの遊技場に不足している物を取りに参りました」
「なるほど。ではそのあとは何を?」
「部屋に置いておく飲み物や軽食などを瑠麻お嬢様のお部屋と智恵理お嬢様のお部屋に置き、残りを厨房に戻し、1階へ降りました。その後は智恵理お嬢様をお部屋までご案内し、いまバーの準備に取り掛かっております」
なるほど。
「メイド4さんもご一緒でしょうか?」
「いえ。私は厨房で受け取った従業員用の食事を控室に運んでおりました。その後、こちらに参りまして、遊技場の清掃を行っておりました」
見えてきましたね。
「では最後に執事5さんに会いたいのですが」
「かしこまりました。彼は庭にいると思います」
そうして再び庭へとやってきます。
噴水の整備をしているあの人かな?
「すいません。いまよろしいですか?」
「もちろんです。執事5役です」
「あなたは19時30分頃何をしていましたか?」
「何もしていませんでした」
「はい?」
「そのまま字の通りです。何もしていませんでした」
「智恵理お嬢様、彼はその時間休憩だったのです」
なるほど。だから誰とも会っていないんですね。
「休憩の終わりが20時だったので、それ以前のことはわかりません」
「わかりました」
「では調査終了です。一度目の推理パートに参らせていただきます」
「はい」
「では応接室に参りましょう。お茶をお出しいたします」
「わかりました」
私と星、有馬は応接室までやってきました。エルマは途中で飽きてどっかに行ってしまいました。
「ではここまでの推理をお願いします」
「はい。まず犯行が可能だった人物をあげていきます。執事4、執事5、メイド4、メイド5の4名になります」
「なるほど。執事5役が犯行可能というのはなぜでしょうか?」
「休憩だからです。休憩中にキッチンに忍び込み、凶器の包丁を持ってくるくらいはできるでしょう。今回の事件は密室になっていない、誰でも鍵をかけて部屋を出ることができたので凶器を持ち出せるかどうかがポイントです」
「流石です」
そう星が言います。
「ですが問題はここからです。今犯人として名前が挙がってる4人は全員犯行が可能だったということです。つまり誰がやってもおかしくはないんです」
「ではもう一度4人を集めましょうか?」
「お願いします」
4分ほど待つと犯人候補の4人が応接室に集まります。
「……というわけで、あなた方4人の中に犯人がいると思います」
ここにいる4人の行動を再びあたまの中で整理します。
執事4は館内設備の点検及び車の整備。
執事5は休憩。
メイド4は従業員用の食事を控室に運んだ後、遊技場の清掃。
メイド5は私の案内を終えた後、遊技場でバーの準備。
えっ?
おかしい。
一つ所おかしいところがある。
ということは……あの人が犯人ですね。
一応裏をとりましょうか。
私がそのような思考の後、執事5に視線を向けます。
「執事5さん。貴方は事件が起きた頃、休憩に行っていたんですよね?」
「はい、そうです」
「休憩はどちらで取っていましたか?」
「控室です」
「……。では続いてメイド4さんにききます」
視線をすらしてメイド4を見ます。
「はい」
「休憩の人のために食事を厨房から持って控室に行ったんですよね?」
「はい。その通りでございます」
「なぜ執事5さんと会っていないのですか?」
「それは……」
「わからない。そうですよね?」
「はい」
「それもそうです。だって執事5さんは控室にいなかったのですから!」
き、決まった……。
「では智恵理お嬢様、そう推理した過程をお聞かせください」
「簡単な話です。有馬さんおっしゃってたじゃないですか。従業員は仕事中嘘つかないって」
「そのとおりでございます」
「つまり休憩中のことは嘘をつくと言えます」
でなければわざわざ「仕事中」などと言わないですから、と付け足します。
「なるほど」
「執事5さんとメイド4さんが会わなかったことがそれで説明できます。休憩中にこっそりキッチンへ忍び込み……。いえ、こっそりじゃなくてもいいですね。休憩中の食事を取りに来た風を装ってでもいいですね。その手で包丁を取り、星さんを殺害し、再び厨房に包丁を返した、ということです」
「では答え合わせと行きましょうか」
そう有馬が手をポンと叩き、自らに注目を集めます。
「智恵理お嬢様の推理が正しければ執事5役が休憩中に星を殺害し、その証拠を隠滅したということになります。異論はありますかな?」
そう有馬は執事5を睨みます。
すると執事5が懐から紙を取り出し、席を立ちあがります。
「そうだ! 俺がやったんだ!」
おお! すごい迫力。
「だれでもよかったんだ! 俺の力を示せればな! とこんなところですかね」
「ありがとうございます。彼は執事5役の小海でございます」
「小海です。あらためてよろしくお願いいたします」
「あっはい」
「この別荘の警備を担当させていただいております」
警備担当を犯人役にするなんて……。
「では正解した智恵理お嬢様にはプレゼントがございます。お受け取り下さい」
大きめの袋を星さんが渡してくれます。
「これはなんですか?」
「是非開けてみてください」
頭に疑問符をうかべつつ、外装を破り箱を開けます。
あっ。エルマが欲しがってた美顔ローラー……。
「是非それを瑠麻お嬢様の前で使ってあげてください」
「わかりました」
「ではいい頃合ですね。お食事にしましょう。食堂までご案内いたします。瑠麻お嬢様を捜索、発見し次第お連れなさい」
「「「はい、かしこまりました」」」
三人のメイドが返事をし、この場はお開きになりました。
私が食堂に着き10分ほど待っていると半泣きのエルマがやってきたので話しかけます。
「エルマどこいってたの?」
美顔ローラーを転がしながらです。
「うあああああああああああん!」
私の向かいに座ったエルマは机に突っ伏し、大声で泣く振りを始めました。
to be continued...
そう案内された浴室には靴下を脱いで裸足になり、ブラシで浴室を掃除するメイドが3人いました。
「女給1役の伊藤でございます。代表して失礼します」
「では19時30分頃は何をされていましたか?」
「はい。私はまずお車からおろした瑠麻お嬢様のボストンバッグをお部屋に持っていき、片付けました。女給2役は智恵理お嬢様の荷物を片づけるようにと女給5役から命じられておりました。女給3役は私達よりも早く浴室へやって来て、掃除の準備をしておりました」
「なるほど。その間にどなたかとすれ違ったりはされましたか?」
「私はどなたともあっておりません。しかし女給2役は執事4役と会っているはずです」
「そうなのですか?」
「はい。私が智恵理お嬢様のお部屋に荷物を片づけ終えた後、浴室へ向かう間に、お車の整備に使用する機材を持った執事4役とすれ違っております」
そうメイド2が答えます。
「なるほど。私の部屋のクローゼットで鍵をみませんでしたか?」
「あっ智恵理お嬢様。あの鍵はどこにあってもよかったものなので推理に関係なしでございます」
「あっそうなんですか」
「それともう一つ情報でございます。執事6及び女給6には犯行が不可能です」
「なぜですか?」
「彼らはまだ帰ってきておりません」
「そうなんですか」
執事3人、メイド3人から話を聞いた限りだとこの6人に犯行は無理そうですね。
となると、まだ帰ってきていない二人を除いた、残りの執事2人、メイド2人が犯人ということになります。
全く他の人から話が出なかった執事5役と厨房に入ったというメイド2人が特に怪しいですね。
自分は探偵だと言い聞かせ、頭を必死に回転させつつ、執事4に会いに行くことにしました。
執事4に会うためにガレージまでやってきました。
車の整備をしていますね。
「すいません。今よろしいですか?」
「もちろんでございます。執事4役でございます」
「19時30分頃は何をされていましたか?」
「私は、館内設備を担当しております。お嬢様が到着する前より、厨房の換気設備の点検をし、その後2階の部屋すべての電球を取り替えておりました」
うん。怪しすぎる。
「そちらを終えた後、ガレージに向かい、お車のメンテナンスをさせていただこうとしたのですが、機材が足りていなかったので一度取りに行っておりました」
「だれかとすれ違ったりとかはしましたか?」
「女給2役と階段であっております」
この辺の食い違いはないですね。
「わかりました。ありがとうございます」
「推理がんばってくださいませ」
「? はい。有馬さん残りメイドさんのところに案内してください」
「かしこまりました」
案内されたのは遊技場でした。
ビリヤード台からダーツ、バーカウンターなどが設置されており、改めて富の無駄遣いを感じます。
「先ほどぶりでございます」
そう女給5と書かれたバッヂを付けている田辺が迎えてくれます。
「19時30分頃には何をされていましたか?」
「はい。その時間より少し前に女給4とともに厨房へ行き、こちらの遊技場に不足している物を取りに参りました」
「なるほど。ではそのあとは何を?」
「部屋に置いておく飲み物や軽食などを瑠麻お嬢様のお部屋と智恵理お嬢様のお部屋に置き、残りを厨房に戻し、1階へ降りました。その後は智恵理お嬢様をお部屋までご案内し、いまバーの準備に取り掛かっております」
なるほど。
「メイド4さんもご一緒でしょうか?」
「いえ。私は厨房で受け取った従業員用の食事を控室に運んでおりました。その後、こちらに参りまして、遊技場の清掃を行っておりました」
見えてきましたね。
「では最後に執事5さんに会いたいのですが」
「かしこまりました。彼は庭にいると思います」
そうして再び庭へとやってきます。
噴水の整備をしているあの人かな?
「すいません。いまよろしいですか?」
「もちろんです。執事5役です」
「あなたは19時30分頃何をしていましたか?」
「何もしていませんでした」
「はい?」
「そのまま字の通りです。何もしていませんでした」
「智恵理お嬢様、彼はその時間休憩だったのです」
なるほど。だから誰とも会っていないんですね。
「休憩の終わりが20時だったので、それ以前のことはわかりません」
「わかりました」
「では調査終了です。一度目の推理パートに参らせていただきます」
「はい」
「では応接室に参りましょう。お茶をお出しいたします」
「わかりました」
私と星、有馬は応接室までやってきました。エルマは途中で飽きてどっかに行ってしまいました。
「ではここまでの推理をお願いします」
「はい。まず犯行が可能だった人物をあげていきます。執事4、執事5、メイド4、メイド5の4名になります」
「なるほど。執事5役が犯行可能というのはなぜでしょうか?」
「休憩だからです。休憩中にキッチンに忍び込み、凶器の包丁を持ってくるくらいはできるでしょう。今回の事件は密室になっていない、誰でも鍵をかけて部屋を出ることができたので凶器を持ち出せるかどうかがポイントです」
「流石です」
そう星が言います。
「ですが問題はここからです。今犯人として名前が挙がってる4人は全員犯行が可能だったということです。つまり誰がやってもおかしくはないんです」
「ではもう一度4人を集めましょうか?」
「お願いします」
4分ほど待つと犯人候補の4人が応接室に集まります。
「……というわけで、あなた方4人の中に犯人がいると思います」
ここにいる4人の行動を再びあたまの中で整理します。
執事4は館内設備の点検及び車の整備。
執事5は休憩。
メイド4は従業員用の食事を控室に運んだ後、遊技場の清掃。
メイド5は私の案内を終えた後、遊技場でバーの準備。
えっ?
おかしい。
一つ所おかしいところがある。
ということは……あの人が犯人ですね。
一応裏をとりましょうか。
私がそのような思考の後、執事5に視線を向けます。
「執事5さん。貴方は事件が起きた頃、休憩に行っていたんですよね?」
「はい、そうです」
「休憩はどちらで取っていましたか?」
「控室です」
「……。では続いてメイド4さんにききます」
視線をすらしてメイド4を見ます。
「はい」
「休憩の人のために食事を厨房から持って控室に行ったんですよね?」
「はい。その通りでございます」
「なぜ執事5さんと会っていないのですか?」
「それは……」
「わからない。そうですよね?」
「はい」
「それもそうです。だって執事5さんは控室にいなかったのですから!」
き、決まった……。
「では智恵理お嬢様、そう推理した過程をお聞かせください」
「簡単な話です。有馬さんおっしゃってたじゃないですか。従業員は仕事中嘘つかないって」
「そのとおりでございます」
「つまり休憩中のことは嘘をつくと言えます」
でなければわざわざ「仕事中」などと言わないですから、と付け足します。
「なるほど」
「執事5さんとメイド4さんが会わなかったことがそれで説明できます。休憩中にこっそりキッチンへ忍び込み……。いえ、こっそりじゃなくてもいいですね。休憩中の食事を取りに来た風を装ってでもいいですね。その手で包丁を取り、星さんを殺害し、再び厨房に包丁を返した、ということです」
「では答え合わせと行きましょうか」
そう有馬が手をポンと叩き、自らに注目を集めます。
「智恵理お嬢様の推理が正しければ執事5役が休憩中に星を殺害し、その証拠を隠滅したということになります。異論はありますかな?」
そう有馬は執事5を睨みます。
すると執事5が懐から紙を取り出し、席を立ちあがります。
「そうだ! 俺がやったんだ!」
おお! すごい迫力。
「だれでもよかったんだ! 俺の力を示せればな! とこんなところですかね」
「ありがとうございます。彼は執事5役の小海でございます」
「小海です。あらためてよろしくお願いいたします」
「あっはい」
「この別荘の警備を担当させていただいております」
警備担当を犯人役にするなんて……。
「では正解した智恵理お嬢様にはプレゼントがございます。お受け取り下さい」
大きめの袋を星さんが渡してくれます。
「これはなんですか?」
「是非開けてみてください」
頭に疑問符をうかべつつ、外装を破り箱を開けます。
あっ。エルマが欲しがってた美顔ローラー……。
「是非それを瑠麻お嬢様の前で使ってあげてください」
「わかりました」
「ではいい頃合ですね。お食事にしましょう。食堂までご案内いたします。瑠麻お嬢様を捜索、発見し次第お連れなさい」
「「「はい、かしこまりました」」」
三人のメイドが返事をし、この場はお開きになりました。
私が食堂に着き10分ほど待っていると半泣きのエルマがやってきたので話しかけます。
「エルマどこいってたの?」
美顔ローラーを転がしながらです。
「うあああああああああああん!」
私の向かいに座ったエルマは机に突っ伏し、大声で泣く振りを始めました。
to be continued...
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