上 下
79 / 259
間章

間章4幕 クイズ<quiz>

しおりを挟む
 車は関越自動車道を進み、藤岡ジャンクションを長野方面に進みます。そして入った上信越自動車道を走りながらエルマが話題を変えます。
 「そういえばチェリー知ってる?」
 「ん? なにを?」
 「『エレスティアナ』の自動車の話」
 「あれって噂じゃなかったの?」
 「見つけた人がいるらしいよ。でもえげつないくらい時間のかかるクエストなんだってさ」
 「うーん。デスペナ明けたらやってみよう」
 「一緒に行くよー。でもチェリーの場合必要なさそうな気がするんだけどね」
 「どうして?」
 「短距離なら滑ってるし、長距離は≪テレポート≫じゃん」
 「そうなんだけどね。≪スライド移動≫はTPで短時間だし、≪テレポート≫はMP消費するから」
 「んー。精霊駆動式の自動車もMP消費大きいと思うなぁ」
 「まぁ手に入れてから考えるよ」
 少し<Imperial Of Egg>の話もしつつ、目的地に向かっていきます。
 本当なら私が運転変わってあげたいんですけどね。それやったらリアルでもデスペナルティーになってしまいますね。
 「ごめんね。エルマ。ずっと運転させちゃって」
 「いいよいいよ。どうせチェリー免許持ってないでしょ?」
 「持ってるには持ってるけど、本物の車は運転したことない」
 時代がすすみ、免許を取るときはVRやAR拡張現実を用いて、本物の車を運転することなく、免許を取ることができるようになっていました。昔は、教習所というところに行ってなかなか大変だったと親から聞かされた時には、この時代に生まれてよかったと思ったほどです。
 「VR講習かー。私もVR講習だったよ。でもそれで免許取った後が大変。お父様にめちゃくちゃ叱られながら敷地内で運転して練習したもん」
 敷地内……。
 「チェリー?」
 「いや。なんでもない」
 「そう? あと20分くらいで高速降りるかな?」
 ナビを見ながらエルマがそう言います。
 「結構近くに感じるね」
 「だよねー。意外と早いんだよね」
 「意外だった」

 二人で懐かしのアニメソングメドレーを歌いながら、高速碓氷軽井沢インターチェンジを出て、料金所を通り抜け県道43号線を軽井沢バイパスへ向かって走ります。
 「チェリー窓開けるね!」
 そう言ったエルマが手元のボタンを操作し、窓を開けます。
 「わーっ! 涼しい!」
 「天然のクーラーだー!」
 二人してテンションを爆上げし、窓が開いてるのにも関わらず、懐かしアニメソングの熱唱を続けます。
 「やっぱこの作品好きだなー!」
 「わかるー。パイロットのために、死ぬ気で歌うのがいい」
 「えっ? 歌手を守るために死ぬ気で操縦するのがいいんでしょ?」
 「…………」
 「…………」
 気まずい空気が流れます。
 「こ、これ懐かしいなぁー! 『総理に代わってデコピンよ!』」
 「あー。懐かしいー」
 再び和やかなな空気が帰ってきます。
 どこ行ってたんだよ。もっと早く帰ってこいよ。
 「あたしはあれも好きだなー。『そちひか』」
 「あー。懐かしい! 『そちら光が丘消防署』かー! 見てたよねー」
 熱唱を辞め、昔のアニメ雑談に花を咲かせていると、エルマの別荘が見えて来たようです。
 「チェリー見えて来たよー」
 「おおー! うぇ!?」
 お城ですね。
 「ん?」
 「ん? じゃないよ! なにあれ! お城じゃん!」
 「お祖父様の趣味だったみたい」
 「え、えー……」
 やっぱりスケールが違いますね。
 もし何かあったらエルマに全力土下座で助けてもらおう。

 別荘とは言えないほど大きなお城に到着した私達を使用人が迎えてくれます。
 「お待ちしておりました。瑠麻お嬢様、智恵理お嬢様」
 んー。慣れませんね。
 「じゃぁ車よろしくねー。いくよーチェリー」
 「あっ、うん」
 車から降りるエルマを追って私も車を降ります。
 その車に執事が乗り込み、駐車場まで車を走らせていくのを背後に感じつつ、一足早く、大きな門の前に着いたエルマと肩を並べます。
 「お待ちしておりました」
 そう言った執事が扉を開け、私を招き入れてくれます。
 
 「うわー! すっごい!」
 外装もスウェーデンのグリプスホルム城に似せているようでしたが、内装もかなり、再現度が高いです。
 「グリプスホルム城をイメージしたのかな?」
 私はそうエルマに呟きました。
 「はい。こちらお祖父様がスウェーデンに旅行に行かれた際、甚くお気に召されたようで、帰国後すぐに施工いたしました」
 そこにエルマの姿はなく、背後にいた老齢の執事が答えてくれます。
 「そうだったんですか」
 「はい。さすがに湖までは再現することは断念しておりましたが、それでも素晴らしい出来だと思います。智恵理お嬢様はお詳しいのですね」
 「いえ。そこまで詳しいというわけでは……」
 「では僭越ながら……問題を出させていただいてもよろしいでしょうか」
 「あっ、はい」
 「第一問目でございます。ルートヴィヒ2世の隠れ家として建造されたお城はなんというお城でしょうか」
 「ノイシュヴァンシュタイン城です」
 これは簡単ですね。『ヴァンヘイデン』のお城もここがモチーフだったはずです。
 「さすがでございます。簡単すぎましたね。では第二問目、少し難易度をあげさせていただきます」
 「はい」
 少し楽しくなってきました。
 「表面積が世界最大のお城といえばどこでございましょうか」
 「ふっ。マルボルク城ですね」
 「おや。こちらも正解でございますか。瑠麻お嬢様にも見習っていただきたいものですね」
 そう言えば肝心なエルマはどこだろう。
 「智恵理お嬢様には簡単な問題かもしれませんが最後の問題とさせていただきます」
 「はい」
 どんな問題だろう。
 「魔法学生の映画撮影に使われ、年間来場者数80万人を記録するイギリスにあるお城は何でございましょう」
 「アニック・カッスルです」
 「流石でございます。ではそこでこそこそしている瑠麻お嬢様に出題です」
 「ひゃ! ひゃい!」
 あっエルマいたんだ。階段の横でしゃがみこんで隠れてたのは気付かなかった。
 「1909年マンチェスター公爵夫妻に売却された富豪の医者、ミッシェル・ヘンリーの私邸とはなんでございましょう」
 あー。カイルモア修道院ですね。
 ギャンブルの借金で手放さざるを得なかったそうですよ。
 「わかりません!」
 「でしょうね。では智恵理お嬢様、お答えを」
 「カイルモア修道院です」
 「正解でございます。瑠麻お嬢様。不勉強でございます。後ほど、お部屋で勉強致しましょう」
 「うああああああん!」
 そういってエルマは階段を駆け上り、どこかへ行ってしまいました。
 「まったく。私は有馬と申します。瑠麻お嬢様の教育係を仰せつかっておりました」
 なるほど。それでエルマは逃げたのか。この人スパルタっぽいし。
 「やはり智恵理お嬢様はお詳しかったですね」
 「いえいえ」
 …………。全部<Imperial Of Egg>でモチーフになってるお城なんですよ……。

 居なくなってしまったエルマを探す、と有馬は階段を上っていきました。
 私はエルマが居ないと勝手がわからないのでその場でぼーっと立っています。
 「智恵理お嬢様、お久しぶりでございます」
 そう声をかけられ、私は振り向きます。
 うん。このメイドさんの名前がわからない。
 「短い間ですが身の回りのお世話をさせていただきます。田辺でございます」
 「あっ、おねがいします」
 「瑠麻お嬢様が逃亡されてしまったので退屈でしょうが、まずはお部屋に案内させていただきます」
 「はい」
 「ではお足もとお気をつけくださいませ」
 階段の方を指さし、2階へと案内してもらいます。
 私が上る段の数段後ろを登り、落下しても受け止められる位置を取っていますね。
 執事さんもメイドさんもすごいですね。
 
 部屋の前まで案内されたので、扉を開けて入ります。
 「お荷物は部屋のクローゼットに入れさせていただきました」
 「ふぇ!?」
 荷物って私、下着しか……。
 とととっとクローゼットに向かい、バンと開くと、丁寧に畳まれた下着が鎮座していました。
 半泣きになりつつ、田辺に声をかけます。
 「これは誰が……?」
 「私の部下の女給にやらせました」
 も……もう嫌だ……。

 先ほどのクイズは私達をあそこに足止めし、車に積んであった荷物を降ろし、部屋に運ぶまでの時間を稼ぐものだったと田辺から聞き、執事もメイドも手段選ばないんだなーという感想を抱きました。

 逃亡中だったエルマがトイレ内部で発見され、買い込んだ材料で食事が完成するまでの間、エルマの部屋でゲームでもしようという話になりました。
 「なんのゲームする?」
 「っていっても二人だしね」
 「人はいくらでも増やせるよ」
 「あっそっか。何かやりたいゲームある?」
 私がそうエルマに話しかけとドアがノックされます。 
 「では余興に推理ゲームでもいかがでしょうか」
 扉を開け、そこから姿を現した有馬にそう提案されます。
 「「推理ゲーム……」」
 「ご案内いたします。瑠麻お嬢様と智恵理お嬢様にはこの密室殺人の謎を解いていただきましょう」

 2階の最奥の部屋に到着します。
 「こちらの鍵は智恵理お嬢様の部屋のクローゼットに隠してあります」
 そう言われエルマが私の部屋に行き、鍵を取ってきました。
 その扉を開け、中へ入ると死体役のメイドが転がっていました。
                                      to be continued...
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ゾンビのプロ セイヴィングロード

石井アドリー
SF
東京で営業職に三年勤め、youtuberとしても活動していた『丘口知夏』は地獄の三日間を独りで逃げ延びていた。 その道中で百貨店の屋上に住む集団に救われたものの、安息の日々は長く続かなかった。 梯子を昇れる個体が現れたことで、ついに屋上の中へ地獄が流れ込んでいく。 信頼していた人までもがゾンビとなった。大切な屋上が崩壊していく。彼女は何もかも諦めかけていた。 「俺はゾンビのプロだ」 自らをそう名乗った謎の筋肉男『谷口貴樹』はロックミュージックを流し、アクション映画の如く盛大にゾンビを殲滅した。 知夏はその姿に惹かれ奮い立った。この手で人を救うたいという願いを胸に、百貨店の屋上から小さな一歩を踏み出す。 その一歩が百貨店を盛大に救い出すことになるとは、彼女はまだ考えてもいなかった。 数を増やし成長までするゾンビの群れに挑み、大都会に取り残された人々を救っていく。 ゾンビのプロとその見習いの二人を軸にしたゾンビパンデミック長編。

Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組

瑞多美音
SF
 福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……  「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。  「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。  「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。  リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。  そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。  出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。      ○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○  ※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。  ※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

鋼月の軌跡

チョコレ
SF
月が目覚め、地球が揺れる─廃機で挑む熱狂のロボットバトル! 未知の鉱物ルナリウムがもたらした月面開発とムーンギアバトル。廃棄された機体を修復した少年が、謎の少女ルナと出会い、世界を揺るがす戦いへと挑む近未来SFロボットアクション!

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...