VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑

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第1章 セーラム

第1章1幕 始まり<tutorial>

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 ついにこの時がやってきました。
 <Imperial Of Egg>のVR化メンテナンスの終了時刻です。

 アップデートが始まるギリギリまで旅をし、思い出を胸に刻み込んでいました。
 開始5分前にホームに戻り、ログアウトしました。
 
 しっかり睡眠をとり今は午後7時45分になっています。
 メンテナンスが終わるのは午後8時なので15分前になります。
 15分前行動。社会人の基本ですね。やったことないですが。
 
 専用端末を頭にかぶり、準備万端です。

 端末に表示されている現在時刻を見ながら起動の仕方を確認します。

 装着し、右側にあるスイッチを入れると目の高さにあるディスプレイに表示が出るそうです。
 そのあたりは従来の完全没入型VRゲーム用端末と大差ないようですね。
 
 スイッチを入れると起動音ともに、ディスプレイに<Imperial Of Egg>が表示されています。
 他のVRゲームと互換性もあるようなのでここから目的のゲームを選ぶみたいですね。
 専用端末と言っているのに互換性を持たせるあたり<Imperial Of Egg>の運営は自信があるようですね。
 
 ディスプレイ越しに指で操作すると他の項目に移れるみたいです。
 攻略サイトや公式HP、動画サイトなどに接続することもできるのが分かりました。
 あと十数分が遠く、待ち遠しいです。

 すーはー、すーはーと呼吸を整えつつ、ディスプレイを見ているとテロップが表示されます。
 
 『再キャラクタークリエイトが可能な時間になりました。ご希望のプレイヤー様は<Imperial Of Egg>の起動をお願いします。』
 
 早めにかぶっておいてよかった!
 私は早速、<Imperial Of Egg>の項目をタッチし起動します。

 『<Imperial Of Egg>を起動します。目を閉じてください。』

 と出たので素直に従います。
 瞼の向こうで様々な色の光が点滅し、身体の重みが感じられなくなってきます。
 
 おお……これがVRか……。
 
 『目を開けてください。』

 目を閉じていたはずなのに見えたテロップに疑問を感じず、目を開きます。
 
 「ここはキャラクタークリエイトルームです。担当NPCポテトでございます」

 目を開けるとそこはあまり広くはない白い壁に囲まれた空間でした。
 
 おお! 身体が現実のように動く! すごい!
 と内心考えながらポテトと名乗ったNPCのところまで行きます。
 
 懐かしいヴィクトリアンメイド型のメイド服を着用したポテトに話しかけてみます。

 「ここは<Imperial Of Egg>の中でしょうか?」
 「はい。そうでございます」
 
 すごい! NPCと会話してる!

 「ポテトさん。可愛いメイド服ですね」
 ちょっと世間話でもしてみましょうか。
 「ありがとうございます。他にもフレンチメイドとかもありますよ」
 「それはちょっと見てみたいかも」
 「少々お待ちください」
 そう言ってメニュー画面を操作しています。
 キラキラとした光に包まれたポテトは次の瞬間、フレンチメイド型のメイド服を身に着けていました。
 「おお……」
 「思考操作が可能なので、メニューと考えるだけで開くことができます」
 メニューと頭の中で呟いてみます。
 するとメニュー画面が現れました。
 「おお……ハイテク……」

 「あれ? 装備とか何もないですが?」
 「はい。これからアカウントの登録やログインをしていただくのですが、そちらがまだお済ではないので」
 これは失礼しました。
 初VRで舞い上がってしまった感じですね。
 部屋にあった鏡をみて現実の身体と同じ顔と姿だったことにいま気付きました。

 「ではアカウントの確認をしますので情報の入力をお願いします」
 ポテトがそう言うと目の前に画面が出てきます。

 『登録メールアドレス:  』
 『登録パスワード:    』
 とあったので入力します。

 「プレイヤーネーム:チェリー様でお間違いないですか?」
 「はい。間違いないです」
 「確認完了致しました。ではアバターの読み込みを開始します」
 
 1分ほどかかるとのことだったので部屋をぶらぶらしてきます。
 やはり現実の身体と同じように動くのですが、動くと疲れますね。
 動かないでいいようにいろいろ考えておいてよかった。
 鏡で自分の顔を見て、げんなりしているとポテトから声がかかります。
 
 「チェリー様、準備ができました」
 「あっはい」
 ポテトのところまで歩いていきます。
 「では身体を置換しますね」
 「お願いします」
 
 私の身体が光に包まれ、次の瞬間にみなれた私のキャラクターになっていました。

 「おお!」
 「身体の置換が完了しました。続いてお顔、体型等の詳細な設定ができますがいかがいたしますか?」
 あまり作りこんではいなかったのでちょこっと変えておきますか。
 「少しだけいじります」
 「かしこまりました」
 画面越しに見ていたときは違和感がなかったのですが自分の身体となると少し違和感がある部分がありましたので修正しておきます。
 体格はほぼ現実と変わらない程度に、キャラクターの顔は少しだけ美人にしました。
 少しだけですよ?

 を終え、改めて自分の身体になったアバターを少し動かしてみます。
 
 ステータスが適応されたのか、先ほどより身体は軽いです。
 あんまり動くと疲れてしまうのでこの辺にしておきましょう。
 
 「では再キャラクタークリエイトは完了しました。続いてチュートリアルに移ります」
 チュートリアル?
 ゲームを最初始めたころにやったけど?
 「チュートリアルならVR前にやってあります」
 「はい。その通りです。ですが変更点も多いので一応行わせていただいております」
 なるほど。
 「腰を折ってすいません。ではチュートリアルお願いします」
 「かしこまりました」
 
 「先ほどメニューの呼び出し方は説明しましたので省略させていただきます」
 おお! やっぱちゃんとしたAIだった!
 普通に会話できるし、これだけでもVRの価値ありますよ!

 「メニュー画面以降の操作も基本的には思考することで可能です。ですがログアウトの際は自分の指でログアウトボタンを押す必要があります」
 「なるほど」
 メニュー……ログアウト……。
 『ログアウトしますか? YES or No』
 なるほど。
 
 「スキル発動の際、今まではショートカットに登録及びスキル一覧からクリックで行っていただいてました。今後は音声発動となります」
 「音声発動とはなんですか?」
 「実際お見せしたほうがよろしいですね。≪フレイム≫」
 そうポテトが言うと指先に火が灯りました。
 いままで入力したコマンドでキャラクターがしゃべっていたことを自分でやるわけですね。
 「試してみてもいいですか?」
 「もちろんです。ここではすべてのスキルが使えますので使い慣れてるもので大丈夫です」
 「≪シャドウ・ボール≫」
 おお! 簡単! しかも思ったところに飛んで行きますね。
 「流石です。大丈夫そうですか?」
 「はい」
 「では最後の設定に移らせていただきます」
 最後の設定?
 「グロテスクな表現及び性的な表現を制限することができます」
 「歳的に性的な表現は大丈夫ですが、グロはちょっと……」
 「ではオフに設定しますか?」
 「どっちがいいですか?」
 「オンをおすすめします。他のプレイヤーや私達NPCとみているものが変わってしまうので」
 「ではオンでおねがいします」
 「かしこまりました」
 
 「痛覚や表現方法などの設定はメニューからいつでも変更が可能です」
 「わかりました」

 「VRとはいえ目に見えないステータスとして空腹度や眠気度、疲労度も設定されておりますのでよりリアルな世界を体験できると思います。また現実世界の身体に異変が起きたときは警報でしらせる仕組みになっております」
 「便利」
 「はいとても便利です」
 
 「確認等お済になりましたら奥の扉を開いてログインしてください」
 「わかりました」
 
 装備の確認や操作の確認を一通り終え、奥の扉へ歩いていきます。
 
 「お世話になりました」
 「いってらっしゃいませチェリー様。<Imperial Of Egg>で再びお会いできることを楽しみにしております」
 そうお辞儀するポテトに見送られ私は扉をくぐります。

 これからがVR化した<Imperial Of Egg>の世界。
 一体どんな体験が待っているのかと期待を胸に、扉を開けました。
                                      to be continued...
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