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第五章
part.25 それってなくない?
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「――そ、それってなくない!??」
思わずファミレスの席から立ち上がってしまったシュウウである。ヴァイオリンのように高くなった、裏返ったような声でつい言ってしまった。
ヨハネとジンは、似てないはずなのに二人して同じ、どこか愛嬌のある表情で立ち上がったシュウウを見上げた。
シュウウは少しだけ冷静になり、「ゴホン」と咳払いをすると、思わず立ち上がってしまった腰を再び下ろした。
「に、似てないじゃん!? 全然!?」
シュウウが訴えると、ジンが答えた。ヨハネの頭をポンポンと撫でながら。
「母親が違うんです。な」
「お前ヤメロそれ」
「ふっこいつは小さい頃から俺に対してこんな態度なんですが、そこがたまらなく可愛くて」
「あーシュウウ君! 兄貴もうすぐ帰るから、聞きたいことあるなら是非今のうちに聞いて」
ヨハネは一方的にそう言ったが、あながち冗談でもないだろう。ジンもきっとそろそろ仕事に戻らざるを得ないのだ。
シュウウが気を取り直すと、ジンが穏やかな口調で言う。
「――吉田茜は、行方不明の間、しばらく別の場所でかくまわれていたようです。それが、暴力団関係の人に引き渡すために、あの日サメジマの社長室の隣の部屋、シュウウ君の拉致されていた部屋――に連れて来られていたようですね。ヨシダは隙を見て逃げ出そうとしたが、部屋の外、建物の中にはいつサメジマが戻って来るかわからない。110番しようにも、社長室の電話の子機はちょうどサメジマが持っていて無かった。その時、ちょうど社長のパソコンの電源が付いたままだったようで、見るとシュウウ君のパソコンとやり取りできた。ヨシダアカネは思い切ってシュウウ君にメッセージを送った。だが、最後までやり取りする前にサメジマが帰って来たようです。そして再び意識不明にされ、シュウウ君が拉致されていた間、隣の社長室にいた」
「……そうでしたか……」
リアルな話を聞くと怖い。その中に自分がいたなんて。シュウウは再び二の腕に鳥肌が立つようだった。だが、アイスティーを飲むジンが続けた。
「安心してください。ヨシダアカネもちゃんと無事に確保しました」
「そうですか」
ジンはシュウウに微笑んだ。
「サメジマは暴力団の者たちにヨシダを始末してもらうつもりでいましたが、何と言うか図に乗りすぎていた。いくら利益を分けるとは言っても、誰だって他人のために危ない橋は渡りたくない。しかも、ヨシダにしても――シュウウ君にしても、結局サメジマの私利私欲のためですからね。そっちの筋の関係者は、これ以上サメジマに協力したくなかった。サメジマはそれほど大事な人物ではなかったんです。だから、僕の方には、逆にそっちの筋から情報が回って来ていた」
今のはオフレコでお願いしますね。そう言って、ジンは会計の紙を持って立ち上がった。
「僕は社会人だし――いつもヨハネがお世話になっていますので、ここは僕がご馳走します。では、僕はお先に失礼する。シュウウさん、もうしばらくはゆっくり心身を休めて下さいね」
そう言って、素早く食事を終えたジンは、シュウウに頭を下げて立ち去る素振りを見せた。シュウウも慌てて頭を下げた。
シュウウが頭を上げた時には、すでにジンは後ろ姿だった。
「……はー。あれがお兄さんなのか……」
「認めたくないけど、そうだよ」
ヨハネはふてくされたように、コップを弄んでいたが、やがて飲み物のお替りをするためにソファから立ち上がった。
思わずファミレスの席から立ち上がってしまったシュウウである。ヴァイオリンのように高くなった、裏返ったような声でつい言ってしまった。
ヨハネとジンは、似てないはずなのに二人して同じ、どこか愛嬌のある表情で立ち上がったシュウウを見上げた。
シュウウは少しだけ冷静になり、「ゴホン」と咳払いをすると、思わず立ち上がってしまった腰を再び下ろした。
「に、似てないじゃん!? 全然!?」
シュウウが訴えると、ジンが答えた。ヨハネの頭をポンポンと撫でながら。
「母親が違うんです。な」
「お前ヤメロそれ」
「ふっこいつは小さい頃から俺に対してこんな態度なんですが、そこがたまらなく可愛くて」
「あーシュウウ君! 兄貴もうすぐ帰るから、聞きたいことあるなら是非今のうちに聞いて」
ヨハネは一方的にそう言ったが、あながち冗談でもないだろう。ジンもきっとそろそろ仕事に戻らざるを得ないのだ。
シュウウが気を取り直すと、ジンが穏やかな口調で言う。
「――吉田茜は、行方不明の間、しばらく別の場所でかくまわれていたようです。それが、暴力団関係の人に引き渡すために、あの日サメジマの社長室の隣の部屋、シュウウ君の拉致されていた部屋――に連れて来られていたようですね。ヨシダは隙を見て逃げ出そうとしたが、部屋の外、建物の中にはいつサメジマが戻って来るかわからない。110番しようにも、社長室の電話の子機はちょうどサメジマが持っていて無かった。その時、ちょうど社長のパソコンの電源が付いたままだったようで、見るとシュウウ君のパソコンとやり取りできた。ヨシダアカネは思い切ってシュウウ君にメッセージを送った。だが、最後までやり取りする前にサメジマが帰って来たようです。そして再び意識不明にされ、シュウウ君が拉致されていた間、隣の社長室にいた」
「……そうでしたか……」
リアルな話を聞くと怖い。その中に自分がいたなんて。シュウウは再び二の腕に鳥肌が立つようだった。だが、アイスティーを飲むジンが続けた。
「安心してください。ヨシダアカネもちゃんと無事に確保しました」
「そうですか」
ジンはシュウウに微笑んだ。
「サメジマは暴力団の者たちにヨシダを始末してもらうつもりでいましたが、何と言うか図に乗りすぎていた。いくら利益を分けるとは言っても、誰だって他人のために危ない橋は渡りたくない。しかも、ヨシダにしても――シュウウ君にしても、結局サメジマの私利私欲のためですからね。そっちの筋の関係者は、これ以上サメジマに協力したくなかった。サメジマはそれほど大事な人物ではなかったんです。だから、僕の方には、逆にそっちの筋から情報が回って来ていた」
今のはオフレコでお願いしますね。そう言って、ジンは会計の紙を持って立ち上がった。
「僕は社会人だし――いつもヨハネがお世話になっていますので、ここは僕がご馳走します。では、僕はお先に失礼する。シュウウさん、もうしばらくはゆっくり心身を休めて下さいね」
そう言って、素早く食事を終えたジンは、シュウウに頭を下げて立ち去る素振りを見せた。シュウウも慌てて頭を下げた。
シュウウが頭を上げた時には、すでにジンは後ろ姿だった。
「……はー。あれがお兄さんなのか……」
「認めたくないけど、そうだよ」
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