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第五章
part.20 Tell me Everything
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「そんでさ。……本題なんだけど」
ようやっと落ち着いて、数日前の悪夢のことを話す決心をしたシュウウである。
……にも関わらず。
「ちょっと待って。ドリンクバー持ってくるから」
そう言って席を立つヨハネに、テーブルの上に思わず突っ伏したシュウウである。
(――もう、どんだけ人をヤキモキさせるつもりか、こいつは! あああ~……)
イライラしてテーブルを細い指でコツコツと叩くシュウウに、「ごめんごめん」と言って、再び席に着くヨハネである。
右手にはコーラ、そして左手にはホットのカフェラテのようなものを持ちながら。ヨハネはシュウウに向かってニカッと笑って、言った。
「へへー二個持ち。」
「――あ~……殴っていいか」
つい、本音が出てしまったシュウウである。思わず頭を抱え込んだシュウウに、今度こそヨハネは神妙な面持ちで「ごめんね……」とシュウウの顔を覗き込んで、言った。
「――準備できたし、もういいよ。何でも答えるから。シュウウ君の聞きたいこと……」
そう、しおらしい態度でうつむくヨハネだ。これもフリではないかかと怪しむシュウウではあったが、シュウウもいよいよ、話を切り出した。
「……あのさ。結局、この前の事件ってどういうことだったんだ……?」
シュウウが失踪したヨシダからメッセージを受け取り、こっそり社長室に忍び込むと、サメジマに突然拉致され、ほんの数時間ではあったが監禁された。そして、間一髪のところで警察に救出された。あのタイミングは何だったのだろう? 日本の警察という機構が優秀だから、矢継ぎ早に解決しただけのことだったのだろうか? 想定外のことが一日の間に起こりすぎて、シュウウは何が起きたのか全く解らないのだ。それに……。
「何であの時、警察の人と一緒にお前が来たの?」
目の前のヨハネをじっと見つめると、ヨハネが困った顔をしてコーラを吸っている。シュウウは聞く。
「ヨハネが、警察に連絡したの?」
「――うん、かいつまんで言えば、そう。俺が警察に連絡したの」
頷くヨハネに、シュウウはやっと物事が一つ分かり、ホッと息を吐いた。だが……。
「お前は、もう先に帰ってたじゃん。何で分かったの? 俺が社長に捕まったって……」
「それはさ……」
ヨハネの目はしばし泳いだが、答えを紡ぐ。
「……ハッキリとは解らなかったんだけど、変な物音がしたから。社長室の盗聴器から」
「盗聴?」
「そう」
「お待たせ致しました~」
ちょうどそのタイミングでランチが来た。シュウウは和風スパゲティのランチ。ヨハネは、日替わり定食のランチ。忙しく皿を置くパート主婦らしきウェイトレスに聞かせられるような内容ではないので、シュウウは一秒でも早くと逸る気持ちを抑えて、ウェイトレスが立ち去るのを待った。後ろ姿が遠ざかると、直ぐに小声で聞く。
「何でお前、盗聴なんか。ってか、お前が付けたのかよ? 社長室に?」
「そうだよ」
シュウウ君のパスタもらいたい。そう言って、ヨハネはフォークにくるくるとシュウウの和風スパゲティを器用に巻き付け、大きく口に頬張った。
ようやっと落ち着いて、数日前の悪夢のことを話す決心をしたシュウウである。
……にも関わらず。
「ちょっと待って。ドリンクバー持ってくるから」
そう言って席を立つヨハネに、テーブルの上に思わず突っ伏したシュウウである。
(――もう、どんだけ人をヤキモキさせるつもりか、こいつは! あああ~……)
イライラしてテーブルを細い指でコツコツと叩くシュウウに、「ごめんごめん」と言って、再び席に着くヨハネである。
右手にはコーラ、そして左手にはホットのカフェラテのようなものを持ちながら。ヨハネはシュウウに向かってニカッと笑って、言った。
「へへー二個持ち。」
「――あ~……殴っていいか」
つい、本音が出てしまったシュウウである。思わず頭を抱え込んだシュウウに、今度こそヨハネは神妙な面持ちで「ごめんね……」とシュウウの顔を覗き込んで、言った。
「――準備できたし、もういいよ。何でも答えるから。シュウウ君の聞きたいこと……」
そう、しおらしい態度でうつむくヨハネだ。これもフリではないかかと怪しむシュウウではあったが、シュウウもいよいよ、話を切り出した。
「……あのさ。結局、この前の事件ってどういうことだったんだ……?」
シュウウが失踪したヨシダからメッセージを受け取り、こっそり社長室に忍び込むと、サメジマに突然拉致され、ほんの数時間ではあったが監禁された。そして、間一髪のところで警察に救出された。あのタイミングは何だったのだろう? 日本の警察という機構が優秀だから、矢継ぎ早に解決しただけのことだったのだろうか? 想定外のことが一日の間に起こりすぎて、シュウウは何が起きたのか全く解らないのだ。それに……。
「何であの時、警察の人と一緒にお前が来たの?」
目の前のヨハネをじっと見つめると、ヨハネが困った顔をしてコーラを吸っている。シュウウは聞く。
「ヨハネが、警察に連絡したの?」
「――うん、かいつまんで言えば、そう。俺が警察に連絡したの」
頷くヨハネに、シュウウはやっと物事が一つ分かり、ホッと息を吐いた。だが……。
「お前は、もう先に帰ってたじゃん。何で分かったの? 俺が社長に捕まったって……」
「それはさ……」
ヨハネの目はしばし泳いだが、答えを紡ぐ。
「……ハッキリとは解らなかったんだけど、変な物音がしたから。社長室の盗聴器から」
「盗聴?」
「そう」
「お待たせ致しました~」
ちょうどそのタイミングでランチが来た。シュウウは和風スパゲティのランチ。ヨハネは、日替わり定食のランチ。忙しく皿を置くパート主婦らしきウェイトレスに聞かせられるような内容ではないので、シュウウは一秒でも早くと逸る気持ちを抑えて、ウェイトレスが立ち去るのを待った。後ろ姿が遠ざかると、直ぐに小声で聞く。
「何でお前、盗聴なんか。ってか、お前が付けたのかよ? 社長室に?」
「そうだよ」
シュウウ君のパスタもらいたい。そう言って、ヨハネはフォークにくるくるとシュウウの和風スパゲティを器用に巻き付け、大きく口に頬張った。
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