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第五章
part.19 戸惑いのあとに
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シュウウはパトカーで、病院に行くことになった。頭と手首の他に怪我はないか、また体温など、病院で一通り診てもらうと、その後警察署に向かった。シュウウの被害届を記録するためだ。サメジマは、他の容疑がいくつもかかっているから、シュウウの事情聴取も丁寧に、正確にされたと思う。あいまいな部分が出来るだけないように。
終わった頃には日付はとっくに変わり、時間は午前になっていた。警察にはシュウウの両親も来ており、シュウウを見て二人は安堵した。母親は少し泣いていた。シュウウたち家族はパトカーで自宅に送ってもらうことになった。
シュウウが振り返ると、警察署にはまだヨハネがいた。ヨハネは何も言わず、シュウウに片手で手を振って見せた。
ヨハネはシュウウと一緒に病院に付き添い、そして警察署にも一緒に来てくれた。シュウウがパトカーに乗った時、隣には二回ともヨハネがいた。なぜそこまでしてくれるのだろう。シュウウの発見者だから? ヨハネも事情聴取をされる立場だから? そもそも、なぜヨハネはあの時間にあの建物にいて、シュウウを助けることが出来たのだろうか?
自分の身に起こったことは警察に全て話したが、物語の全容は、当事者のシュウウは全く分からないままだった。
***
あれから数日が経った。
シュウウは、町のファミレスである男を待っていた。その相手というのは……。
「――センパイ!」
店内に入ると、しばらくキョロキョロしていたが、シュウウを見つけるなりパアッと笑い、こちらにやって来た男である。
相変わらず、微かにうねった黒髪に天使の輪が光っている。尻尾を振った大型犬のようにして、シュウウのところへ急ぎ足でやって来た。
「久しぶり~!」
向かいに座ると、ヨハネはシュウウに向かって、目が無くなるほど細めてニッコリと笑った。
「3日くらい前に会ったばかりじゃん……」
「そうだけどさ……前はもうちょっと会ってたでしょ」
そう言うヨハネに、シュウウはメニューを取ってやった。ヨハネはシュウウからメニューを受け取ると、ウキウキとページを開いた。
「シュウウ君コーヒー飲んでんの。ブラック派だよね。時々ミルクだよね。あってことはドリンクバーか。っていうか、もうすぐお昼じゃない? あっランチもある~。お昼どうする? 食べるよね? じゃあ俺やっぱりセットにしよ~。……うーん、たまにはカツの和食もいいし~、スパゲティも食べたいけど絶対足りないよね。あっ平日のみのランチセット? あーでも日替わりはメニューが微妙……」
「あー、もう、そんなのどうでもいいよ!」
延々と喋るヨハネに対し、シュウウは拳をドン、とテーブルに叩き落した。
しばらくして、ウェイターを呼ぶボタンを押し、注文を済ますと、ついでにシュウウもランチを頼んだ。
「そんでさ。……本題なんだけど」
ようやっと落ち着いて、数日前の悪夢のことを話す決心をしたシュウウである。
終わった頃には日付はとっくに変わり、時間は午前になっていた。警察にはシュウウの両親も来ており、シュウウを見て二人は安堵した。母親は少し泣いていた。シュウウたち家族はパトカーで自宅に送ってもらうことになった。
シュウウが振り返ると、警察署にはまだヨハネがいた。ヨハネは何も言わず、シュウウに片手で手を振って見せた。
ヨハネはシュウウと一緒に病院に付き添い、そして警察署にも一緒に来てくれた。シュウウがパトカーに乗った時、隣には二回ともヨハネがいた。なぜそこまでしてくれるのだろう。シュウウの発見者だから? ヨハネも事情聴取をされる立場だから? そもそも、なぜヨハネはあの時間にあの建物にいて、シュウウを助けることが出来たのだろうか?
自分の身に起こったことは警察に全て話したが、物語の全容は、当事者のシュウウは全く分からないままだった。
***
あれから数日が経った。
シュウウは、町のファミレスである男を待っていた。その相手というのは……。
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相変わらず、微かにうねった黒髪に天使の輪が光っている。尻尾を振った大型犬のようにして、シュウウのところへ急ぎ足でやって来た。
「久しぶり~!」
向かいに座ると、ヨハネはシュウウに向かって、目が無くなるほど細めてニッコリと笑った。
「3日くらい前に会ったばかりじゃん……」
「そうだけどさ……前はもうちょっと会ってたでしょ」
そう言うヨハネに、シュウウはメニューを取ってやった。ヨハネはシュウウからメニューを受け取ると、ウキウキとページを開いた。
「シュウウ君コーヒー飲んでんの。ブラック派だよね。時々ミルクだよね。あってことはドリンクバーか。っていうか、もうすぐお昼じゃない? あっランチもある~。お昼どうする? 食べるよね? じゃあ俺やっぱりセットにしよ~。……うーん、たまにはカツの和食もいいし~、スパゲティも食べたいけど絶対足りないよね。あっ平日のみのランチセット? あーでも日替わりはメニューが微妙……」
「あー、もう、そんなのどうでもいいよ!」
延々と喋るヨハネに対し、シュウウは拳をドン、とテーブルに叩き落した。
しばらくして、ウェイターを呼ぶボタンを押し、注文を済ますと、ついでにシュウウもランチを頼んだ。
「そんでさ。……本題なんだけど」
ようやっと落ち着いて、数日前の悪夢のことを話す決心をしたシュウウである。
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