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第二章
part.12 雷雲再び
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「――お前……まさかとは思うけど……」
シュウウはゴクリと唾を飲み込み、聞いた。
この前で懲りたのだ。ちゃんと最後まで聞かないで、後悔したから。
シュウウも半ば信じられなかったが、ヨハネの表情を見ているうちにみるみる確信に変わる。気まずそうな、ヨハネの顔と言ったらない。
ヨハネは、シュウウから目を逸らしている。でもこうしていても何も進まないし、始まらないので、シュウウは思い切って聞いてみる。
「……社長の部屋にいたの?」
そうだよね? だって他にないもん。
「……うん」
シュウウの問いに、観念したようにヨハネは頷いた。その後の問いは、何してたの? と聞きたいのだが。
それは要するに、社長と寝てたの? ということである。そうそう口に出来る問いではない。
するとヨハネは、急に破顔し、頭を掻いた。
「……ははー、バレたか……」
その返事は、認めたということだ。社長の部屋にいて、同時に、彼と寝ていたということを。
シュウウは絶句した。
ヨハネは、用があって早く帰ったはずでは……いや、用というのはそれだったのか? 早く終わって自分の部屋に来るよう、社長がヨハネを誘ったのだろうか。
「……」
シュウウの頭は真っ白だ。これって何だろう。もしかして、ショックを受けている? どうして? それはきっと、あんまりだと思ったからだ。いくら何でも職場でヤるか? ヨハネもそうだし、社長だって、社長なんだぞ? この会社のボスなんだぞ? それに、確か結婚してるはずじゃ。ゲスもいい加減に……。
とにかく、真面目に仕事をしていた自分の頭の上でヤッてたのかと思うと、シュウウの頭はこれ以上ないほど煮えたぎった。
「……サイテー不潔……」
「え……」
「――あーそう。そうだったの。社長とそういう関係だったの。いつから?」
「……」
「社長とデキてるかとか俺に聞いて来たくせに、デキてんの自分じゃん。……あーそっか、あれも社長を狙ってた様子見だったんだな。そうならそうと、ハッキリ言えよ……」
「……えーと、センパイ?」
「センパイとか呼ぶんじゃねー。俺はお前の先輩でも何でもねー」
「……シュウウくん、もしかして怒ってる……?」
怒ってる? おう、これ以上ないほど怒っているさ。
「――ガッカリした。恋愛とかのゴタゴタを、仕事に持ち込む奴は大嫌いだ。特に仕事場でとか、他の奴が仕事してる最中とか、ありえねーだろ?」
「……」
「せめてやるなら外でやれよ。せっかくお前のこと、思ったよりマジメなやつだって、見直してた、のに……」
そう、結局はそこである。シュウウはヨハネのことを、結構良い奴だと思い始めていた。その気持ちが裏切られたようで悲しい。
他人に期待してもムダとは、こういうことなのだろうか。
「センパイ……」
「……もしかして、この前の駅でも、社長とのことでモメてたんだな? あんなモデルみたいな彼氏がいながら二股なんて、サイテーじゃねーか。ハッ、それも職場で不倫とは……」
「……え? あの、この前の人はそういうんじゃ」
「お前の言うことなんて、何も信じらんねーよ!」
ヨハネの食い下がりを、ピシャリと切り捨てたシュウウである。
「シュウウくん……」
「気安く呼ぶんじゃねー」
最後にそう言うと、プイと背を向けて、ヨハネの横をすり抜けたシュウウである。さっさと荷物をまとめると、再度廊下に出た。
「……戸締りは頼んだ。社長と二人でどーぞ」
そう、捨て台詞を唱えて、今さっきヨハネが降りて来た階段を、腹立たしい思いで1階まで駆け降りたシュウウである。
シュウウはゴクリと唾を飲み込み、聞いた。
この前で懲りたのだ。ちゃんと最後まで聞かないで、後悔したから。
シュウウも半ば信じられなかったが、ヨハネの表情を見ているうちにみるみる確信に変わる。気まずそうな、ヨハネの顔と言ったらない。
ヨハネは、シュウウから目を逸らしている。でもこうしていても何も進まないし、始まらないので、シュウウは思い切って聞いてみる。
「……社長の部屋にいたの?」
そうだよね? だって他にないもん。
「……うん」
シュウウの問いに、観念したようにヨハネは頷いた。その後の問いは、何してたの? と聞きたいのだが。
それは要するに、社長と寝てたの? ということである。そうそう口に出来る問いではない。
するとヨハネは、急に破顔し、頭を掻いた。
「……ははー、バレたか……」
その返事は、認めたということだ。社長の部屋にいて、同時に、彼と寝ていたということを。
シュウウは絶句した。
ヨハネは、用があって早く帰ったはずでは……いや、用というのはそれだったのか? 早く終わって自分の部屋に来るよう、社長がヨハネを誘ったのだろうか。
「……」
シュウウの頭は真っ白だ。これって何だろう。もしかして、ショックを受けている? どうして? それはきっと、あんまりだと思ったからだ。いくら何でも職場でヤるか? ヨハネもそうだし、社長だって、社長なんだぞ? この会社のボスなんだぞ? それに、確か結婚してるはずじゃ。ゲスもいい加減に……。
とにかく、真面目に仕事をしていた自分の頭の上でヤッてたのかと思うと、シュウウの頭はこれ以上ないほど煮えたぎった。
「……サイテー不潔……」
「え……」
「――あーそう。そうだったの。社長とそういう関係だったの。いつから?」
「……」
「社長とデキてるかとか俺に聞いて来たくせに、デキてんの自分じゃん。……あーそっか、あれも社長を狙ってた様子見だったんだな。そうならそうと、ハッキリ言えよ……」
「……えーと、センパイ?」
「センパイとか呼ぶんじゃねー。俺はお前の先輩でも何でもねー」
「……シュウウくん、もしかして怒ってる……?」
怒ってる? おう、これ以上ないほど怒っているさ。
「――ガッカリした。恋愛とかのゴタゴタを、仕事に持ち込む奴は大嫌いだ。特に仕事場でとか、他の奴が仕事してる最中とか、ありえねーだろ?」
「……」
「せめてやるなら外でやれよ。せっかくお前のこと、思ったよりマジメなやつだって、見直してた、のに……」
そう、結局はそこである。シュウウはヨハネのことを、結構良い奴だと思い始めていた。その気持ちが裏切られたようで悲しい。
他人に期待してもムダとは、こういうことなのだろうか。
「センパイ……」
「……もしかして、この前の駅でも、社長とのことでモメてたんだな? あんなモデルみたいな彼氏がいながら二股なんて、サイテーじゃねーか。ハッ、それも職場で不倫とは……」
「……え? あの、この前の人はそういうんじゃ」
「お前の言うことなんて、何も信じらんねーよ!」
ヨハネの食い下がりを、ピシャリと切り捨てたシュウウである。
「シュウウくん……」
「気安く呼ぶんじゃねー」
最後にそう言うと、プイと背を向けて、ヨハネの横をすり抜けたシュウウである。さっさと荷物をまとめると、再度廊下に出た。
「……戸締りは頼んだ。社長と二人でどーぞ」
そう、捨て台詞を唱えて、今さっきヨハネが降りて来た階段を、腹立たしい思いで1階まで駆け降りたシュウウである。
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