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第二章
part.11 何でもないように
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シュウウが駅でヨハネと男を目撃してから数日が経った。
職場でのヨハネの様子はというと、いたって普通、と言いたいところだが、シュウウに対しては前よりよそよそしくなったような……。
それともそれはシュウウの被害妄想なのだろうか。
前と変わらないように主婦たちと世間話をする姿を見ても、どうしても半分演技をしているように感じてしまうようになった。何となくヨハネに対して壁のようなものを感じてしまうようになったシュウウである。
その原因はというと、やはりあの、駅でヨハネの知り合いという男を目撃してからなのだが。
(……聞けねー……今更)
シュウウはあれ以上特に追及はせず、でも内心はずっと胸に引っかかっていた。
直接訊ねるにしても、何と訊ねればよいものか。素直に、あれはお前の彼氏かって聞けばよいのか。
(――うおーそれじゃ、俺がちょっと前のヨハネじゃん!)
シュウウが社長とデキていると、ヨハネがゲイ疑惑を持ち出した時のことである。それをありえないと一蹴しておきながら、今度はシュウウがしつこく聞いてどうする。
(あー無視無視……無視に限る……)
自分の中の疑問に蓋をしようと言い聞かせるシュウウだったのだが。
ある日、シュウウが一人で職場に残っていた。ヨハネは、用があるのか、珍しく早いシフト終わりであった。
「わっ」
部屋で一人なことに油断し、シュウウがデスクでペットボトルを飲んでいると、手が滑り、自分の着ていたTシャツにアイスティーを零してしまった。
「うわー……やってしまった」
シュウウにしてはこんなドジは珍しい。これも最近、気が上ずっていた証拠である。
幸いなことに濡れたのは服だけで、パソコンにも机にも零しはしなかった。
シュウウは持っていたハンドタオルで服を拭いたが、取り切れない。アイスティーの茶色が染みになっている。
「トイレでゆすぐかなぁ……」
トイレの洗面所でタオルをゆすぎ、Tシャツをもう少し拭こうかと、シュウウは立ち上がった。そして、トイレに向かうべく廊下に出たところである。
すると、階段から降りてくる足音を感じた。
振り返ると、降りて来る足元が見え、腰そして胸が見え、見覚えのある服に、顔が現れた。階段を降りてきたのはヨハネだった。
「あれ?」
「――あ」
センパイ、という風にヨハネの口が動いた気がするが、その呟きは声にならないほど小さかった。まずった、という感じの硬い表情である。
「? ヨハネ、今日は早く帰ったはずじゃ……」
そこまで喋って、シュウウはピンと来たのである。
事務所の上には社長の部屋しかない。ということは、ヨハネは今まで社長の部屋にいたのである。
何をしていたのかは、シュウウの疑う通りじゃないだろうか。
職場でのヨハネの様子はというと、いたって普通、と言いたいところだが、シュウウに対しては前よりよそよそしくなったような……。
それともそれはシュウウの被害妄想なのだろうか。
前と変わらないように主婦たちと世間話をする姿を見ても、どうしても半分演技をしているように感じてしまうようになった。何となくヨハネに対して壁のようなものを感じてしまうようになったシュウウである。
その原因はというと、やはりあの、駅でヨハネの知り合いという男を目撃してからなのだが。
(……聞けねー……今更)
シュウウはあれ以上特に追及はせず、でも内心はずっと胸に引っかかっていた。
直接訊ねるにしても、何と訊ねればよいものか。素直に、あれはお前の彼氏かって聞けばよいのか。
(――うおーそれじゃ、俺がちょっと前のヨハネじゃん!)
シュウウが社長とデキていると、ヨハネがゲイ疑惑を持ち出した時のことである。それをありえないと一蹴しておきながら、今度はシュウウがしつこく聞いてどうする。
(あー無視無視……無視に限る……)
自分の中の疑問に蓋をしようと言い聞かせるシュウウだったのだが。
ある日、シュウウが一人で職場に残っていた。ヨハネは、用があるのか、珍しく早いシフト終わりであった。
「わっ」
部屋で一人なことに油断し、シュウウがデスクでペットボトルを飲んでいると、手が滑り、自分の着ていたTシャツにアイスティーを零してしまった。
「うわー……やってしまった」
シュウウにしてはこんなドジは珍しい。これも最近、気が上ずっていた証拠である。
幸いなことに濡れたのは服だけで、パソコンにも机にも零しはしなかった。
シュウウは持っていたハンドタオルで服を拭いたが、取り切れない。アイスティーの茶色が染みになっている。
「トイレでゆすぐかなぁ……」
トイレの洗面所でタオルをゆすぎ、Tシャツをもう少し拭こうかと、シュウウは立ち上がった。そして、トイレに向かうべく廊下に出たところである。
すると、階段から降りてくる足音を感じた。
振り返ると、降りて来る足元が見え、腰そして胸が見え、見覚えのある服に、顔が現れた。階段を降りてきたのはヨハネだった。
「あれ?」
「――あ」
センパイ、という風にヨハネの口が動いた気がするが、その呟きは声にならないほど小さかった。まずった、という感じの硬い表情である。
「? ヨハネ、今日は早く帰ったはずじゃ……」
そこまで喋って、シュウウはピンと来たのである。
事務所の上には社長の部屋しかない。ということは、ヨハネは今まで社長の部屋にいたのである。
何をしていたのかは、シュウウの疑う通りじゃないだろうか。
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