僕はHOLMES

くるみ最中

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第一章

part.5 新しい仲間2

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 シュウウが夜8時過ぎにバイトを終え、事務所を出ると、外の扉の横にヨハネがいた。シュウウはそれを見て、ドアを閉めた瞬間に足をピタと止めた。
「あれ……」
「あっセンパイ」
 ヨハネはシュウウを見ると、壁にもたれていた身体を起こした。ニコニコとシュウウの前に来る。先ほどまで部屋の中で見ていた姿に上着を羽織ったまま、何も変わりがない。
 ヨハネもシュウウと同じ8時上がりだったが、シュウウは先輩らしく最後に後片付けをしてから上がろうと思い、ヨハネを先に帰したつもりだった。
「……何、忘れ物とか?」
「いや、違います。センパイを待ってました~。中で待ってると、先輩早く帰れって言うだけで、一緒に帰ってくれないから」
 そう言って、ヨハネは人好きのしそうな笑顔で、エヘヘとシュウウに笑いかけた。
「せっかくだから、話がしたいなって思って。一緒に帰りませんか」
 シュウウがヨハネの真意を計りかねて無言でいると、ヨハネは言った。頭を困ったように掻きながら。
「シュウウさんとは年も近そうだし、せっかくだから……仲良くなりたいなって思って。わからないことも色々教えて頂きたいし。……あの、迷惑じゃなければ、でいいんですけど……」
 最後の方は殊勝な態度になり、シュウウも受け入れることにした。
「……別に迷惑じゃないよ」
 シュウウの方がいくらか先輩だし、自分がかたくなすぎるのも良くない。自分からも歩み寄るのが、先輩の、いや一個人の礼儀だろうとシュウウは思った。

「大学2年生?」
「はい」
「じゃ、俺が一個上だ」
「やっぱり、センパイっすね」
 真面目ぶるようなヨハネの口調に、思わずシュウウは笑ってしまう。
「その、先輩っていうのはヤメて。丁寧語も無しでいいよ。……俺もほんの少し前に事務所に入ったばかりだし。それまでは店舗のホールの方で」
「え、店の方だったんすか?」
「そう。それにそっちもまだ3か月くらいしか働いてなかったし」
「それで何で事務所の方に?」
「社長にこっちの人手が足りないって言われたんだ。それで今月から」

 二人は歩きながら話をした。話をしてみると、ヨハネが相手で特別嫌ではない。シュウウは話を続けた。
「そもそもここでバイトを始めたのは、来年旅行したくて、その資金のためで……」
「あー、パチンコは時給いいすからね」
「そう。ヨハネ君は、何でここにしたの」
「俺は、しばらくバイト探してたんですけど、ここは大学に近いし、あとは面接受けた時に社長が格好良かったから」
「……え?」
 ヨハネのサラッと言った台詞に、シュウウは顔を上げて聞き直した。
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