頑張って番を見つけるから友達でいさせてね

貴志葵

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全自動洗濯機

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 霧矢の家に着くなり、俺は服を全て脱がされて風呂場に押し込まれた。
 本当に家に入るなりだったので、驚いてすっぽんぽんにされた事に照れる暇も無かった。
 シャワーをかけられて、泡立てられたボディソープを身体中に塗りたくられる。

「っちょ、霧矢……!? なんなんだよっもう!」
「アイツの匂いを消す」
「アイツって、隆二さん……って、ひゃっ」

 霧矢の手が下半身にまで伸びて来たので、俺は慌てて逃げる。
 どうでもいいけど、浴室に成人男性が二人入って逃げられるくらいの広さがあるのが凄いよな。

「もぉー! 自分で洗えるから……! とりあえず霧矢は出ていけよ。服びしょびしょになってんじゃん」

 俺は袖口がぐっしょりと濡れてしまった霧矢の白の長袖のTシャツを指さす。

「いいよ、別に」

 俺が逃げた分、霧矢が近付いてくる。
 逃げられると言っても、浴室なので少し距離を詰められたらあっという間に壁に追い詰められてしまう。
 俺はどうしようもなくて、とうとうその場にしゃがみこんだ。
 霧矢が床に膝をつき、俺を囲うように壁に両手をつく。逃げ場はもうない。

──あぁ、下まで濡れてしまったな。

 俺は霧矢のボトムスの色が膝からじわじわと濃くなって行く様子を眺めていた。

「……優斗、今すぐ誰かと番いたいなら俺で良いだろ。……頼ってくれよ」

 いとも簡単そうにそんな事を言う霧矢に、俺は口をへの字に曲げた。そんな風に出来ていたのなら、最初から苦労はしなかった。

「……だって霧矢言ってただろ。オメガは苦手だって」
「優斗はオメガじゃない。優斗だ」
「なんだよ、それ。わけわかんね……俺だってただのオメガだよ」

 不人気でどこにも需要が無い、ただの男のオメガだ。
 本当にわからん。霧矢はなんでこんなに必死なんだ。全然霧矢らしくない。
 こっちはお前の隣に居たくて沢山悩んだっていうのになんなんだよ。どうしてそんな事を言うんだ。

「俺は、お前とちゃんとした……普通の友達で在りたかった」
「……!」

 涙がほろりと溢れて、霧矢が息を呑んだ音が聞こえた。涙は一粒こぼれてしまったら、後はもう堰を切ったように流れ出した。
 霧矢は困ったように眉を落とした。


「前のヒートの時の事気にしてるのか? 俺が怒ったから、そのせい?」

 俺は首を振る。確かにあの事がきっかけだけど、それだけじゃない。

「……霧矢のそばにいると、霧矢の事、欲しくなっちゃうから。こんなの、オメガになったせいだろ。だから、早く他の誰かと番いたかった」

 声が震えた。本当はこんな事知られずに、何でもない顔をして元の関係に戻りたかった。

 霧矢は驚いたように目を見開いた後、ぎゅっと眉を寄せて唇を噛んでいた。

「……だったら、尚更だ。俺が欲しいなら、俺以外のアルファなんかいらないだろ」

 霧矢の顔が近付いてきて、涙を舐め取られた。
 俺はびっくりして、目を丸くした。
 すると、今度は唇が重なる。驚いて口を開いていたので、そこから霧矢の舌が入ってきた。
 舌を誰かに舐められるなんて初めての経験で、背筋がぞくりと震えた。

 抵抗しなければ、止めなければと思うのに、あの霧矢とキスをしていると思うと脳がくらくらしてまともに物を考えられない。
 ボディソープの香りに混ざって霧矢のフェロモンの香りがする。今までで一番濃い香りに、俺は酔いしれた。

 服が濡れるのも、泡がついてしまう事も考えず、俺は縋り付くように霧矢の背中に腕を回した。
 舌を絡ませ合いながらも、ボディソープを塗り拡げるように霧矢の手が俺の下腹部へと移動する。

 その手のひらに、少し芯を持った股間を包まれた時、俺の肩は期待と不安でぴくんと震えた。

 しかし、霧矢の手はボディソープを塗り拡げたらすぐに違う場所に移ってしまった。
 それを残念に思ってしまった事が恥ずかしかった。

 この期に及んで、霧矢はどうしても俺の身体を丸ごと洗いたいらしい。アルファというのは、それほど他のアルファのフェロモンの匂いが嫌なものなのか。

 俺の身体が粗方泡まみれになったところで、シャワーをかけられて泡が流される。

 俺は霧矢を直視出来なくて、排水溝に流れて行く泡を見ていた。

──これから、どうなるんだろう。

 霧矢の鼻先が俺の首筋に近付き、確認するようにすんすんと嗅がれる。
 抵抗するべく首を振ると、大人しくしろと言わんばかりに脇腹を撫でられて、俺は唇を噛み締める。
 距離だけの問題ではなく、霧矢の香りがどんどん強くなっている気がする。
 俺は大した触られていないというのに、はしたなく前からも後ろからも雫を垂らしていた。

──いや、おかしい。流石にこんな風になるなんて……。

「っあ! き、霧矢、ヒート……!」

 どうしよう。来てしまったのか。
 この身体の芯が熱くなるような感覚。単に周期的なものなのか、霧矢のフェロモンに当てられたのかは分からないが始まってしまった。

 俺は力の入らない手で霧矢の濡れた服の裾を掴む。
 しかし、霧矢は熱を帯びたような声で「わかってる」と返事をするだけで離れてはくれない。
 顔を上げた霧矢に再び口付けられれば、俺はまたキスに夢中になり、思考が停止してしまう。
 霧矢の手が俺の背中に回り、つぅっと背骨の凹みに沿って下へと降りてくる。その手は尻の狭間へと差し込まれ、そして濡れそぼった場所を指の腹で撫でられた。

 くちゅり、と粘ついた水音がした。

 たったそれだけの刺激で身体がびくんと跳ねた。
 グ、と指に力が込められて霧矢の骨ばった指がぬぷぬぷと中に入ってくる。
 垂れるくらいに濡れていたそこは、歓迎するように霧矢の指を受け入れた。
 初めて受け入れる自分のモノ以外の指、しかも夢想していた霧矢の指だと思うと堪らなくなって、俺はぎゅうぎゅうと霧矢にしがみついた。
 霧矢の指は優しく濡れた内壁を撫でるだけだったが、それでも俺のそこは嬉しそうに霧矢の指に吸い付いた。

「ふ、ぁ…っ……霧矢……」
「ん、大丈夫。俺が全部してやる」

 甘えるように名前を呼べば、甘い声と共に優しく頭を撫でられて、苦しいくらいにときめいた。

 まるで酸素を求めるように、夢中でちゅ、ちゅと浅い口付けを繰り返した。
 唇を合わせたまま、親指の腹で胸の粒を押し潰されて、俺はびくんと肩を揺らした。

 ち、乳首なんか、今まで感じた事ないのに。

 恥ずかしくて耳が熱くなる。

 霧矢に縋りつくようにしながら小さく喘いでいると、突如中を満たしていた指がぬぽっと抜かれて、俺は喪失感に眉尻を下げた。

「や、霧矢、なんで……」

 思わず責めるような声が出てしまう。
 そんな俺を宥めるように、霧矢は「ベッド行こうな」と俺の背中をぽんぽんと叩いた。
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