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2章 蠢く者
8話 人外の者
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ウーーー!ウーーー!
けたたましく鳴り響くサイレンは市内全体に鳴り響き、住宅街や商業施設の壁を赤く染めている。
1台2台と応援が現れ、サイレンに共鳴した犬たちの遠吠えは夏の夜空を震わせる。
警察が駆けつけ、海斗の殺害現場検証が行われた。二度と息をすることの無い海斗は仰向けのまま迎えを待つ。
立て続けに起きた刺殺事件は住民を震え上がらせるには充分すぎるほどの事件だ。広報も鳴り響き夜間の外出を控えるよう呼びかけている。
はっ..はっ..はっ..はっ..
はぁはぁはぁ
ダッダッダッタッ
息を切らしながら暗闇の森を抜けその背後にある山、深森山を登る晴雄は時折辺りを見渡しながら山頂を目指す。満月の月光を頼りに悪路の登山道を必死で走り、転んだり暗闇から現れる木の枝で擦り傷を作りながら無我夢中で駆ける。額から顎まで流れる汗を手の甲で拭いまた走るを繰り返す。
そう高く無いこの山は走ればすぐに辿り着くことが出来るが晴雄の体は重いため体力が維持できない。それでも必死で山頂に辿り着いた晴雄は膝から倒れ込んだ。走ることを辞めた途端湿気のある熱気が晴雄を包み込み全身から汗がぶわっと吹き出した。
山頂から見下ろす市内は相変わらずあちこちでサイレンが鳴り響き夜空を赤く照らしている。晴雄は安全な場所まで逃げたと確信すると急激に強気な感情が沸き上がる。
「ぐへへ!僕は今から神に匹敵する存在になるんだ!欲しいもの全部手に入るんだ!」
ここでもまた人外の形相で町を見下ろし声を張り上げると晴雄の唾液が辺りに飛び散った。
晴雄は正座をするとポケットからナイフを取り出した。ナイフは柄の部分が紫色で、細かな彫刻が施されている。
晴雄は満月の月光の下で刃を自分の腹部まで持ってくるとなんの躊躇も無く刃を腹部に突き立てた。「あ''ー!!ごれでぼぐは全部手に入る!」
晴雄はもはや正気を保ってはいない。
「哀れな人...」
晴雄の背後から女の声が聞こえると晴雄は遠のく意識の中ゆっくりと振り返った。そこには黒いマントに身を包んだ小柄な女が立っている。口元も黒い布で覆い、目と髪が見えるだけの格好をしている。
「どこでその呪術を学んだ?」
女は晴雄の背後に回ると晴雄は弱り切った声で答える。
「言わない...3人このナイフでやったんだ。後は僕の体に...このナイフをそうすれば不死身の体に...」
「........」
女は晴雄の回答を聞いたがそれ以上口を開くことは無かった。そして力尽きた晴雄はその場に倒れ込み、紫色のナイフが地面に転がった。
女の背後からもう1人、同じ身なりをしたガタイの良い男が現れた。そして女の隣に並ぶと力尽きた晴雄を見下ろし、ナイフに視線をやった。
「このナイフがまた...コイツ3人やったあとここに来たのか?」男は晴雄を見つめたまま女に問いかけた。
「.....」
「コイツ死んでるってことは失敗したか?」
男はナイフを拾い上げると刀身を見つめた。
女はマントのフード部分を脱ぎ、晴雄をじっと眺めながらボソッと呟いた。
「3人目が自分になったとも知らずに...」
男は女の一言にすぐさま反応した。
「コイツのこと知ってるのか?」
「さぁね...」
男は山頂を目指す複数の灯りと複数の足音を察知するとナイフを懐にしまった。女は再びフードを被り晴雄を見つめたまま立っている。
「人が来る。俺たちがいたらややこしい。帰るぞ」
2人は一瞬にして紫色に発光しスッと消えた。
その直後、警察が到着し晴雄は発見された。晴雄はにちゃっとした表情でヨダレを垂れ流したまま息絶えている。晴雄の遺体は回収され身元の特定とこの一連の事件との関連性が疑われた。この一連の事件の真相を知る者は残っておらず、捜査員は頭を抱えるほどに捜査が難航するであろう。
犯行に使われた凶器はマントの男が回収してるため現場には何も残されておらず、他殺も視野に入れての捜査が始まった。
晴雄は夏美、月也、海斗の3人を手に掛け、この山頂で自らの体にそのナイフを突き立てた。
晴雄が行おうとしていた儀式とは何か。また晴雄が完遂したと思っていた儀式が未遂になった理由は何か。マントの2人組は誰なのか。
これらは非科学的であり捜査で解決出来る域を超えている。
けたたましく鳴り響くサイレンは市内全体に鳴り響き、住宅街や商業施設の壁を赤く染めている。
1台2台と応援が現れ、サイレンに共鳴した犬たちの遠吠えは夏の夜空を震わせる。
警察が駆けつけ、海斗の殺害現場検証が行われた。二度と息をすることの無い海斗は仰向けのまま迎えを待つ。
立て続けに起きた刺殺事件は住民を震え上がらせるには充分すぎるほどの事件だ。広報も鳴り響き夜間の外出を控えるよう呼びかけている。
はっ..はっ..はっ..はっ..
はぁはぁはぁ
ダッダッダッタッ
息を切らしながら暗闇の森を抜けその背後にある山、深森山を登る晴雄は時折辺りを見渡しながら山頂を目指す。満月の月光を頼りに悪路の登山道を必死で走り、転んだり暗闇から現れる木の枝で擦り傷を作りながら無我夢中で駆ける。額から顎まで流れる汗を手の甲で拭いまた走るを繰り返す。
そう高く無いこの山は走ればすぐに辿り着くことが出来るが晴雄の体は重いため体力が維持できない。それでも必死で山頂に辿り着いた晴雄は膝から倒れ込んだ。走ることを辞めた途端湿気のある熱気が晴雄を包み込み全身から汗がぶわっと吹き出した。
山頂から見下ろす市内は相変わらずあちこちでサイレンが鳴り響き夜空を赤く照らしている。晴雄は安全な場所まで逃げたと確信すると急激に強気な感情が沸き上がる。
「ぐへへ!僕は今から神に匹敵する存在になるんだ!欲しいもの全部手に入るんだ!」
ここでもまた人外の形相で町を見下ろし声を張り上げると晴雄の唾液が辺りに飛び散った。
晴雄は正座をするとポケットからナイフを取り出した。ナイフは柄の部分が紫色で、細かな彫刻が施されている。
晴雄は満月の月光の下で刃を自分の腹部まで持ってくるとなんの躊躇も無く刃を腹部に突き立てた。「あ''ー!!ごれでぼぐは全部手に入る!」
晴雄はもはや正気を保ってはいない。
「哀れな人...」
晴雄の背後から女の声が聞こえると晴雄は遠のく意識の中ゆっくりと振り返った。そこには黒いマントに身を包んだ小柄な女が立っている。口元も黒い布で覆い、目と髪が見えるだけの格好をしている。
「どこでその呪術を学んだ?」
女は晴雄の背後に回ると晴雄は弱り切った声で答える。
「言わない...3人このナイフでやったんだ。後は僕の体に...このナイフをそうすれば不死身の体に...」
「........」
女は晴雄の回答を聞いたがそれ以上口を開くことは無かった。そして力尽きた晴雄はその場に倒れ込み、紫色のナイフが地面に転がった。
女の背後からもう1人、同じ身なりをしたガタイの良い男が現れた。そして女の隣に並ぶと力尽きた晴雄を見下ろし、ナイフに視線をやった。
「このナイフがまた...コイツ3人やったあとここに来たのか?」男は晴雄を見つめたまま女に問いかけた。
「.....」
「コイツ死んでるってことは失敗したか?」
男はナイフを拾い上げると刀身を見つめた。
女はマントのフード部分を脱ぎ、晴雄をじっと眺めながらボソッと呟いた。
「3人目が自分になったとも知らずに...」
男は女の一言にすぐさま反応した。
「コイツのこと知ってるのか?」
「さぁね...」
男は山頂を目指す複数の灯りと複数の足音を察知するとナイフを懐にしまった。女は再びフードを被り晴雄を見つめたまま立っている。
「人が来る。俺たちがいたらややこしい。帰るぞ」
2人は一瞬にして紫色に発光しスッと消えた。
その直後、警察が到着し晴雄は発見された。晴雄はにちゃっとした表情でヨダレを垂れ流したまま息絶えている。晴雄の遺体は回収され身元の特定とこの一連の事件との関連性が疑われた。この一連の事件の真相を知る者は残っておらず、捜査員は頭を抱えるほどに捜査が難航するであろう。
犯行に使われた凶器はマントの男が回収してるため現場には何も残されておらず、他殺も視野に入れての捜査が始まった。
晴雄は夏美、月也、海斗の3人を手に掛け、この山頂で自らの体にそのナイフを突き立てた。
晴雄が行おうとしていた儀式とは何か。また晴雄が完遂したと思っていた儀式が未遂になった理由は何か。マントの2人組は誰なのか。
これらは非科学的であり捜査で解決出来る域を超えている。
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