姫は今日もご機嫌ななめ

しらはね

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同室のやつ

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 入学式が終わると寮の手続きが始まる。

 荷物は事前に学校に届け各自の寮部屋に運び込まれているらしい。

 勧誘でへとへとに疲れ切っているが明後日からはもう授業が始まるし早めに荷物を出しておくかと考えながら自室の扉を開ける。


 玄関に靴が置いてある。

 寮は相部屋だからルームメイトになるやつがすでに入っているのだろう。

 これから3年間一緒に生活する奴だが、どんな奴なのか凄く気になる。




 寝室に入るとベットで眠ってる奴がいた。

 すぅすぅと気持ちよさそうに寝息を立てている。

 サラサラの銀髪で色白の肌。鼻筋がすっと通っていて目は見れないが相当美形なやつだ。

 共学にいたら女子にさぞモテることだろう。





 それにしても気持ちよさそうに眠っているな。

 俺も早く荷解きして眠りたいが、今荷物を動かすと起こしてしまうかもしれない。



 俺も空いている方のベッドに横になり、気がついたら眠っていた。







 背中に心地よい温かみを感じながら目を開けた。

 ぼんやりとした頭で起き上がるとルームメイトらしきやつが僕を抱きしめて眠っていた。

 なんでコイツがここにいるんだ・・・


 部屋に備え付けられている時計を見ると5時を指していた。

 俺が部屋に帰ったのは2時頃だったので3時間も眠っていたらしい。



 後ろのやつの腕を解こうとモゾモゾしていると後ろの奴も体を起こした。






「おまえ、なんでこっちで寝てんだよ。」




「温かかったから・・・」




「・・・俺ルームメイトの栗原実里。よろしくな。次はベッド入ってくるなよ。」







「・・・」






 ぼんやりしたやつだ。聞いているのか聞いていないのか・・・









 自分が使っていたベッドがある方の家具を使うことにして荷解きを始める。



 一番場所を取っていた洋服をクローゼットに収納してタオル類はバスルームの棚に入れることにする。

 順調に収納していき最後に教科書などの書籍を机にしまっている時にルームメイトの方を見ると、俺のベッドに座ったままこっちを見ていた。


 こいつ、今まで何をしていたんだ?



「お前は荷解きしなくていいの?」


 と聞くと。


「にほどき?」



 と返ってきた。




 まじかよこいつ。




「自分の荷物を棚とか引き出しにしまわなくていいのかって聞いてんの。」と言うと



「分からない。実里がしてたみたいにすればいいの?」



 と聞いてきた。





 そして、鞄を開けて中身を取り出し始めるが中から出てくるものを一方的に取り出すばかりでどんどん物が積み重なっていく。



「おまえ、片付けながらしろよ。」と言うと


「何が入っているか分からない。」と言ってきた。


「はぁ?じゃあこの荷物誰が入れた訳??と聞くと。


「お手伝いさん?」と言っている。



 お坊ちゃまかよ。

 仕方なくそいつの荷物を取り出していき同じカテゴリーごとに分けて置いていく。



「おまえ、これ引き出しに入れていって。」

 と言って綺麗に折り畳まれた洋服を渡していく。




「お前じゃない。津村凛音。」

「そうかよ。じゃあ津村。これやれよ。」


 と言って俺はまたバックの中身の整理にとりかかる。




 津村はこっちが指示を出すときちんとその通りにした。

 やったことがないから分からなかっただけで何もできないやつではないみたいだ。


 世の中のお坊ちゃまってやつはもっと気取ってて嫌味なやつばかりだと思っていたがコイツはそうではないみたいだ。

 ぼーっとしているところはあるがこいつとなら3年間やっていけそうだ。



 津村の分も手伝って軽く部屋の掃除も済ませた頃には7時を回っていた。

 そろそろ腹も空いてきた。

 学食は10時まで空いているから夕ご飯にするか。

「津村。俺はこれから学食で飯食べるけど。お前も来ない?」と聞くと

「うん。」


 と頷いてついてきた。

 なんだか従順な犬みたいで少し可愛く見えてきた。









 食堂に入ると4、50人くらいの生徒がいた。

 トレーを持って並んでいる生徒を見て俺と津村もそれに倣う。


 何にしよう。中学は弁当だったから学食は初めてで楽しみだ。


「津村は何注文するの?」


「実里と同じやつ。」


 こいつ何も考えていないな。



 俺はカツカレー定食を頼んだ。津村もそれになった。




 出てきた定食を見て驚いた。俺は別に少食ではないがとても食べきれそうにないほど凄い量だ。

 しまった。津村も同じものを頼んだせいで分けることができない。


「なぁ津村。お前この量食べきれるか?」

「うん。」

「ついでに俺のもちょっと食べれるか?」

「うん。」

「まじか!助かる~」


 一安心して食べる席を探そうとトレーを持ち上げようとするが

「おもい!」

 食べ物の重量がすごくて思わず声を出してしまった。

 すると俺の前で自分のトレーを持っていた生徒が振り返って。


「君、大丈夫?手伝おうか?」と声をかけてくれた。



「いや、大丈夫。ありがとな。」


「・・・・」


 初対面なのに助けてくれようとするなんていいやつだな、と思って礼を言うとしばらく固まった後


「いや、君さえ良ければ同じテーブルで食べないか??新入生でしょ?色々教えてあげるよ。」


 と言いながら僕のトレーを持っていこうとする。


「ちょっ、自分で持つから・・・」





「実里は俺と食べるのでお構いなく。」



 いつの間にか津村が俺のトレーを取り返して俺と先輩の間に立っていた。


 おまえ、、、両手にあの重いトレーを持てるとか意外と力あるんだな。


「そ・・・そうか。」

 そういうと先輩らしき人は離れていった。


「はい。実里ここ。」


 津村はそのまま俺と津村の分のトレーをテーブルに置くと席を勧めてきた。



「悪いな。」



 津村は俺を壁際の席に座らせると自分はその正面に座った。



「実里は笑わない方がいいと思う。」

「は?」

「さっきの人みたいなのが増える。」


 訳が分からないが津村がむくれている・・・気がする。この短時間であまり表情が変わらないやつなのが分かった。


「さっきのってなんだよ・・・」


 津村は俺の呟きのような質問には答えず黙々とご飯を食べ進める。

 俺が残した半分も津村の胃袋に消えた。

 細身なのに意外と食べるやつなんだな。



 カツカレーは少し辛口で美味しかった。







 学食を出たら後は風呂だが、この寮には部屋に風呂・シャワーが一つずつついているのとは別に共用の大浴場がある。

 学校のパンフレットで見たものはそこそこ広かった。ワクワクしながら俺は着替えとタオルを小さいカバンに詰めていく。


「実里。どこにいくの?」

「今日は大浴場に行こうと思って。楽しみにしてたんだよな。」


「だめ。実里は行かないほうがいいと思う。」

「どうしてだよ。いいだろ、新入生は利用禁止とかないだろ。」


「だめだ。大浴場は・・・幽霊が出るらしい。」


 こいつ、こんな分かりやすい嘘もつくんだな・・・


「嫌だ!て言うかお前俺が幽霊怖がると思ってるだろ!」


 確かにそれは当たっているがどうして俺が大浴場に行くのを嫌がるんだろう。


「俺行くからな!」

と言って部屋を出ようとすると腕を掴まれた。


「駄目・・・危険すぎる。」

「な・・・」


そう言うと俺を腕に抱え込んで話さなくなつてしまった。

身長差がある俺が離れようとしてもびくともしない。


「分かったよ・・・今日は諦める。」


仕方なく俺は折れることにした。

さっきからコイツの考えていることが分からない。


大浴場、楽しみだったのにな。



そのまま部屋の風呂に入った後不貞腐れて眠った。


































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