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入学式
しおりを挟む俺、栗原 実里(くりはら みさと)は今日から私立の男子校である西園学園に入学する。
共学ではなく寮に入ってまで家から遠いこの男子校に入学したのには訳がある。
それは、俺が中学生にして女性恐怖症に陥りかけていたからだ。
小学生の時は普通に女子とも遊んだりしていた。
初恋は隣の席の二つ結びが可愛い女の子で、その次がボーイッシュで一緒にいて楽しい女の子だった。
しかし、気がついたら俺は女子に告白するどころか知らない間に嫌われるようになった。
特に中学に上がってからエスカレートしていた。
他の奴が話しかけても普通なのに俺が話しかけるとツンとしていて酷い時は無視されていた。
理由も分からず仲の良い友達に相談すると(男友達は普通に多かった。)
「まぁ、実里はあれだな。女の子は向いてないかもな。」
と訳のわからないことを言われた。
親友にも、「俺らがいるだろ」
と匙を投げられていた。
そのまま俺は気がつけば女子との会話がなくなり近づくことにさえ恐怖を覚え始めていた。
そしてしばらく心を休めるべく俺は親に頼み込んでこの男子校に入学することとなった。
当たり前だがここには男子しかいない。
中学までの記憶は忘れて心機一転。
楽しい青春時代を謳歌するぞ!
とこの時の俺は燃えていた。
入学式当日。俺は張り出されたクラスの出席番号順に並んでいた。
早速前のやつに話しかけてみる。
俺の前のやつ茶髪の猫っ毛でどこかふわふわとした柔らかい印象のやつだった。
彼は北御門 祐里(きたみかど ゆうり)と名乗った。
それから俺たちはお互いの中学や出身、部活は何に入っていたのかなど、たわいのないことを話した。
祐里はふと周りを見渡したかと思うと
「実里ってモテるでしょ。」
と言った。
「へ!?」
一瞬なんのことかと思ったが俺は否定した。
「いやいや!俺中学までも全然でむしろ女子には嫌われていたというか・・・」
それはもうトラウマ級に。
でも、同性から見て俺ってかっこいいのかな?と少し嬉しくなる。
俺が照れているとその後に祐里はとんでもない爆弾発言をしてきた。
「いや、そっちじゃなくてさ。男にだよ男に。めっちゃ可愛い顔してんもんね。俺そっちじゃないけど何て言うか庇護よくそそられるかんじ?」
さっきよりも訳がわからなくなった。
「いやいやいや!なんだよそれ!?俺男だし!可愛くないだろ!」
「気づいてない?さっきから実里チラチラ見られてんの。この男子校、多いらしいよそう言うはなし」
と言うと祐里はニヤリと笑って見せた。
なんなんだコイツは!もの凄く嫌なやつなのか??
入学早々なんの嫌がらせだこれは。
きっと祐里を睨みつけるていると後ろのやつに声をかけられた。
「おまえら入学早々喧嘩か?落ち着けって。俺、黒川 大和(くろかわ やまと) よろしくな!」
と言ったのは黒髪の後ろを短く刈り上げたいかにも体育会系の男だった。
でかい。180は超えているだろう長身を見上げていると腹立たしいことにやつは俺の顔を見て
「うお!確かに可愛い。めっちゃ好み・・・」
などと抜かしやがった。
「俺は!可愛くなんかない!!」
入学早々前後の奴がこんなんで先が思いやられる・・・
入学式が終わり講堂から出ると新入生と新入生目当ての部活動の勧誘で人が溢れかえっていた。
進めないだろ、これ。
なんとか人を押し分けていくしかながら進もうとするが、俺にもひっきりなしに勧誘の声がかかる。
それどころか他のやつより多いのではないかと思う。
運動部のマネージャーからツチノコ観察会などという訳のわからないものまで様々な部活の勧誘にあう。
とりあえずチラシを受け取って「考えてみます。」と言って話をおわらせる。
一つ終わったと思うとまた次の部活の部員が前の人を押し除けるようにして僕の前に立つ。
これではキリがないと思いながらどうしようかとあたりを見渡す。
そこで俺は一つの考えが浮かんだ。
やつに頼るのは癪だが背に腹は変えられない。
俺は自分より少し後ろにいた黒川の腕を掴むと後ろに回り込んだ。
これで盾の完成だ。
急に俺に掴まれた黒川はなんのことか分からず戸惑っていたが、俺が
「勧誘も人もきりなくて進めないから盾になってくれ!」と言うと
「オッケー。任せてお姫様。私めがあなたの盾になりましょう。」
と言いながら、人混みを掻き分けぐいぐいと進んでいく。
(さすが、でかいだけのことはあるな)と感心する。
運動部に熱烈な勧誘を受けていたが
「もう入部届だしてあるんで~」と断っていた。
コイツ体格もいいし運動できそうだから推薦でも取ってそうだなと思う。
俺は盾を得てから引き離されないように必死に黒川の学ランを掴んで後ろにピッタリとくっついて歩いた。
やっと人混みを抜けたところで掴んでいた手を離した。
「ありがとな。助かった。その身長が羨ましいぜ」
と礼を言うと。黒川はニッコニコで
「役得だし、こちらこそありがとう!」
と謎に礼で返してきた。
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