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第1章
監視対象3
しおりを挟むこれで最後の部屋だな。
俺はB31と書かれた部屋のインターホンを鳴らす。
すると扉の奥から「はーい」と声がし、暫くすると扉が開かれた。
「え!?夏兄さん!?」
「…昨日ぶりだな」
ミナミダが扉から顔を出しこちらを見て驚いている。驚きたいのは俺の方だが…。
まさかミナミダのことも俺が担当として監視することになるとは。
「えーと…あの…昨日の…その節はすみません」
「別に謝らなくて良い」
「うっ……
あ!そうだ!名前…じ、自己紹介しよう!」
冷たく言い放った俺に怖気つきながら、ミナミダは話を変えようとしたのか自己紹介を提案する。
それは良い提案かもしれない。ナカモトがあの件の主犯だとしても、共犯のミナミダに夏兄という愛称で呼ばれたくない。
俺は同意の意味を込めて静かに頷いた。
「オレ、ミナミダ京弥といいます!
京都の京に弥生の弥で京弥と読みます」
「俺は宮迫夏彦だ」
「へえ……宮迫……
…え!?宮迫夏彦っ!?!?」
俺の名前を聞いたミナミダは足の力が抜けたのか、その場で膝をつき頭を抱える。
何だその反応は。
「や、やばい、怒られる、ぜったい」
「誰に怒られるんだ?」
「あ…いや!こっちの話なんで!」
「………そうか」
明らかに俺の名前を聞いてミナミダが動揺していた。
ミナミダも春希経由で俺のことを知っていたのだろうか。というか、どいつもこいつもなぜ俺のことを知っている奴が多いんだ。
「その、先日は本当にすみませんでした。
オレ、ナカモトが宮迫さんの夢で何をしたいかまでは聞いてなくて、もし夏兄と言う人に会う時があれば能力を使って眠らせて欲しいとしか……。
……オレも夏兄が宮迫さんだって知っていればこんなことしなかったのに」
「……俺が宮迫だと何か問題があるのか?」
「え……良いじゃないですか!そんなことは!」
分かりやすくはぐらかすな…。
ミナミダが何故俺のことを知っていたのは引っかかるが、今聞いたとしてもミナミダは答えてくれないだろう。
先ほどから必死に誤魔化そうとしている。
まぁこれからはミナミダの監視役になるのだから聞ける機会もあるだろきっと。
「じゃあこれからよろしくお願いするね、宮迫さん!」
「あぁよろしく」
ミナミダは元気よく頭を下げたあと、「オレはこれから用事があるんで失礼します!」と言い、部屋に戻っていった。用事…?とまた更にミナミダに対して疑問は増えたが、これも今後聞いていくかとめんどくさくなった俺は後回しする事にした。
とりあえず109号室の能力者全員と挨拶はできたよな。
それぞれの部屋にいた住民を確認として思い出す。
A15にはナカモト巡、C07・08にはヤグチ望・叶、D01にはアヤザキ、そしてB31にはミナミダ京弥がいた。
中々に癖のある能力者しかいないので、この先やってけるか不安だ。結果を出せなくて、テロ組織本部の制圧に参加させてもらえないなんてことになったら嫌だなぁ…。
静まり返った廊下で1人ため息をつき、109号室の出口へと足を向けた。
***
「宮迫お疲れ、109号室のみんなには挨拶できたか?」
109号室から出ると、扉とは反対の壁に坂上さんが背中を預けて立っていた。
俺は坂上さんに頭を下げ「お疲れ様です」と挨拶をする。それに応えるかのように坂上さんは俺に近づくと、手に持っていた紙束を俺に差し出した。
「はい、能力者についての資料。
監視班が資料をまとめ終えたから代わりに持ってきたよ」
「そんなわざわざありがとうございます」
「早めに渡してやらないと怒るだろ、宮迫は」
「………」
俺は坂上さんを無視して、渡された資料の内容を確認する。
確かに109号室の能力者についての資料だ。みんなの情報が細かく記載されている。
「え、うそ、無視?」という坂上さんの声が聞こえたので、俺は資料から目を離して再び坂上さんを見た。
「資料はどう?まとめ忘れてた能力者とかいなかったか」
「ちゃんと109号室の能力者全員について書かれてますよ。
まぁ詳細な内容はあとで確認しますけど」
「それなら良かった」
資料は能力者の能力だけでなく、経歴や好物、趣味なども書いてあった。俺としては能力者の能力だけ知られるならなんでも良いのだが、一応は読んでおくか。
そう俺が考えていると坂上さんがふと思い出したかのように「そういえば」と話し始めた。
「ナカモトくんとミナミダくんはどうだった」
「どうって……ナカモトは全く反省の色がなかったけど、
ミナミダの方が少しは反省していたのか、結構落ち込んでましたね」
「ほーミナミダくんは反省してたんだ」
坂上さんは意外そうな口振りをする。
そんな坂上さんの反応に俺は困惑した。
なんだ、何かミナミダに対して不思議なことでもあるのか。
「えっと、ミナミダが何かやらかしてましたか?」
「やらかしてはいないのだけど、あの子ら2人とも宮迫を監視班へ支持していたからさ。
てっきりどっちも反省してないのかと思ったんだよね」
「それはつまり…どういうことですか」
「普通悪さした相手に監視なんてさせるかなと思って。
謝りたいなら分かるのだけど、ミナミダくんから宮迫へ謝罪したいとは言われなかったからさ。…でも反省してたのなら良いか」
「………」
ミナミダも俺を監視班へ支持してたのか。それにしては俺が担当だったことを意外そうにしていた気がするが…。
先ほどからミナミダについては何かが引っ掛かる。それが何かは今の俺には見当もつかないが、それでもミナミダには用心した方がいいのだろうか。
「資料も渡せたし、私は任務にでも行ってくるよ」
「は?」
まだ任務に行ってなかったのか。
俺を追い出す時に任務の時間と言っていたのに、やはり嘘だったんだな。今日報告した時刻から2時間も経っているけど、何をしていたんだよ。
……この人のことだからサボりだろうけど。
「坂上さん……俺がいなくても仕事はちゃんとしてくださいね」
「肝に免じておくよ」
調子良く応える坂上さんに呆れてしまう。
「あ、それと宮迫の今日の仕事は109号室の挨拶だけだから、資料読んだら帰れよ」
「え」
「昨日は夜中まで働いていただろう。労基に訴えられたら堪らないからな」
「何を今更」
「冗談だよ、普通に疲れがまだ溜まっているだろ。
明日に備えて早めに退勤して欲しい、救出班と違って監視班は7時出勤だからね」
確かにそれは休まないとまずいかも。
救出班の自由な勤務時間とは違い、監視班はしっかりとスケジュールがありそうだ。
「分かりました。この資料を読み終えたら帰ります」
「素直でよろしい」
坂上さんが俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でる。暫くして満足したのか「じゃあ本当に行ってくるね」と言い、俺を置いて廊下を進んでいく。
「坂上さんお気をつけて」
「おう、宮迫は頑張れな」
坂上さんはこちらを振り返らず手を振って行ってしまった。
坂上さんを見送ったあと、俺も帰る準備をするかと思いロッカールームへと歩みを進めた。
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