スカーレットオーク

はぎわら歓

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風の住処(番外編)

12 忠告

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 颯介は告白の返事はもらっていないが、ラインのIDを交換できた。
まめな颯介は毎日ラインをする。
 市場の様子やら入荷した魚やら、とりあえず自分の身の回りのことを気軽に早苗に伝えた。

  その甲斐もあって早苗も打ち解けて来始めた。
 日曜日には図書館で待ち合わせて、公園をぶらついたり買い物したり映画を見たり色々デートを重ねる。

  そうやって三ヶ月が過ぎようとしていた。

 『もしもし。絵里奈、久しぶり。なんだ?』
 『颯ちゃん、明日さあ。葵のお迎えお願いできない?』
 『え、あ。お迎えか……』
 『ありゃ。まずいの?』
 『うーん。ちょっと』
 『なんかあやしいわね。はっきり言いなさいよ』

 『実はさあ。早苗先生と今いい感じで。』
 『ええ。まじ!』
 『おう』
 『で、誤解を招きたくないわけね』
 『さすが、話が早いな』
 『それならいいけどさ。遊ばないでよ?他の人と早苗先生はわけが違うよ?』
 『もう三ヶ月ぐらいになるけど手も握ってないって』
 『え。それはそれで記録的だね……』

 『まあ一応デートしてるだけだからさ』
 『ふーん。でもさ。そろそろ今までの付き合い方とは同じわけにはいかないと思うよ?結婚とか考えられんの?』

 『え。結婚って。飛躍しすぎだろ。まだ何にもしてねえのに』
 『じゃ何かしたら結婚だと思ったほうがいいわよ』
 『はあ。またあとで考えるよ』
 『まだいいけど。じゃ、しばらくお願い事はなしにするから。真面目にね』
 『すまん』

 『いつも助けてくれてありがと。颯ちゃんも困ったら相談して。じゃね』
 『うん。ほんとごめん。またな』

  颯介は電話を切ってため息をついた。
 (結婚かあ……。そこまで思わなかったな。でも地元じゃ三十歳ってみんな結婚してるよな)
  考えているとドアをノックする音が聞こえた。

 「どうぞー」
 「兄貴、飯」
 「んー」 
  珍しく考え込んでいる颯介を見て(まーた女か)と、直樹は軽く思っただけだった。
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