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第三部
1 二人きり
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車から降りて、久しぶりに買い換えたSUV車を眺めた。(カーキで正解だったな)
少し山奥に入った直樹の住まいは木々に囲まれており、セルフビルドで建てた木造の家は時間の経過とともに周囲の自然とも溶け込み、素朴で温かみのある雰囲気になっている。
兄の颯介からは相変わらず地味な趣味だと言われたが、彼ののメタリックな大型ミニバンを思い出すとこれくらいのほうが自分には似合っているし落ち着くと改めて思う。(後で洗車しよう)
玄関に息子のスニーカーがないことに気付いた直樹は今日明日、優樹が修学旅行で居ないことを思い出す。(十二年ぶりか……?)
妻の緋紗と二人きりになるのは何時振りか忘れるくらい過去のことのように感じる。(洗車はまた今度だな)
銀縁の角ばった眼鏡の位置を人差し指で少し直し、ふっと笑いながら直樹はそっと家に忍び込み、リビングをこっそり抜け、台所を覗いた。緋紗は甲斐甲斐しく食事の支度をしている。
四十代になった緋紗は若いころの中性的でほっそりとした肢体から少し丸みを帯び、ウエストのくびれはそのままに女性らしいS字ラインを描いていた。
食器を並べ終わった緋紗を後ろから抱きしめる。
「ただいま。奥さん」
「あっ。びっくりした。あなた、お帰りなさい」
「今日、優樹いないんだよね」
「ええ。なんか静かね」
笑いながら言う緋紗に直樹は口づけをして強く抱きしめた。
素早く抱き上げてリビングの柔らかいヌメ革のソファーに降ろす。
突然のことに緋紗は戸惑っているようだ。
「あ、あのっ」
「いいでしょ。こんなチャンス滅多にないし」
直樹は緋紗の薄手のTシャツの上から背中のブラジャーのホックをはずし胸をはだけさせた。
「ああ……」
「そこに手をついて」
緋紗はこれからの行為に期待感が募るようで呼吸数があがり、頬を上気させている。
手早く下着を外し簡単だが緻密な愛撫を与えて後ろから挿入する。
「あぅっ」
「後でまたゆっくりね」
そう耳元でつぶやくと緋紗は息を荒くして身をよじった。
慣れ親しんでいる身体はすぐに反応して馴染んでいく。
「んんっ」
子供ができてから緋紗は声を殺しながら感じるようになっている。
そんな緋紗をもっと乱れさせてみたいような耐えられる程度に止めておこうかというのが直樹のジレンマだ。
「声出していいよ」
「ああ。でも……」
緋紗の花芯を擦りあげていかせる。
どこをどうすれば感じるか今では知り尽くしていた。
「ん、ああっ」
直樹も緋紗の収縮と振動を感じ、少しの時間差で達した。
ぐったりした緋紗をソファーで横たわらせたまま身体を綺麗にしてやった直樹は「ゆっくりしてていいよ。ご飯してあげるから」 と作業服を直して夕飯を装いはじめた。
直樹と緋紗は結婚して十四年になる。
男性不妊症だったのが奇跡的に一人息子に恵まれた。そして小学六年生の息子の優樹は今だに緋紗にべったりだ。
十歳になった時に子供部屋で独りで寝かせようとしたがいつの間にか二人のベッドに潜り込んでくる。
息子が可愛いと思う気持ちと緋紗との間に割り込んでくる鬱陶しさに、時たま不満が湧いてくる。
自分でも大人げないが恋のライバルのようだ。
緋紗は案外あっさりとしていて一人息子を溺愛している様子がないのが救いだった。(そろそろ好きな女子とかいないのか)
直樹は優樹に早く母親離れをしてほしいと望んでいる毎日だ。
食卓に料理が並べ、直樹は緋紗を抱き起しテーブルに着かせた。
「こぼしてるよ」
笑いながら直樹は緋紗の口元に付いたエビチリの赤いソースを指先でぬぐってやると、恥ずかしげにいそいそとおぼつかない箸使いでご飯を食べた。
「一緒にお風呂入ろうか」
「う、ん」
ますます怪しい箸使いで緋紗は食事をなんとか終えた。
「早くおいでよ」
直樹が呼ぶと身体を手で隠しながら緋紗がやってきた。
掛け湯をして湯船につかってきた緋紗を抱き寄せると、ふうとため息をついて頭を直樹の胸に乗せる。
「ほんと久しぶりね。一緒にはいるの」
「のぼせるといけないからここではよすか」
「ん……」
二人はお湯の暖かさと身体の触れ合う気持ちよさを堪能した。
スカーレットオークでできたキングサイズのベッドは広々として、二人の憩いの場であり二人の時間や思いを刻んでいる。
このベッドで幾夜愛し合っただろうか。
二人のこと全てを知っているベッドだ。
直樹は辛口のマティーニを作り緋紗の作ったグラスに注いでベッドに運んだ。
飲みながら緋紗の肩を抱き直樹はつぶやく。
「今日は邪魔が入らないから、ゆっくりできそうだな」
「そんな……」
緋紗は優樹のことを想って少し困った笑顔を浮かべた。
「今夜は優樹のこと、ちょっと忘れて。」
直樹の繊細で巧みな指使いが緋紗の身体を這う。
緋紗は目を閉じて直樹の愛撫を堪能始めた。
「シックスナインしようか」
「う、うん」
身体を弄られてすっかり感じてしまっている緋紗は、直樹の要求を恥ずかしくても嫌だとは言えなかった。
眼鏡のレンズが光り、直樹のクールな目で見つめられると、それだけで魔法にかかったように言いなりになってしまう。
緋紗の敏感な部分に舌を這わせながら直樹は緋紗の口に起立したものをあてがった。
緋紗は喘ぎながら直樹のものを一生懸命愛撫しているが、快感ゆえに動きが時たま止まる。
緋紗の花芯を少し刺激を強くすると直樹のものを咥えたまま瞬く間にいってしまった。
「ああっ。んんんっ」
「もういっちゃったのか」
直樹は身体中を紅潮させて息を荒げている緋紗を見ながら薄く笑い、マティーニを飲んで少し緋紗の口にも注いだ。そして舌を絡めながら挿入する。
「んんっ」
手の甲を口に当て、声を押し殺しながら感じる緋紗の束ねた髪をほどいた。
「ほら。もっと声出して」
腰をつかんで激しく動く。
「ああっ。だめっ」
「ちょっと休憩」
直樹は動きを止めて緋紗の頬を撫でた。
「ああ。はあ……」
残念そうなため息をこぼす緋紗に口づけをし、繋がったまま身体を起こして直樹は彼女の身体を眺める。
「熟女って感じだね」
「あんまり見ないで。体型が……」
「綺麗だよ。質感もいいし」
(ダナエみたいだ)
また少し動いて緋紗の喘ぐ声を聴く。
指にマティーニをつけ緋紗になめさせると恍惚とした様子で指先を吸っている。
「緋紗」
名前を呼ぶと軽く締め付けてくる。
「あんっ。直樹さん、気持ちいい」
ここ数年は『お父さん、お母さん』とか『奥さん、あなた』など固有名詞で呼び合うことが多くなっていた。
新婚当初に戻ったような新鮮さと、長く馴染んできた愛着が交差して二人は強く抱きしめあう。
直樹の動きに緋紗も応じて上りつめていく。
螺旋を描くような快感が二人を貫き、身体を密着させ口づけをして、抱いているのか抱かれているのかわからなくなるような官能の中、二人は歓喜の声を上げた。
いつも通りに直樹は緋紗の身体を綺麗にしてやりパジャマを着せてやった。
「ありがと……」
緋紗はまだ痺れているような余韻が残っているような様子で横になっている。
直樹も一緒に横たわり緋紗の身体を抱き寄せて髪を耳にかけた。
「すごくよかったよ」
「私も」
うっとりしながら言う緋紗に口づけをする。
「さすがに歳だからもう限界」
直樹は笑いながら言った。
「若くても私、無理よ」
緋紗は直樹の首に手を回し、とろんとした目を潤ませる。
「もっとこんな時間が欲しいな」
「うん」
若い頃のような性欲とは違う気がするが触れ合いたい欲求はなくならないものだと、久しぶりに堪能する妻の身体をしっかり抱いて直樹は眠った。
少し山奥に入った直樹の住まいは木々に囲まれており、セルフビルドで建てた木造の家は時間の経過とともに周囲の自然とも溶け込み、素朴で温かみのある雰囲気になっている。
兄の颯介からは相変わらず地味な趣味だと言われたが、彼ののメタリックな大型ミニバンを思い出すとこれくらいのほうが自分には似合っているし落ち着くと改めて思う。(後で洗車しよう)
玄関に息子のスニーカーがないことに気付いた直樹は今日明日、優樹が修学旅行で居ないことを思い出す。(十二年ぶりか……?)
妻の緋紗と二人きりになるのは何時振りか忘れるくらい過去のことのように感じる。(洗車はまた今度だな)
銀縁の角ばった眼鏡の位置を人差し指で少し直し、ふっと笑いながら直樹はそっと家に忍び込み、リビングをこっそり抜け、台所を覗いた。緋紗は甲斐甲斐しく食事の支度をしている。
四十代になった緋紗は若いころの中性的でほっそりとした肢体から少し丸みを帯び、ウエストのくびれはそのままに女性らしいS字ラインを描いていた。
食器を並べ終わった緋紗を後ろから抱きしめる。
「ただいま。奥さん」
「あっ。びっくりした。あなた、お帰りなさい」
「今日、優樹いないんだよね」
「ええ。なんか静かね」
笑いながら言う緋紗に直樹は口づけをして強く抱きしめた。
素早く抱き上げてリビングの柔らかいヌメ革のソファーに降ろす。
突然のことに緋紗は戸惑っているようだ。
「あ、あのっ」
「いいでしょ。こんなチャンス滅多にないし」
直樹は緋紗の薄手のTシャツの上から背中のブラジャーのホックをはずし胸をはだけさせた。
「ああ……」
「そこに手をついて」
緋紗はこれからの行為に期待感が募るようで呼吸数があがり、頬を上気させている。
手早く下着を外し簡単だが緻密な愛撫を与えて後ろから挿入する。
「あぅっ」
「後でまたゆっくりね」
そう耳元でつぶやくと緋紗は息を荒くして身をよじった。
慣れ親しんでいる身体はすぐに反応して馴染んでいく。
「んんっ」
子供ができてから緋紗は声を殺しながら感じるようになっている。
そんな緋紗をもっと乱れさせてみたいような耐えられる程度に止めておこうかというのが直樹のジレンマだ。
「声出していいよ」
「ああ。でも……」
緋紗の花芯を擦りあげていかせる。
どこをどうすれば感じるか今では知り尽くしていた。
「ん、ああっ」
直樹も緋紗の収縮と振動を感じ、少しの時間差で達した。
ぐったりした緋紗をソファーで横たわらせたまま身体を綺麗にしてやった直樹は「ゆっくりしてていいよ。ご飯してあげるから」 と作業服を直して夕飯を装いはじめた。
直樹と緋紗は結婚して十四年になる。
男性不妊症だったのが奇跡的に一人息子に恵まれた。そして小学六年生の息子の優樹は今だに緋紗にべったりだ。
十歳になった時に子供部屋で独りで寝かせようとしたがいつの間にか二人のベッドに潜り込んでくる。
息子が可愛いと思う気持ちと緋紗との間に割り込んでくる鬱陶しさに、時たま不満が湧いてくる。
自分でも大人げないが恋のライバルのようだ。
緋紗は案外あっさりとしていて一人息子を溺愛している様子がないのが救いだった。(そろそろ好きな女子とかいないのか)
直樹は優樹に早く母親離れをしてほしいと望んでいる毎日だ。
食卓に料理が並べ、直樹は緋紗を抱き起しテーブルに着かせた。
「こぼしてるよ」
笑いながら直樹は緋紗の口元に付いたエビチリの赤いソースを指先でぬぐってやると、恥ずかしげにいそいそとおぼつかない箸使いでご飯を食べた。
「一緒にお風呂入ろうか」
「う、ん」
ますます怪しい箸使いで緋紗は食事をなんとか終えた。
「早くおいでよ」
直樹が呼ぶと身体を手で隠しながら緋紗がやってきた。
掛け湯をして湯船につかってきた緋紗を抱き寄せると、ふうとため息をついて頭を直樹の胸に乗せる。
「ほんと久しぶりね。一緒にはいるの」
「のぼせるといけないからここではよすか」
「ん……」
二人はお湯の暖かさと身体の触れ合う気持ちよさを堪能した。
スカーレットオークでできたキングサイズのベッドは広々として、二人の憩いの場であり二人の時間や思いを刻んでいる。
このベッドで幾夜愛し合っただろうか。
二人のこと全てを知っているベッドだ。
直樹は辛口のマティーニを作り緋紗の作ったグラスに注いでベッドに運んだ。
飲みながら緋紗の肩を抱き直樹はつぶやく。
「今日は邪魔が入らないから、ゆっくりできそうだな」
「そんな……」
緋紗は優樹のことを想って少し困った笑顔を浮かべた。
「今夜は優樹のこと、ちょっと忘れて。」
直樹の繊細で巧みな指使いが緋紗の身体を這う。
緋紗は目を閉じて直樹の愛撫を堪能始めた。
「シックスナインしようか」
「う、うん」
身体を弄られてすっかり感じてしまっている緋紗は、直樹の要求を恥ずかしくても嫌だとは言えなかった。
眼鏡のレンズが光り、直樹のクールな目で見つめられると、それだけで魔法にかかったように言いなりになってしまう。
緋紗の敏感な部分に舌を這わせながら直樹は緋紗の口に起立したものをあてがった。
緋紗は喘ぎながら直樹のものを一生懸命愛撫しているが、快感ゆえに動きが時たま止まる。
緋紗の花芯を少し刺激を強くすると直樹のものを咥えたまま瞬く間にいってしまった。
「ああっ。んんんっ」
「もういっちゃったのか」
直樹は身体中を紅潮させて息を荒げている緋紗を見ながら薄く笑い、マティーニを飲んで少し緋紗の口にも注いだ。そして舌を絡めながら挿入する。
「んんっ」
手の甲を口に当て、声を押し殺しながら感じる緋紗の束ねた髪をほどいた。
「ほら。もっと声出して」
腰をつかんで激しく動く。
「ああっ。だめっ」
「ちょっと休憩」
直樹は動きを止めて緋紗の頬を撫でた。
「ああ。はあ……」
残念そうなため息をこぼす緋紗に口づけをし、繋がったまま身体を起こして直樹は彼女の身体を眺める。
「熟女って感じだね」
「あんまり見ないで。体型が……」
「綺麗だよ。質感もいいし」
(ダナエみたいだ)
また少し動いて緋紗の喘ぐ声を聴く。
指にマティーニをつけ緋紗になめさせると恍惚とした様子で指先を吸っている。
「緋紗」
名前を呼ぶと軽く締め付けてくる。
「あんっ。直樹さん、気持ちいい」
ここ数年は『お父さん、お母さん』とか『奥さん、あなた』など固有名詞で呼び合うことが多くなっていた。
新婚当初に戻ったような新鮮さと、長く馴染んできた愛着が交差して二人は強く抱きしめあう。
直樹の動きに緋紗も応じて上りつめていく。
螺旋を描くような快感が二人を貫き、身体を密着させ口づけをして、抱いているのか抱かれているのかわからなくなるような官能の中、二人は歓喜の声を上げた。
いつも通りに直樹は緋紗の身体を綺麗にしてやりパジャマを着せてやった。
「ありがと……」
緋紗はまだ痺れているような余韻が残っているような様子で横になっている。
直樹も一緒に横たわり緋紗の身体を抱き寄せて髪を耳にかけた。
「すごくよかったよ」
「私も」
うっとりしながら言う緋紗に口づけをする。
「さすがに歳だからもう限界」
直樹は笑いながら言った。
「若くても私、無理よ」
緋紗は直樹の首に手を回し、とろんとした目を潤ませる。
「もっとこんな時間が欲しいな」
「うん」
若い頃のような性欲とは違う気がするが触れ合いたい欲求はなくならないものだと、久しぶりに堪能する妻の身体をしっかり抱いて直樹は眠った。
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