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第一部
68 紅葉
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スカーレットオークが色づき始めていた。――綺麗な赤色。
緋紗は紅葉した葉を拾った。
今日は直樹の誕生日のはずだ。去年の今日初めて出会った。――直樹さん、お誕生日おめでとう。
直樹は自分のことがプレゼントだと言ってくれた。
自分を全部あげられたらいいのにと緋紗は思う。
ペンションで働き始めて三ケ月目に入る。
緋紗がここへ来てから数日後に小夜子が産気き、和夫も出産に立ち会ったのでその日は一日てんてこ舞いだった。
それでも何とかやり遂げたので緋紗も自立への自信がついてきたのだった。
赤ちゃんは女の子で『和奏わかな』と名付けられ、しばらく小夜子は育児に専念する。
緋紗は小夜子の出産後の美しさに圧倒された。
もともと華やかな人なのにますます存在感が大きくなっている。
自分が同じ女性だとは信じられないくらいだ。
強さと優しさとを兼ね備えた小夜子は最強だと緋紗は実感し、そんな小夜子に寄り添っている和夫の包容力も緋紗には素晴らしく映った。
なるべくしてなった夫婦なのだろうと羨ましく思う。
このペンションで働かせてもらう間に和夫と小夜子の馴れ初めも聞いた。
小夜子は手の怪我によって演奏家としての限界を感じていたがピアノを捨てることはなかった。
ただ華やかな世界からステージを変え、福祉施設への慰問として演奏活動を行っていたところで和夫と出会ったらしい。
和夫は偶然小夜子のピアノを聴き、自分のことを偽らない生き方をしようと決心したそうだ。
緋紗がここに初めて訪れたときには小夜子は妊娠をしていたので、他所への演奏は休止していたがやはりこれからもそういう活動をし続けたいようだ。
きっと小夜子はいつまでも輝き続けるだろうし、自分を偽らない和夫の生き方も素晴らしいものだろう。
まだ人生に対してぼんやりとしている緋紗だったが、自分の周りには素晴らしい見本がいくつもあることを知った。
しかし直樹に出会わなければきっと気づかなかったことだろう。
感謝の気持ちを直樹に捧げるように緋紗はスカーレットオークの幹に額を当て、そして厨房へと向かった。
緋紗は紅葉した葉を拾った。
今日は直樹の誕生日のはずだ。去年の今日初めて出会った。――直樹さん、お誕生日おめでとう。
直樹は自分のことがプレゼントだと言ってくれた。
自分を全部あげられたらいいのにと緋紗は思う。
ペンションで働き始めて三ケ月目に入る。
緋紗がここへ来てから数日後に小夜子が産気き、和夫も出産に立ち会ったのでその日は一日てんてこ舞いだった。
それでも何とかやり遂げたので緋紗も自立への自信がついてきたのだった。
赤ちゃんは女の子で『和奏わかな』と名付けられ、しばらく小夜子は育児に専念する。
緋紗は小夜子の出産後の美しさに圧倒された。
もともと華やかな人なのにますます存在感が大きくなっている。
自分が同じ女性だとは信じられないくらいだ。
強さと優しさとを兼ね備えた小夜子は最強だと緋紗は実感し、そんな小夜子に寄り添っている和夫の包容力も緋紗には素晴らしく映った。
なるべくしてなった夫婦なのだろうと羨ましく思う。
このペンションで働かせてもらう間に和夫と小夜子の馴れ初めも聞いた。
小夜子は手の怪我によって演奏家としての限界を感じていたがピアノを捨てることはなかった。
ただ華やかな世界からステージを変え、福祉施設への慰問として演奏活動を行っていたところで和夫と出会ったらしい。
和夫は偶然小夜子のピアノを聴き、自分のことを偽らない生き方をしようと決心したそうだ。
緋紗がここに初めて訪れたときには小夜子は妊娠をしていたので、他所への演奏は休止していたがやはりこれからもそういう活動をし続けたいようだ。
きっと小夜子はいつまでも輝き続けるだろうし、自分を偽らない和夫の生き方も素晴らしいものだろう。
まだ人生に対してぼんやりとしている緋紗だったが、自分の周りには素晴らしい見本がいくつもあることを知った。
しかし直樹に出会わなければきっと気づかなかったことだろう。
感謝の気持ちを直樹に捧げるように緋紗はスカーレットオークの幹に額を当て、そして厨房へと向かった。
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