32 / 140
第一部
32 仕上げ
しおりを挟む
直樹が部屋を出て行ったあと緋紗も起きだしてすぐ支度をした。
朝はいつも気恥ずかしい。
冷たい水で顔を洗い、気合を入れ厨房へ向かった。
厨房ではもうコンソメスープのいい匂いがしていて熱気で暖かかった。
「おはようございます」
「おはよう」
エプロンをつけて厨房を見回り、調理に使った道具類を片付け、和夫と直樹の邪魔にならないように整頓をした。
「おはよー緋紗ちゃん」
「小夜子さん、おはようございます」
「今日も元気ね」
小夜子はあくびをしながらにっこり笑った。
緋紗はお湯を沸かしてみんなのお茶の用意をし、直樹が朝食を並べたのでみんなで座って食べた。
小夜子が今日の予定を話し出す。
「えっと。今日は家族三人が一組、女性三名一組、カップル二組以上。で明日やっと冬季休業です」
やれやれと言うように小夜子はお茶を啜った。
和夫が、「緋紗ちゃんは明後日帰るんだったな。今日一日頑張ってくれ。皿も頼むな」と、緋紗に手を合わせた。
「あ、いえ。頑張ります」
緋紗は緊張して頭を下げた。
「そっか。早いわね。もう帰っちゃうのね。残念だわあ」
「明日の午前にはお客が引けてしまうから午後からのんびり温泉でも入ったらいい。夜はゆっくりディナーにしよう」
「せっかく来たんだし仕事ばっかりじゃかわいそうよね」
和夫と小夜子が口々に言う。
「ありがとうございます」
――温泉楽しみ。
「直君もゆっくりしていいわよ」
小夜子が挑戦的な目つきで言う。
「そうしますよ」
直樹も応戦した。
「客室は僕が片付けるから緋紗は皿を仕上げてやって」
――直樹さんばっかりに仕事してもらってるなあ。
少し申し訳ない気がしたが皿の様子も気になったのでアトリエに向かった。
気温は低いが空気が乾燥しているので結構乾いている。――削りごろだ。
全部の皿の乾き具合を調べて並べ直す。
何にでも頃合いというのがあってそれを逃すと難しかったり失敗したりするのだ。
道具類の中からカンナを探してクルクル回る皿を削る。
ぽってりしたラインが少しシャープなラインを見せ始めるが、ロクロで挽いた柔らかい雰囲気を壊してはいけない。
ギャップがあるのも面白いがちぐはぐにならないように気を付ける。
使うのは勿論、表のロクロされた面だが、作り手の力量は高台に出てくるのだ。
削った底の厚みを確認しながら無駄なものをそいでいく。
削って形を作るのではなく、その土の中にあった形を発掘する気持ちで緋紗は仕上げた。
違う粘土を使うのは何年かぶりだったがうまくできたように思う。――和夫さんにサイン入れてもらっておかなきゃ。
固く乾いてしまう前に和夫を呼びに行った。
朝はいつも気恥ずかしい。
冷たい水で顔を洗い、気合を入れ厨房へ向かった。
厨房ではもうコンソメスープのいい匂いがしていて熱気で暖かかった。
「おはようございます」
「おはよう」
エプロンをつけて厨房を見回り、調理に使った道具類を片付け、和夫と直樹の邪魔にならないように整頓をした。
「おはよー緋紗ちゃん」
「小夜子さん、おはようございます」
「今日も元気ね」
小夜子はあくびをしながらにっこり笑った。
緋紗はお湯を沸かしてみんなのお茶の用意をし、直樹が朝食を並べたのでみんなで座って食べた。
小夜子が今日の予定を話し出す。
「えっと。今日は家族三人が一組、女性三名一組、カップル二組以上。で明日やっと冬季休業です」
やれやれと言うように小夜子はお茶を啜った。
和夫が、「緋紗ちゃんは明後日帰るんだったな。今日一日頑張ってくれ。皿も頼むな」と、緋紗に手を合わせた。
「あ、いえ。頑張ります」
緋紗は緊張して頭を下げた。
「そっか。早いわね。もう帰っちゃうのね。残念だわあ」
「明日の午前にはお客が引けてしまうから午後からのんびり温泉でも入ったらいい。夜はゆっくりディナーにしよう」
「せっかく来たんだし仕事ばっかりじゃかわいそうよね」
和夫と小夜子が口々に言う。
「ありがとうございます」
――温泉楽しみ。
「直君もゆっくりしていいわよ」
小夜子が挑戦的な目つきで言う。
「そうしますよ」
直樹も応戦した。
「客室は僕が片付けるから緋紗は皿を仕上げてやって」
――直樹さんばっかりに仕事してもらってるなあ。
少し申し訳ない気がしたが皿の様子も気になったのでアトリエに向かった。
気温は低いが空気が乾燥しているので結構乾いている。――削りごろだ。
全部の皿の乾き具合を調べて並べ直す。
何にでも頃合いというのがあってそれを逃すと難しかったり失敗したりするのだ。
道具類の中からカンナを探してクルクル回る皿を削る。
ぽってりしたラインが少しシャープなラインを見せ始めるが、ロクロで挽いた柔らかい雰囲気を壊してはいけない。
ギャップがあるのも面白いがちぐはぐにならないように気を付ける。
使うのは勿論、表のロクロされた面だが、作り手の力量は高台に出てくるのだ。
削った底の厚みを確認しながら無駄なものをそいでいく。
削って形を作るのではなく、その土の中にあった形を発掘する気持ちで緋紗は仕上げた。
違う粘土を使うのは何年かぶりだったがうまくできたように思う。――和夫さんにサイン入れてもらっておかなきゃ。
固く乾いてしまう前に和夫を呼びに行った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
禁断溺愛
流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる