20 / 140
第一部
20 ペンションの夜
しおりを挟む
緋紗は身体をゆるゆると洗い広々とした湯船につかって伸びをし、美肌の効果を期待しながら身体を深く沈める。――よく入った。
髪をタオルでこすりながら脱衣所を出るとグリーンのパジャマ姿の直樹が水を飲みながら丸太の椅子に座っていた。
「よく温まった?」
ペットボトルの水を渡してくれる。
「あ、すみません」
「ロビーに行ってみる?暖炉がついているよ」
「はい」
柔らかいソファーに二人で腰かけ暖炉のゆるゆると燃える火を眺める。
「窯の初日みたい」
緋紗は嬉しそうに火をみつめた。
「窯焚きってすごい火なの?」
「火がすごいっていう感じじゃないですね。もちろん、いっぱい薪をくべたときは中でゴーゴー燃えますけど。どっちかっていうと千二百度超えてくるときの熱と光がすごいかな。もうまぶしくて目に残像が残るくらいですよ」
「へー。千二百度か。一回見てみたいな」
「窯を焚くと興奮しますよ」
――見せてあげたい。
緋紗はそうだ、と思い出したように直樹に質問した。
「直樹さんはピアノが趣味とかなんですか?」
「ん?ああ。そういうわけじゃないよ。前に兄貴の話したと思うけど」
「遊び人のお兄さん?」
「そそ。兄がなんでもやりたがる人なんだよ。しかも飽きっぽい」
思い出してあきれたような顔つきをしながら直樹は続けた。
「ピアノはもともと兄貴が始めてね、なかなか熱心だったから両親もこれならとピアノを買ってやったんだ。僕が四歳で兄貴が六歳のころかな。買ったら今度全然弾かなくなってね。ピアノがもったいないからって僕にまわってきた訳さ。ほかにも色々おさがりがよく来たよ」
やれやれと言ったふうだ。
「ああ、それで。和夫さんが直樹さんはなんでもできるって言ってました」
直樹は笑って、「好きなことをやってきて出来るってことじゃないんだけどね。じゃそろそろ部屋に戻ろうか」と、立ち上がった。
部屋に帰って緋紗がベッドに座ると直樹も隣に腰かけた。
緋紗の背中に緊張感が走る。
「一緒に寝る?」
聞かれて緋紗は小さくうなずいた。
「でも小さいね。ちょっと立って」
直樹はシングルベッドを軽く動かしてくっつけた。
「軽いと便利だね」
ついでに立っている緋紗も抱き上げてベッドに乗せる。
そしてサイドテーブルのランプをつけて部屋の照明を落とし緋紗の眼鏡をはずす。
「会いたかったよ」
「私もです」
やっと落ち着いて二人きりになれたと思って緋紗は落ち着きを取り戻してきていた。
直樹が口づけをするので目を閉じた。
唇の感触を楽しんでうっとりしていると直樹が緋紗をベッドに倒してパジャマのボタンを外し始める。――パジャマの生地が似てる……。
されるがままになっていると突然『ガタッ』と隣の部屋から音がし、更にボソボソと話し声がなんとなく聞こえる。
気になり始めると緋紗は集中力を失い始めてしまった。
直樹の愛撫に集中できない。
抱かれたくてここにいるのに、今からの行為が隣に筒抜けになるのではないかと思うとテンションが下がってしまう。
緋紗の様子に直樹は、「隣が気になる?」と、聞いた。
「少し」
「じゃこっちおいで」
直樹は手を引っ張ってベッドから下ろし立たせた。
立ち上がって向き合う形でキスをする直樹に少し疑問を感じながら応じていると、壁のほうに促され後ろ向きにされた。――え?
緋紗の両手をつかんで壁につかせる。
「あ、あの」
うろたえてる緋紗に後ろから耳元へ囁かれる。
「抱かせて」
――ああ。
こんなふう言われて拒めるだろうか。
後ろから乳房を揉みしだかれ緋紗は目を閉じて声を出さないように我慢していると、パジャマのズボンが下に降ろされ直樹が挿入してきた。
「あ、つっ」
受け入れる準備が少し足りなかったため緋紗は少し痛みを感じ声を出してしまった。
「ごめん」
直樹も声と抵抗を感じて動くのをやめる。
「大丈夫です」
直樹がしばらく止まって背中に口づけをして舌を這わせ始める。
緋紗は我慢できなくなって、「動いて」と、言った。
躊躇いがちに動き始めるが抵抗がなくなってくると直樹は激しさを増してくる。
荒い息遣いが聞こえて緋紗の中で直樹が膨張し達した。
緋紗を後ろからギュッと抱きしめてしばらく経ってから直樹は身体を離し、固まってじっとしている緋紗を抱いてベッドに寝かせ、身体を拭きベッドに腰かけて頬を愛しげに撫でる。
撫でるその手をそっと触って緋紗は目をつぶる。
直樹の手がパジャマに伸びてきた。――ボタン留めてくれるのかな。
しかし直樹の手は緋紗の乳房を優しく撫でまわす。
ベッドに胡坐をかく直樹に緋紗は抱きかかえられて後ろからまた両乳房を愛撫され始めた。
「あ、あの」
少し躊躇って振り返ると直樹は優しいが冷静な目をしている。
「ひさはつまらなかったでしょ?」
そんなことはないと言いかけたがもう直樹は聞かずに身体を弄っていた。
女が感じようが感じまいが男が『イク』とセックスは終わるものだと緋紗は思っていたし、友人となんとなく話をしても緋紗と似たような感想だった。
それで特に不満に思ったこともないし、『イク』ことに執着もしていない。
しかも今のセックスは直樹の達する様子を感じることができ、緋紗にとっては精神的な満足感があった。
ちらっと直樹をみると暗がりでメガネのレンズだけが反射で青く光り、機械的で冷たく感じる。
下腹部をまさぐられ声を漏らしてしまった。
直樹が事務的に、「声」と、注意する。
その声でさらに被虐的な気持ちになり感じてきてしまう。
声を出さまいと我慢しながら感じていると泣きそうになってきた。
指先の回転をあげられ、もう緋紗は達する寸前だった。
短い連続した息を漏らしていると、「もういくの?かわいいね」と、手を止めて直樹は言う。――意地悪をしないでほしい。
哀願するような眼差しを向けると、しょうがないなあという表情で再度微振動を与えられ快感は頂点に達する。
「んんっ、くぅっ」
直樹は腕の中で唇を噛み、小刻みに身体を震わせている緋紗を抱きしめて、今度こそボタンを留めた。
髪をタオルでこすりながら脱衣所を出るとグリーンのパジャマ姿の直樹が水を飲みながら丸太の椅子に座っていた。
「よく温まった?」
ペットボトルの水を渡してくれる。
「あ、すみません」
「ロビーに行ってみる?暖炉がついているよ」
「はい」
柔らかいソファーに二人で腰かけ暖炉のゆるゆると燃える火を眺める。
「窯の初日みたい」
緋紗は嬉しそうに火をみつめた。
「窯焚きってすごい火なの?」
「火がすごいっていう感じじゃないですね。もちろん、いっぱい薪をくべたときは中でゴーゴー燃えますけど。どっちかっていうと千二百度超えてくるときの熱と光がすごいかな。もうまぶしくて目に残像が残るくらいですよ」
「へー。千二百度か。一回見てみたいな」
「窯を焚くと興奮しますよ」
――見せてあげたい。
緋紗はそうだ、と思い出したように直樹に質問した。
「直樹さんはピアノが趣味とかなんですか?」
「ん?ああ。そういうわけじゃないよ。前に兄貴の話したと思うけど」
「遊び人のお兄さん?」
「そそ。兄がなんでもやりたがる人なんだよ。しかも飽きっぽい」
思い出してあきれたような顔つきをしながら直樹は続けた。
「ピアノはもともと兄貴が始めてね、なかなか熱心だったから両親もこれならとピアノを買ってやったんだ。僕が四歳で兄貴が六歳のころかな。買ったら今度全然弾かなくなってね。ピアノがもったいないからって僕にまわってきた訳さ。ほかにも色々おさがりがよく来たよ」
やれやれと言ったふうだ。
「ああ、それで。和夫さんが直樹さんはなんでもできるって言ってました」
直樹は笑って、「好きなことをやってきて出来るってことじゃないんだけどね。じゃそろそろ部屋に戻ろうか」と、立ち上がった。
部屋に帰って緋紗がベッドに座ると直樹も隣に腰かけた。
緋紗の背中に緊張感が走る。
「一緒に寝る?」
聞かれて緋紗は小さくうなずいた。
「でも小さいね。ちょっと立って」
直樹はシングルベッドを軽く動かしてくっつけた。
「軽いと便利だね」
ついでに立っている緋紗も抱き上げてベッドに乗せる。
そしてサイドテーブルのランプをつけて部屋の照明を落とし緋紗の眼鏡をはずす。
「会いたかったよ」
「私もです」
やっと落ち着いて二人きりになれたと思って緋紗は落ち着きを取り戻してきていた。
直樹が口づけをするので目を閉じた。
唇の感触を楽しんでうっとりしていると直樹が緋紗をベッドに倒してパジャマのボタンを外し始める。――パジャマの生地が似てる……。
されるがままになっていると突然『ガタッ』と隣の部屋から音がし、更にボソボソと話し声がなんとなく聞こえる。
気になり始めると緋紗は集中力を失い始めてしまった。
直樹の愛撫に集中できない。
抱かれたくてここにいるのに、今からの行為が隣に筒抜けになるのではないかと思うとテンションが下がってしまう。
緋紗の様子に直樹は、「隣が気になる?」と、聞いた。
「少し」
「じゃこっちおいで」
直樹は手を引っ張ってベッドから下ろし立たせた。
立ち上がって向き合う形でキスをする直樹に少し疑問を感じながら応じていると、壁のほうに促され後ろ向きにされた。――え?
緋紗の両手をつかんで壁につかせる。
「あ、あの」
うろたえてる緋紗に後ろから耳元へ囁かれる。
「抱かせて」
――ああ。
こんなふう言われて拒めるだろうか。
後ろから乳房を揉みしだかれ緋紗は目を閉じて声を出さないように我慢していると、パジャマのズボンが下に降ろされ直樹が挿入してきた。
「あ、つっ」
受け入れる準備が少し足りなかったため緋紗は少し痛みを感じ声を出してしまった。
「ごめん」
直樹も声と抵抗を感じて動くのをやめる。
「大丈夫です」
直樹がしばらく止まって背中に口づけをして舌を這わせ始める。
緋紗は我慢できなくなって、「動いて」と、言った。
躊躇いがちに動き始めるが抵抗がなくなってくると直樹は激しさを増してくる。
荒い息遣いが聞こえて緋紗の中で直樹が膨張し達した。
緋紗を後ろからギュッと抱きしめてしばらく経ってから直樹は身体を離し、固まってじっとしている緋紗を抱いてベッドに寝かせ、身体を拭きベッドに腰かけて頬を愛しげに撫でる。
撫でるその手をそっと触って緋紗は目をつぶる。
直樹の手がパジャマに伸びてきた。――ボタン留めてくれるのかな。
しかし直樹の手は緋紗の乳房を優しく撫でまわす。
ベッドに胡坐をかく直樹に緋紗は抱きかかえられて後ろからまた両乳房を愛撫され始めた。
「あ、あの」
少し躊躇って振り返ると直樹は優しいが冷静な目をしている。
「ひさはつまらなかったでしょ?」
そんなことはないと言いかけたがもう直樹は聞かずに身体を弄っていた。
女が感じようが感じまいが男が『イク』とセックスは終わるものだと緋紗は思っていたし、友人となんとなく話をしても緋紗と似たような感想だった。
それで特に不満に思ったこともないし、『イク』ことに執着もしていない。
しかも今のセックスは直樹の達する様子を感じることができ、緋紗にとっては精神的な満足感があった。
ちらっと直樹をみると暗がりでメガネのレンズだけが反射で青く光り、機械的で冷たく感じる。
下腹部をまさぐられ声を漏らしてしまった。
直樹が事務的に、「声」と、注意する。
その声でさらに被虐的な気持ちになり感じてきてしまう。
声を出さまいと我慢しながら感じていると泣きそうになってきた。
指先の回転をあげられ、もう緋紗は達する寸前だった。
短い連続した息を漏らしていると、「もういくの?かわいいね」と、手を止めて直樹は言う。――意地悪をしないでほしい。
哀願するような眼差しを向けると、しょうがないなあという表情で再度微振動を与えられ快感は頂点に達する。
「んんっ、くぅっ」
直樹は腕の中で唇を噛み、小刻みに身体を震わせている緋紗を抱きしめて、今度こそボタンを留めた。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる