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イエローシャドウ 井上黄雅(いのうえ こうが)編
8 黄雅の気持ち
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太極拳を習い始めて充実感を得た菜々子は、婚活相手とは別れたがすっきりした毎日を送っていた。リラックスを覚え、会社でも必要以上に完璧であろうとすることが無くなる。いつの間にか肩こりや片頭痛もなくなり、これからが人生の本番かもと軽い足取りで商店街を歩いた。鼻歌を歌いながら黄雅の店『レモントイズ』の前を通りがかる。
ちょうど店からふわっと可愛らしい女性が出てきて、手を振り去って行った。黄雅が優しい笑顔で見送るが店に戻るときの表情は暗く感じた。菜々子は何げなく店内に入る。
「こんにちは」
「あ、菜々子さん。今帰り?」
「そうよ。今出てってた人って婚活の?」
「あ、うん。近くに来たからって顔見に来てくれたんだ」
「へえー。結構うまくいってるのね」
「か、な」
「何よ。暗いじゃない」
「そんなことないよ。菜々子さんはどう? 上手くいってる」
「あら、言ってなかったかな。とっくに終わったわよ」
「え? そうなの? なんでまた」
「タイプじゃなかったのよ。嫌いな男と結婚するくらいなら一生独身でいいしね」
「そっかあ」
「ほんとになんか暗いわね。そうだ、ご飯にでも行く? 今日は暇よ?」
「そうだなあ」
「あ、彼女に悪いかしら……」
黄雅は首を振り「いや、同級生と食事したって後ろめたいことはないから」と自分に言い聞かせるように頷いた。
「まあ、そうねえ」
「待ってて店閉めるから」
「急がないわよー」
こうして菜々子と黄雅は夕食を共にすることにした。
「さて、何食べる?」
「そうねえ。これって言うものもないけど、どっちかって言うと和食かな?」
「じゃ、そこの角の和風居酒屋にでも行こうか」
「いいわよー」
かっちりとしたスーツの菜々子と、トレーナーの黄雅は並んでカウンター席に座る。刺身や串揚げなどと冷酒を注文し、二人で杯を傾けた。
「なかなか美味しいわね」
「うん。ここは理沙ちゃんが気に入ってるよ」
「へえ。案外和風好みなのね。体力使ってるから肉好きかと思ってた」
「だねー」
修行で山ごもりをすると海の物を食べられない。それで海産物のメニューが多い、この店を好んでいることを二人は知らない。
「仕事の調子はどう? 今の菜々子さんはなんかすっきりしてるね」
「そうねえ。黄雅くんに『もみの木接骨院』を勧めてもらったおかげで調子いいわよ」
「太極拳もやってるんだってね」
「うん。楽しいものね、太極拳って」
「俺も好きだよ。身体が整うからさ」
「そうそう、黄雅くんたちみんなやってたんですってねえ」
「小学生の頃だけ、おじいさんに習ってて、あとは緑丸と組手してたぐらいかな」
緑丸はもちろん幼いころから朱雀に武術を仕込まれている。昔からヒーローに憧れていて仲間どうして戦うが、やはり本格的な緑丸には敵わず、みんなで朱雀に入門したのだった。その時点で自分たちの母親の方が、より太極拳を極めているとは知らなかった。
「そう言えばさあ。留学した後って何してたの? そのまま企業にお勤め?」
「いや、俺たちみんな研究員だったんだ」
「そうなの? てっきり商社マンになってるとばっかり」
「フフッ」
実験と研究に明け暮れていた日々を懐かしく思う。研究所の爆発が起こるまで黄雅はのんびり毎日を送っていた。
「今の生活とか仕事で満足なの?」
「そうだね。化学者だったと自分で思ったことはなかったんだ。でも今、俺はおもちゃ屋だなーって思う」
「ふーん」
「研究も好きだったよ。でもあれはなんかみんなと一緒に居て流れでそうなった感じがするなあ」
「黄雅くんらしいというか、なんていうか……。で、今はみんなそれぞれ独立してるってわけか」
「そうだね。そういう意味では群れてないね」
「なるほどー。で、そろそろみんな結婚というわけね。そこはやっぱり仲良しね。揃っていそう」
「ん……。そうだね。揃うのかな……」
「どうしたのよー。ほら、なんか、暗いわね。飲みなさいよ」
「え、あ、ありがと」
女性からこのように酒を注がれるのは初めてだと、黄雅は丁重に杯を差し出した。
「なんかやっぱり多少雰囲気変わったね」
「へ? なによ。おやじくさいって言いたいんでしょう」
「そ、そんなことは――」
「ふうぃー」
気が付くと菜々子は手酌で飲んでいて、冷酒の瓶が3本空になっていた。
「け、結構飲むんだね」
「ん~? まあね。女だからって出世しようと思ったら飲みにケーションも重要になるのよ」
「そろそろ出ようか」
「えー? もう? 明日休みじゃないのよ」
「ちょっと場所でも変えようよ」
会計を済ませ、目が座ってきている菜々子をしぶしぶ立たせ外に出た。夜の街に変わった商店街はギラギラと人工的な色を放つ。
これ以上飲ませてはいけないと、菜々子の自宅の方へ送ることにし、公園を通りがかった。
「ふぅ。ちょっと休憩。風がひんやりして気持ちいいいわ」
「ん、そうだね。涼むか」
菜々子は足を開き、両手をベンチの背に広げて掛けている。
「あ、脚閉じて。下着見えちゃうよ……」
「あははっ。こんなおばさんのパンツ見たいっていう奴がいたら見せてやるわよっ」
「う、そうとう酔ってるのかな……」
このような酔っぱらった女性の姿を外国では見たことがなかった。もちろん日本に帰ってきてから、桃香を始め酒を飲む機会があったがこういう風ではなかった。
しかし不快感はなく新鮮だった。いつもきちんとしている菜々子のプライベートを見た気がして、黄雅はより親近感がわく。酔いを醒まし歩けるようになるまでしばらく待っていると、遠目に茂みが揺れ一組の男女が出てきた。
「ん? あれー?」
「あ……」
「あか、むっ、ぐくうっ」
急いで黄雅は菜々子の口をふさぎ、人差し指を立て「しーっ!」と声を出さないようにと指示した。
出てきた男女は赤斗と茉莉だった。背が高くスタイルの良いカップルは遠目でもすぐわかる。きっとお楽しみを終えて出てきたのだろう。2人が小さくなると黄雅はほっとして菜々子の口を解放した。
「もうっ! いきなり何よ!」
「ごめんごめん。二人の邪魔にならないようにって……」
「邪魔あ? いいじゃないデートの時にちょっと声かけるくらい」
「いや、そりゃただのデートだったらいいんだけどさ」
「なによお?」
「ここの公園ってさ、あの、青姦のメッカなんだよね」
「アオカン? なにそれ? おかあさんのメッカ?」
「いや、オカンじゃなくて――青空の下で行う姦淫の事だよ。いま夜だけど」
「ええっ!? 外でっ!? 赤斗くんと茉莉ちゃんがっ!?」
「菜々子さん、声、大きいよ。ほかにもカップルいるからさ」
「え、あ、わ、わかった。赤斗くんがそんな行為が好きなんて……」
「あの、赤斗の場合、スリルとか求めてるとかじゃないから。単純に自然派なんだと思う」
「自然派……。体育委員で運動場が大好きな赤斗くんが、まさか大人になっても外が好きだなんてね。ふうっ」
どうやら菜々子の酔いがいきなり冷めたようで、黄雅は少し安心した。
「理沙ちゃんも、緑丸くんに何だかえっちな格好させられてるようだし。桃香ちゃんも黒彦くんに変な薬飲まされてるんじゃないのかしらね」
「ははっ。まあみんなそういうとこもそれぞれ個性的だからね」
「まあね。ノーマルって何かわかんないし、秘め事なんてお互い納得してりゃいいいわね」
「だね。みんなベストパートナーを見つけられてて羨ましいよ」
「ん? 黄雅くん、ほんとどうしたの? 今の彼女とうまくいってないの?」
「――わからない。穏やかに付き合ってるし彼女は俺の――こと好きだって言ってくれるし」
もやもやするような話しぶりに菜々子はいらつきを覚える。酔いもすっかりさめてしまった。
「話してみなさいよ。あなたの気持ちとか思うこととか、何かあるでしょ」
「うーん……」
黄雅は萌香が自分の顔が好きで選んだということを話した。
「えー、婚活で顔を選ぶんだー。まあそりゃ大事だけどね。経済力とか性格とかは気にならないの?」
「そうだねえ」
萌香の実家は親族経営の企業のようで、経済的に困ることはないらしい。会社の付き合いで社交が多いため、収入よりも見せびらかすための夫、また子供が欲しいということなのだ。
「なるほど、一理ある気がするわね」
「ただ俺の顔以外に興味がないみたいで何も関心を持ってくれないんだよね。それがちょっと寂しいかな」
「そりゃ寂しいわねえ。これから結婚しようかと思う相手なら、色々知りたいことあると思うわよねえ」
「会ってても、これからのスケジュールの話と彼女の親族の役職の話ばかりでね」
「うっ……。仕事みたいね」
「うん……」
「そんな結婚やめときなさいよ」
「……」
「恋愛じゃなくてもさあ、もっとお互いに関心をもって思いやりが発揮できないと不幸になるわよ?」
「かな……」
「まあどうせ黄雅くんが我慢するんだろうけど」
「……」
「しかし黄雅くんが断るって、出来そうにないわねえ」
「そうだね。自分から断るってことしたことなかったな」
「はー、やれやれ。そろそろ私は生き方を変えようと思ってんのよ。黄雅くんも頑張りなよ」
「もう大人なんだもんな」
「そうよ? もう王子様じゃないのよ? 私だってもう委員長じゃないのよ!」
「はははっ。ありがと。じゃ送っていくよ」
菜々子を送り届け、黄雅は萌香との別れを決意する。しかし心優しく誰かを傷つける行為はしたくなかった。そこで黒彦に協力を頼むことにした。
ちょうど店からふわっと可愛らしい女性が出てきて、手を振り去って行った。黄雅が優しい笑顔で見送るが店に戻るときの表情は暗く感じた。菜々子は何げなく店内に入る。
「こんにちは」
「あ、菜々子さん。今帰り?」
「そうよ。今出てってた人って婚活の?」
「あ、うん。近くに来たからって顔見に来てくれたんだ」
「へえー。結構うまくいってるのね」
「か、な」
「何よ。暗いじゃない」
「そんなことないよ。菜々子さんはどう? 上手くいってる」
「あら、言ってなかったかな。とっくに終わったわよ」
「え? そうなの? なんでまた」
「タイプじゃなかったのよ。嫌いな男と結婚するくらいなら一生独身でいいしね」
「そっかあ」
「ほんとになんか暗いわね。そうだ、ご飯にでも行く? 今日は暇よ?」
「そうだなあ」
「あ、彼女に悪いかしら……」
黄雅は首を振り「いや、同級生と食事したって後ろめたいことはないから」と自分に言い聞かせるように頷いた。
「まあ、そうねえ」
「待ってて店閉めるから」
「急がないわよー」
こうして菜々子と黄雅は夕食を共にすることにした。
「さて、何食べる?」
「そうねえ。これって言うものもないけど、どっちかって言うと和食かな?」
「じゃ、そこの角の和風居酒屋にでも行こうか」
「いいわよー」
かっちりとしたスーツの菜々子と、トレーナーの黄雅は並んでカウンター席に座る。刺身や串揚げなどと冷酒を注文し、二人で杯を傾けた。
「なかなか美味しいわね」
「うん。ここは理沙ちゃんが気に入ってるよ」
「へえ。案外和風好みなのね。体力使ってるから肉好きかと思ってた」
「だねー」
修行で山ごもりをすると海の物を食べられない。それで海産物のメニューが多い、この店を好んでいることを二人は知らない。
「仕事の調子はどう? 今の菜々子さんはなんかすっきりしてるね」
「そうねえ。黄雅くんに『もみの木接骨院』を勧めてもらったおかげで調子いいわよ」
「太極拳もやってるんだってね」
「うん。楽しいものね、太極拳って」
「俺も好きだよ。身体が整うからさ」
「そうそう、黄雅くんたちみんなやってたんですってねえ」
「小学生の頃だけ、おじいさんに習ってて、あとは緑丸と組手してたぐらいかな」
緑丸はもちろん幼いころから朱雀に武術を仕込まれている。昔からヒーローに憧れていて仲間どうして戦うが、やはり本格的な緑丸には敵わず、みんなで朱雀に入門したのだった。その時点で自分たちの母親の方が、より太極拳を極めているとは知らなかった。
「そう言えばさあ。留学した後って何してたの? そのまま企業にお勤め?」
「いや、俺たちみんな研究員だったんだ」
「そうなの? てっきり商社マンになってるとばっかり」
「フフッ」
実験と研究に明け暮れていた日々を懐かしく思う。研究所の爆発が起こるまで黄雅はのんびり毎日を送っていた。
「今の生活とか仕事で満足なの?」
「そうだね。化学者だったと自分で思ったことはなかったんだ。でも今、俺はおもちゃ屋だなーって思う」
「ふーん」
「研究も好きだったよ。でもあれはなんかみんなと一緒に居て流れでそうなった感じがするなあ」
「黄雅くんらしいというか、なんていうか……。で、今はみんなそれぞれ独立してるってわけか」
「そうだね。そういう意味では群れてないね」
「なるほどー。で、そろそろみんな結婚というわけね。そこはやっぱり仲良しね。揃っていそう」
「ん……。そうだね。揃うのかな……」
「どうしたのよー。ほら、なんか、暗いわね。飲みなさいよ」
「え、あ、ありがと」
女性からこのように酒を注がれるのは初めてだと、黄雅は丁重に杯を差し出した。
「なんかやっぱり多少雰囲気変わったね」
「へ? なによ。おやじくさいって言いたいんでしょう」
「そ、そんなことは――」
「ふうぃー」
気が付くと菜々子は手酌で飲んでいて、冷酒の瓶が3本空になっていた。
「け、結構飲むんだね」
「ん~? まあね。女だからって出世しようと思ったら飲みにケーションも重要になるのよ」
「そろそろ出ようか」
「えー? もう? 明日休みじゃないのよ」
「ちょっと場所でも変えようよ」
会計を済ませ、目が座ってきている菜々子をしぶしぶ立たせ外に出た。夜の街に変わった商店街はギラギラと人工的な色を放つ。
これ以上飲ませてはいけないと、菜々子の自宅の方へ送ることにし、公園を通りがかった。
「ふぅ。ちょっと休憩。風がひんやりして気持ちいいいわ」
「ん、そうだね。涼むか」
菜々子は足を開き、両手をベンチの背に広げて掛けている。
「あ、脚閉じて。下着見えちゃうよ……」
「あははっ。こんなおばさんのパンツ見たいっていう奴がいたら見せてやるわよっ」
「う、そうとう酔ってるのかな……」
このような酔っぱらった女性の姿を外国では見たことがなかった。もちろん日本に帰ってきてから、桃香を始め酒を飲む機会があったがこういう風ではなかった。
しかし不快感はなく新鮮だった。いつもきちんとしている菜々子のプライベートを見た気がして、黄雅はより親近感がわく。酔いを醒まし歩けるようになるまでしばらく待っていると、遠目に茂みが揺れ一組の男女が出てきた。
「ん? あれー?」
「あ……」
「あか、むっ、ぐくうっ」
急いで黄雅は菜々子の口をふさぎ、人差し指を立て「しーっ!」と声を出さないようにと指示した。
出てきた男女は赤斗と茉莉だった。背が高くスタイルの良いカップルは遠目でもすぐわかる。きっとお楽しみを終えて出てきたのだろう。2人が小さくなると黄雅はほっとして菜々子の口を解放した。
「もうっ! いきなり何よ!」
「ごめんごめん。二人の邪魔にならないようにって……」
「邪魔あ? いいじゃないデートの時にちょっと声かけるくらい」
「いや、そりゃただのデートだったらいいんだけどさ」
「なによお?」
「ここの公園ってさ、あの、青姦のメッカなんだよね」
「アオカン? なにそれ? おかあさんのメッカ?」
「いや、オカンじゃなくて――青空の下で行う姦淫の事だよ。いま夜だけど」
「ええっ!? 外でっ!? 赤斗くんと茉莉ちゃんがっ!?」
「菜々子さん、声、大きいよ。ほかにもカップルいるからさ」
「え、あ、わ、わかった。赤斗くんがそんな行為が好きなんて……」
「あの、赤斗の場合、スリルとか求めてるとかじゃないから。単純に自然派なんだと思う」
「自然派……。体育委員で運動場が大好きな赤斗くんが、まさか大人になっても外が好きだなんてね。ふうっ」
どうやら菜々子の酔いがいきなり冷めたようで、黄雅は少し安心した。
「理沙ちゃんも、緑丸くんに何だかえっちな格好させられてるようだし。桃香ちゃんも黒彦くんに変な薬飲まされてるんじゃないのかしらね」
「ははっ。まあみんなそういうとこもそれぞれ個性的だからね」
「まあね。ノーマルって何かわかんないし、秘め事なんてお互い納得してりゃいいいわね」
「だね。みんなベストパートナーを見つけられてて羨ましいよ」
「ん? 黄雅くん、ほんとどうしたの? 今の彼女とうまくいってないの?」
「――わからない。穏やかに付き合ってるし彼女は俺の――こと好きだって言ってくれるし」
もやもやするような話しぶりに菜々子はいらつきを覚える。酔いもすっかりさめてしまった。
「話してみなさいよ。あなたの気持ちとか思うこととか、何かあるでしょ」
「うーん……」
黄雅は萌香が自分の顔が好きで選んだということを話した。
「えー、婚活で顔を選ぶんだー。まあそりゃ大事だけどね。経済力とか性格とかは気にならないの?」
「そうだねえ」
萌香の実家は親族経営の企業のようで、経済的に困ることはないらしい。会社の付き合いで社交が多いため、収入よりも見せびらかすための夫、また子供が欲しいということなのだ。
「なるほど、一理ある気がするわね」
「ただ俺の顔以外に興味がないみたいで何も関心を持ってくれないんだよね。それがちょっと寂しいかな」
「そりゃ寂しいわねえ。これから結婚しようかと思う相手なら、色々知りたいことあると思うわよねえ」
「会ってても、これからのスケジュールの話と彼女の親族の役職の話ばかりでね」
「うっ……。仕事みたいね」
「うん……」
「そんな結婚やめときなさいよ」
「……」
「恋愛じゃなくてもさあ、もっとお互いに関心をもって思いやりが発揮できないと不幸になるわよ?」
「かな……」
「まあどうせ黄雅くんが我慢するんだろうけど」
「……」
「しかし黄雅くんが断るって、出来そうにないわねえ」
「そうだね。自分から断るってことしたことなかったな」
「はー、やれやれ。そろそろ私は生き方を変えようと思ってんのよ。黄雅くんも頑張りなよ」
「もう大人なんだもんな」
「そうよ? もう王子様じゃないのよ? 私だってもう委員長じゃないのよ!」
「はははっ。ありがと。じゃ送っていくよ」
菜々子を送り届け、黄雅は萌香との別れを決意する。しかし心優しく誰かを傷つける行為はしたくなかった。そこで黒彦に協力を頼むことにした。
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