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グリーンシャドウ 高橋緑丸(たかはし ろくまる)編
11 いつだって挑戦
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海鮮が好きだというので緑丸は和食レストランに連れて行く。カジュアルな創作料理屋なので若い客も多く賑わっているが、やはり他のレストランより静かな雰囲気だ。
仕切りがあるだけだが二人は個室で食事をする。緑丸は和紙に書かれたメニューをさっと理沙に手渡す。
「何が食べたい?」
「刺身かな!」
「じゃ、盛り合わせと、あ、なにか飲む? お酒は? ここの純米酒が美味しいみたいだよ」
「んー。酔拳になるといけないから今日はいいや」
「ははっ、じゃお茶でも頼むね」
「緑丸は飲まないのか?」
「うん。普段からあんまり飲まないかな」
「なるほど。そうやってストイックにしてるから強いんだろうなあ」
「い、いやあ。あんまり飲めない体質なだけなんだと思うよ」
間もなく料理が運ばれ始める。美しい食器に盛られた刺身の盛り合わせと、エビの天ぷらを理沙は嬉しそうに眺める。
「綺麗! 美味しそう!」
「どんどん食べて」
「いただきます!」
緑丸もよく食べるが小柄な理沙もよく食べる。
「気持ちいいくらい食べるね。今、天下一武術会が開催されたらきっと理沙さんが優勝だよ」
「え、い、いやあ。緑丸の方こそ。あんなに太刀打ちできなかったのも初めてだなあ」
戦いを思い出した理沙は思わず箸を握り込み、折りそうになった。
「おっとと、力が入ってしまった」
「ははっ。理沙さんがエキサイトすると俺もなんだか興奮してしまうよ」
笑って言う緑丸に理沙は真顔になる。お茶を一口飲み、口元を拭う。
「あの、緑丸は私にとってとても理想的というか、すごく、あのえっと、好きになった。強くて優しくて、紳士で。緑丸も私の事を試して欲しい。気に入ってくれたらよろしく頼む」
「うん。そのつもり。このあとどこに行こうかな」
「勿論、私もいい歳なので承知している。この服装はそのつもりがあるからそうしてきた」
「ん。よく、似合ってる。カンフー服もいいけど。書店で見たときドキッとしたよ」
「そ、そうか」
桃香は女教師ファッションを黒彦が、純朴な理沙をそそのかしたと思っていた。小柄で童顔な理沙はそれでも、もうよい大人なので、ちゃんと黒彦の言わんとする緑丸の性癖について理解していた。
頬を染めながらも理沙は「じゃ、レジャーホテルに行こう」と小声で言った。
「レジャーホテル?」
「え? わかんないか。えっとラブホテル……」
もっと小声になる。
「ラブホテル? えーっと俺、海外暮らし長くて、しかもそんなに都会じゃなかったし、レジャーについてあまり知らないんだ。どこにあるのかな、そのホテル」
「あー、そうなのかあ……」
ラブホテルというものが緑丸のいた外国にはなかった。また研究者だった緑丸は日本に帰ってきても日常の遊びや情報には通じていない。
「ラブ、えっとレジャーホテルというのは恋人同士が愛し合う目的で、短時間過ごしたり、泊まったりできるホテルなんだ。普通のビジネスホテルとか旅館とかとは違う」
「へえー。んー、モーテルみたいなものかな」
「じゃ、タクシー使っていく方がいいかな。一番近いホテルって言えば気を利かして連れて行ってくれるようだ」
「タクシーの運転手がコンシェルジュのようだね。そんなところまで気配りがあるのは、やっぱりもてなしの国だな」
感心して緑丸は興味深く話を聞いているが、理沙は恥ずかしくて赤面していた。そんな理沙を気遣い緑丸は冷たいデザートを頼んだ。
レジャーホテルの少し前でタクシーは止まり、二人は下りてホテルの外観を見る。
「た、確かに普通のホテルとは違うみたいだ」
「可愛い感じだろう?」
「か、かわいい……」
ホテルのライトアップされた電飾看板に目をやると、sの字の電気が切れており、更にスペルミスがあったようで『NEW HOTEL ERECTION(勃起)』となっている。本当はselection(選択)としたかったのであろう。
緑丸は恥ずかしくして電気が切れていることまで気づかなかった。
部屋を選ぶパネルの前に立つ。
「えーっと、好きな部屋を選べるらしい」
「へー。面白いシステムだね」
始めてくる場所に緑丸は興味を示す。理沙も初めてらしく色々な部屋を眺めている。
「んー? この椅子みたいなのなんだろう」
「これ?」
「あっ!」
タッチパネルだったらしく緑丸が画面を押してしまい、その部屋に行くことになった。
「ごめん……」
「ううん、こちらこそ、すまない。まあ、部屋なんかどうだっていいよ」
二人は案内されるままほの暗いムーディーな廊下を歩き、ランプのついた部屋に入った。
入ってから二人は絶句する。
「こ、ここは……」
「まさか……」
赤と黒の配色で構成され、部屋の中央にはパネルに乗っていた拘束専用の椅子が置かれてあり、壁にはエックスの磔板と手錠が備わっている。2人が選んだ部屋はSM専用の部屋だった。
「や、やめようか」
流石にハードルが高い気がして緑丸は理沙に尋ねる。
「い、いや。部屋は関係ない。むしろ挑み甲斐があるな」
「そ、そう」
普段穏やかな緑丸でも少し衝撃的で動揺する。そして理沙と出会ってから興奮させられっぱなしだと思った。
「あ、あの、私、さきシャワーしてくる」
緊張した理沙もとにかくリラックスしようと風呂場に向かった。
「うん、俺は後にするよ」
「ん」
緑丸はまず中央の拘束椅子を眺める。足を閉じることが出来ないように拘束具が付けられている。拘束具は柔らかい素材でできており、身体を痛めることはなさそうだ。
「うーん、よく考えられているなあ」
感心して椅子を観察していると、理沙が出てきた。
「あ、空いたからどうぞ」
「ありがとう」
交代で緑丸が風呂場に向かったのち、理沙も拘束椅子に興味を持つ。バスタオルを巻き付けたまま、座ってみる。
「へえ。これはなかなか座り心地がいいものだな。しかし、足が、こうかな」
閉じていた足だと少し違和感を感じ、形の添って足を開くとぴったりはまった。
「手はここに置くのか」
腕を上げ手も所定の位置であろう場所に置いてみる。
「うーん。少し腰をあげてっと。うん。拳法の型の練習に使えるかもしれないなあ」
熱心な理沙は鍛錬を怠らなかった。修行に仕えるかもと考えているところに、腰にタオルを巻いた緑丸がやってくる。彼の裸体は逞しく理沙は一目見てドキリとする。緑丸もバスタオルがはだけかけ、椅子に座る理沙を見て興奮してしまった。
言葉に詰まり二人は無言で見つめ合う。理沙が口火を切る。
「あの、この椅子って修行に良さそうだな」
「うん。忍耐力が身につくかもしれない」
理沙は緑丸がこの椅子を使いたがっている事が分かっていた。しかし紳士な彼は使いたいと決して自ら言わないだろう。
「いいよ、使っても……」
「ほ、ほんとに……」
「今まで私が試すようなことばかりしてきたと思う。今度は試される番だ」
「――」
ごくりと息をのむのが分かった。
「じゃあ、拘束するよ……」
「うん……」
「嫌だって言ったらすぐやめるから」
「ありがとう」
緑丸は早い鼓動を押さえながら呼吸をし、理沙の両足と両手首を拘束する。そしてボディバッグの中から手のひら大のケースを取り出した。小さなアタッシュケースのようでパカッ開き中にはカプセルが複数入っていた。
「それは?」
「これは俺たちが開発したポンポンカプセル。大きなものでも小さくして持ち運べるんだ」
「それはすごいな」
緑丸は一つのカプセルのボタンを押す。中身が飛び出したちまち大きな筆になった。毛先はチークブラシのように広がっている。
「筆?」
「これはシルクとアルパカの毛を混紡させた身体に優しく心地よい筆なんだ」
「へえ」
そっと筆を持ち優しく理沙の頬を撫でる。
「どう?」
「すべすべして気持ちいい」
「そう、よかった」
そのまま緑丸は筆を滑らせ理沙の首筋から肩を撫でる。やがてバスタオルで隠されている胸元を少し開き、まるく乳房を撫でまわす。
「ふ、あふっ」
くすぐったい様な不思議な感触が伝わる。まるで書家のような滑らかな動きが理沙の乳首を捉える。
「んんっ」
緑丸はゆっくりバスタオルを剥いでいき、ウエストを筆でくすぐる。
「あ、んっ」
くすぐったいのを理沙は我慢しているようだ。続いて足の指の間を一本一本筆でなぞる。小刻みに理沙の身体が揺れるがまだまだ嫌だとは言わない。
とうとうバスタオルをとってしまい、理沙は一糸まとわぬ姿で椅子に、開脚した状態で座っていることとなった。
「くぅっ!」
羞恥に理沙は顔を赤らめ横を向く。緑丸は遠慮なく太腿から足の付け根に筆を這わせ、淡い茂みを撫でる。
波打つそこを優しく撫でまわすと理沙の息が荒くなってくる。
「やっぱり我慢強いね……」
「ん、んんっ」
また一つカプセルを開けるとゴム手袋が出てきた。緑丸は筆をおきその手袋をはめる。
両手で理沙の乳房をつかみ揉み始める。
「小柄なのにこんなに大きいバストしてるなんて……」
「あうっ、な、なにそれぇ」
ゴム手袋には小さな突起と吸盤が交互についており、吸い付かれる感覚と、さらざらした感覚を同時に味わえる。そっと抓まれ捻られる乳首から甘い疼きが押し寄せる。段々と身体が火照り始め汗ばむと、緑丸はカプセルから飲み物を取り出し、口移しで理沙に飲ませる。
「あむっ、う、ん、あうんっ」
甘い液体は素早く理沙の失われた水分とミネラルを補給し、更に体力も回復する。
吸盤と突起のついたゴム手袋で全体を撫でまわされながら、緑丸と口づけを交わしていると、理沙の思考がぼんやりし始める。
甘い声を出し始める彼女に、緑丸はまた次のカプセルを空ける。
「この間の――。改良したんだ」
「は、はあっ、か、改良?」
タコの足ほどのゼリー状の触手が一本取り出された。その触手はブルブルと小刻みに振動している。緑丸はぐっと触手を握り、親指ほど引きちぎる。小さな楕円状の触手はまだ小刻みに震えている。それを理沙の両乳首にくっつける。
「ぁうんっ」
乳首の上でブルブルと震えている。続いて同じくらいの千切った触手ゼリーを理沙の淡い茂みをかき分け、花芽に乗せる。
「んあっ!」
「どう? まだ耐えられる?」
「あ、んっ、あぁっ、んっ、まだ、へ、へい、き」
身体をビクビクさせながら理沙はまだ耐えるという。その忍耐力に緑丸は感心し、また簡単にアイテムに屈しない姿にますますエキサイトする。
「なんて素敵なんだろう。俺のほうが我慢できない」
「あ、あんっ、が、我慢、しないでぇっ」
緑丸はタオルを取り立派な起立を理沙の秘部にあてがう。
「ぐっ!」
「え……」
十分潤って濡れて光るそこが緑丸の進入を強く阻む。
「まさか、初めて?」
「あ、んっ、うん、した、こと、ないっ」
理沙は自分より強い男に出会ったことがなかったので、恋愛関係に到ったことはなかった。キュートな容姿に惹かれ愛を囁く者もいたが理沙より弱く、身を任すことはなかった。また小柄な体を力で何とか出来るだろうと勘違いした男はもちろん鉄拳で制裁してきた。
紳士である緑丸は思わず腰をひく。
「な、んで? やめるのか?」
「ごめん。苦痛を感じさせたいわけじゃないんだ。これ以上はもう――」
「そ、んな。せっかく、あんっ、結ばれるって、あ、ああっ、もう、ダメっ!」
三点攻めの触手ゼリーの振動で理沙は絶頂を得、身体を震わせた。触手ゼリーは役目を終えたかのように跡形もなく消える。片付けがいらず、環境にも優しいアダルトグッズなのだ。
「あ、は、はぁ、はぁ」
拘束具を外し、ぐったりした理沙を緑丸は抱きしめてからベッドに運んだ。
「イクとこ、すごく可愛かった」
「私も緑丸が気持ちよくなるとこ、見たい。抱かないのか?」
「ん――」
「初めてはみんな痛いって聞いてる。私は武術家だ。痛みなんか恐れない」
「しかし――」
心優しい緑丸は小さな理沙が痛がる様子を見ることが耐えられなかった。
「じゃ、今度は緑丸があの椅子に座ってくれ」
「え? 俺が?」
「この道具を使って気持ちよくさせてやりたい」
「ええ? 道具――使うの?」
「だめなのか?」
「い、いや」
まさか自分に使われるという発想がなかったので動揺したが、また同時に興奮もしてしまい緑丸は椅子に座って拘束された。
理沙は拘束した後、ベッドサイドにあったオプションのアイマスクをそっと緑丸に付ける。
「え?」
「見えない方が興奮するだろう」
振動する触手ゼリーが緑丸の乳首に乗せられ、起立した先を筆で撫でられる。
「ううっ!」
唇に理沙の小さな唇を感じたので、貪る様に吸い付き、舌を絡め合った。ゴム手袋が太腿を這いまわり、やがてそっと起立が握られ圧迫され始める。
「あ、き、気持ち、いい、よ」
「よかった」
理沙は緑丸の上にまたがりそっと腰を落とす。
「くぅっ!」
「な、なにしてるの!? だ、だめだ! 無理しないで!」
「う、うぅっ、んっ、くっ」
動けない緑丸は自分の起立が、温かく柔らかいが強い圧力を感じる。
「あ、ああっ、り、さっ」
「あ、は、はっ、はっ、こ、これでちゃんと繋がれた」
自分で挿入しつくした理沙は一息つき、逞しい緑丸の胸の中で深呼吸する。呼吸と痛みが落ち着いてから緑丸のアイマスクを取った。
「理沙さん……。なんて無茶するんだ」
「平気、って言ったじゃないか。確かに痛みはあるが、喜びの方が大きい」
頬を紅潮させ潤んだ瞳を見せる理沙に、緑丸は興奮してしまう。
「うぁっ、な、中、おっきっ、い」
「あ、ご、ごめっ」
興奮のせいで起立が強く硬くなってしまった。
「今日は、もうここまでにしようよ」
「いやだ。緑丸のイクところも見たい」
「いや、動くとまた痛みが増すだろうから、日を改めよう」
「も、もう痛くない」
本当はまだ痛かったが理沙は緑丸にも感じてほしかった。そこで一計を案じ触手ゼリーを千切り、自分の身体に張り付けた。
「な、なにを」
理沙の身体がブルブル振動する。
「うっ、こ、これは」
「どうだ? これなら動かなくても、気持ちがいいんじゃないだろうか。ここにもう一度――」
一瞬ためらいを見せたが、理沙は思い切って自分の花芽にもう一度触手ゼリーを乗せる。
「ふぁっっ!」
「ううぅっ」
振動が二人の繋がっているところを刺激する。理沙はまた耐えられない快感が押し寄せてくるのを感じ、その波に乗じてゆっくり身体を上下させる。
「うっ、り、さ、だ、ダメっ、くっ」
「くっ、うっ、き、もち、よくなって、きた」
長く深いゆっくりとした理沙の動きと振動によって緑丸も絶頂を感じる。
「うぁっ、う、い、きそうだ」
「あんっ、あ、わたし、も、また、イっちゃ、うっ」
「うううっ!」
理沙の中でまた緑丸が大きく硬くなり爆ぜた。
「ああっ、なんて、緑丸、かっこ、いい」
これまでにない苦悩するかのような表情はとても魅力的だった。
荒い息をしながら緑丸は「手の拘束とってもらっていいかな」と理沙に頼んだ。理沙はゆるゆると身体を起こし拘束を取りまた緑丸の胸の中で安らぐ。
その小さな身体を緑丸は宝物のように優しくふわっと包み込んだ。
****************
2人は結ばれた後も鍛錬を怠らず技を磨き合った。こんなに人生を刺激的にしてくれる女性はいないと緑丸はますます理沙に惹かれ続けた。
「やあ、黒彦。何か面白そうなアイテムないかな」
「ん? アダルトショップに行ったらどうだ」
「もう二人で行ったんだけど、なかなかなくてさ」
「ふーん。理沙はお前と気が合うな」
「ああ。彼女もなかなかのアイテムマスターだよ!」
延々と理沙の自慢をのろけて話す緑丸を、桃香はそっと眺める。
「なんか、緑丸さん、キャラ変わったかなあ」
相変わらず優しい木陰のような雰囲気だが、ここのところもっと逞しく感じる。
「そう言えば理沙さんはもっと変わったなあ」
理沙は武術の稽古以外の時は、ブラウスとタイトスカート姿でハイヒールを履くようになった。
「まあでも良く似合ってるからいいね!」
二人が幸せそうで桃香もとても嬉しかった。
黒彦は緑丸から触手ゼリーの上手な使い方を教わり、桃香に試そうと秘かに用意することにした。
緑丸編終わり
仕切りがあるだけだが二人は個室で食事をする。緑丸は和紙に書かれたメニューをさっと理沙に手渡す。
「何が食べたい?」
「刺身かな!」
「じゃ、盛り合わせと、あ、なにか飲む? お酒は? ここの純米酒が美味しいみたいだよ」
「んー。酔拳になるといけないから今日はいいや」
「ははっ、じゃお茶でも頼むね」
「緑丸は飲まないのか?」
「うん。普段からあんまり飲まないかな」
「なるほど。そうやってストイックにしてるから強いんだろうなあ」
「い、いやあ。あんまり飲めない体質なだけなんだと思うよ」
間もなく料理が運ばれ始める。美しい食器に盛られた刺身の盛り合わせと、エビの天ぷらを理沙は嬉しそうに眺める。
「綺麗! 美味しそう!」
「どんどん食べて」
「いただきます!」
緑丸もよく食べるが小柄な理沙もよく食べる。
「気持ちいいくらい食べるね。今、天下一武術会が開催されたらきっと理沙さんが優勝だよ」
「え、い、いやあ。緑丸の方こそ。あんなに太刀打ちできなかったのも初めてだなあ」
戦いを思い出した理沙は思わず箸を握り込み、折りそうになった。
「おっとと、力が入ってしまった」
「ははっ。理沙さんがエキサイトすると俺もなんだか興奮してしまうよ」
笑って言う緑丸に理沙は真顔になる。お茶を一口飲み、口元を拭う。
「あの、緑丸は私にとってとても理想的というか、すごく、あのえっと、好きになった。強くて優しくて、紳士で。緑丸も私の事を試して欲しい。気に入ってくれたらよろしく頼む」
「うん。そのつもり。このあとどこに行こうかな」
「勿論、私もいい歳なので承知している。この服装はそのつもりがあるからそうしてきた」
「ん。よく、似合ってる。カンフー服もいいけど。書店で見たときドキッとしたよ」
「そ、そうか」
桃香は女教師ファッションを黒彦が、純朴な理沙をそそのかしたと思っていた。小柄で童顔な理沙はそれでも、もうよい大人なので、ちゃんと黒彦の言わんとする緑丸の性癖について理解していた。
頬を染めながらも理沙は「じゃ、レジャーホテルに行こう」と小声で言った。
「レジャーホテル?」
「え? わかんないか。えっとラブホテル……」
もっと小声になる。
「ラブホテル? えーっと俺、海外暮らし長くて、しかもそんなに都会じゃなかったし、レジャーについてあまり知らないんだ。どこにあるのかな、そのホテル」
「あー、そうなのかあ……」
ラブホテルというものが緑丸のいた外国にはなかった。また研究者だった緑丸は日本に帰ってきても日常の遊びや情報には通じていない。
「ラブ、えっとレジャーホテルというのは恋人同士が愛し合う目的で、短時間過ごしたり、泊まったりできるホテルなんだ。普通のビジネスホテルとか旅館とかとは違う」
「へえー。んー、モーテルみたいなものかな」
「じゃ、タクシー使っていく方がいいかな。一番近いホテルって言えば気を利かして連れて行ってくれるようだ」
「タクシーの運転手がコンシェルジュのようだね。そんなところまで気配りがあるのは、やっぱりもてなしの国だな」
感心して緑丸は興味深く話を聞いているが、理沙は恥ずかしくて赤面していた。そんな理沙を気遣い緑丸は冷たいデザートを頼んだ。
レジャーホテルの少し前でタクシーは止まり、二人は下りてホテルの外観を見る。
「た、確かに普通のホテルとは違うみたいだ」
「可愛い感じだろう?」
「か、かわいい……」
ホテルのライトアップされた電飾看板に目をやると、sの字の電気が切れており、更にスペルミスがあったようで『NEW HOTEL ERECTION(勃起)』となっている。本当はselection(選択)としたかったのであろう。
緑丸は恥ずかしくして電気が切れていることまで気づかなかった。
部屋を選ぶパネルの前に立つ。
「えーっと、好きな部屋を選べるらしい」
「へー。面白いシステムだね」
始めてくる場所に緑丸は興味を示す。理沙も初めてらしく色々な部屋を眺めている。
「んー? この椅子みたいなのなんだろう」
「これ?」
「あっ!」
タッチパネルだったらしく緑丸が画面を押してしまい、その部屋に行くことになった。
「ごめん……」
「ううん、こちらこそ、すまない。まあ、部屋なんかどうだっていいよ」
二人は案内されるままほの暗いムーディーな廊下を歩き、ランプのついた部屋に入った。
入ってから二人は絶句する。
「こ、ここは……」
「まさか……」
赤と黒の配色で構成され、部屋の中央にはパネルに乗っていた拘束専用の椅子が置かれてあり、壁にはエックスの磔板と手錠が備わっている。2人が選んだ部屋はSM専用の部屋だった。
「や、やめようか」
流石にハードルが高い気がして緑丸は理沙に尋ねる。
「い、いや。部屋は関係ない。むしろ挑み甲斐があるな」
「そ、そう」
普段穏やかな緑丸でも少し衝撃的で動揺する。そして理沙と出会ってから興奮させられっぱなしだと思った。
「あ、あの、私、さきシャワーしてくる」
緊張した理沙もとにかくリラックスしようと風呂場に向かった。
「うん、俺は後にするよ」
「ん」
緑丸はまず中央の拘束椅子を眺める。足を閉じることが出来ないように拘束具が付けられている。拘束具は柔らかい素材でできており、身体を痛めることはなさそうだ。
「うーん、よく考えられているなあ」
感心して椅子を観察していると、理沙が出てきた。
「あ、空いたからどうぞ」
「ありがとう」
交代で緑丸が風呂場に向かったのち、理沙も拘束椅子に興味を持つ。バスタオルを巻き付けたまま、座ってみる。
「へえ。これはなかなか座り心地がいいものだな。しかし、足が、こうかな」
閉じていた足だと少し違和感を感じ、形の添って足を開くとぴったりはまった。
「手はここに置くのか」
腕を上げ手も所定の位置であろう場所に置いてみる。
「うーん。少し腰をあげてっと。うん。拳法の型の練習に使えるかもしれないなあ」
熱心な理沙は鍛錬を怠らなかった。修行に仕えるかもと考えているところに、腰にタオルを巻いた緑丸がやってくる。彼の裸体は逞しく理沙は一目見てドキリとする。緑丸もバスタオルがはだけかけ、椅子に座る理沙を見て興奮してしまった。
言葉に詰まり二人は無言で見つめ合う。理沙が口火を切る。
「あの、この椅子って修行に良さそうだな」
「うん。忍耐力が身につくかもしれない」
理沙は緑丸がこの椅子を使いたがっている事が分かっていた。しかし紳士な彼は使いたいと決して自ら言わないだろう。
「いいよ、使っても……」
「ほ、ほんとに……」
「今まで私が試すようなことばかりしてきたと思う。今度は試される番だ」
「――」
ごくりと息をのむのが分かった。
「じゃあ、拘束するよ……」
「うん……」
「嫌だって言ったらすぐやめるから」
「ありがとう」
緑丸は早い鼓動を押さえながら呼吸をし、理沙の両足と両手首を拘束する。そしてボディバッグの中から手のひら大のケースを取り出した。小さなアタッシュケースのようでパカッ開き中にはカプセルが複数入っていた。
「それは?」
「これは俺たちが開発したポンポンカプセル。大きなものでも小さくして持ち運べるんだ」
「それはすごいな」
緑丸は一つのカプセルのボタンを押す。中身が飛び出したちまち大きな筆になった。毛先はチークブラシのように広がっている。
「筆?」
「これはシルクとアルパカの毛を混紡させた身体に優しく心地よい筆なんだ」
「へえ」
そっと筆を持ち優しく理沙の頬を撫でる。
「どう?」
「すべすべして気持ちいい」
「そう、よかった」
そのまま緑丸は筆を滑らせ理沙の首筋から肩を撫でる。やがてバスタオルで隠されている胸元を少し開き、まるく乳房を撫でまわす。
「ふ、あふっ」
くすぐったい様な不思議な感触が伝わる。まるで書家のような滑らかな動きが理沙の乳首を捉える。
「んんっ」
緑丸はゆっくりバスタオルを剥いでいき、ウエストを筆でくすぐる。
「あ、んっ」
くすぐったいのを理沙は我慢しているようだ。続いて足の指の間を一本一本筆でなぞる。小刻みに理沙の身体が揺れるがまだまだ嫌だとは言わない。
とうとうバスタオルをとってしまい、理沙は一糸まとわぬ姿で椅子に、開脚した状態で座っていることとなった。
「くぅっ!」
羞恥に理沙は顔を赤らめ横を向く。緑丸は遠慮なく太腿から足の付け根に筆を這わせ、淡い茂みを撫でる。
波打つそこを優しく撫でまわすと理沙の息が荒くなってくる。
「やっぱり我慢強いね……」
「ん、んんっ」
また一つカプセルを開けるとゴム手袋が出てきた。緑丸は筆をおきその手袋をはめる。
両手で理沙の乳房をつかみ揉み始める。
「小柄なのにこんなに大きいバストしてるなんて……」
「あうっ、な、なにそれぇ」
ゴム手袋には小さな突起と吸盤が交互についており、吸い付かれる感覚と、さらざらした感覚を同時に味わえる。そっと抓まれ捻られる乳首から甘い疼きが押し寄せる。段々と身体が火照り始め汗ばむと、緑丸はカプセルから飲み物を取り出し、口移しで理沙に飲ませる。
「あむっ、う、ん、あうんっ」
甘い液体は素早く理沙の失われた水分とミネラルを補給し、更に体力も回復する。
吸盤と突起のついたゴム手袋で全体を撫でまわされながら、緑丸と口づけを交わしていると、理沙の思考がぼんやりし始める。
甘い声を出し始める彼女に、緑丸はまた次のカプセルを空ける。
「この間の――。改良したんだ」
「は、はあっ、か、改良?」
タコの足ほどのゼリー状の触手が一本取り出された。その触手はブルブルと小刻みに振動している。緑丸はぐっと触手を握り、親指ほど引きちぎる。小さな楕円状の触手はまだ小刻みに震えている。それを理沙の両乳首にくっつける。
「ぁうんっ」
乳首の上でブルブルと震えている。続いて同じくらいの千切った触手ゼリーを理沙の淡い茂みをかき分け、花芽に乗せる。
「んあっ!」
「どう? まだ耐えられる?」
「あ、んっ、あぁっ、んっ、まだ、へ、へい、き」
身体をビクビクさせながら理沙はまだ耐えるという。その忍耐力に緑丸は感心し、また簡単にアイテムに屈しない姿にますますエキサイトする。
「なんて素敵なんだろう。俺のほうが我慢できない」
「あ、あんっ、が、我慢、しないでぇっ」
緑丸はタオルを取り立派な起立を理沙の秘部にあてがう。
「ぐっ!」
「え……」
十分潤って濡れて光るそこが緑丸の進入を強く阻む。
「まさか、初めて?」
「あ、んっ、うん、した、こと、ないっ」
理沙は自分より強い男に出会ったことがなかったので、恋愛関係に到ったことはなかった。キュートな容姿に惹かれ愛を囁く者もいたが理沙より弱く、身を任すことはなかった。また小柄な体を力で何とか出来るだろうと勘違いした男はもちろん鉄拳で制裁してきた。
紳士である緑丸は思わず腰をひく。
「な、んで? やめるのか?」
「ごめん。苦痛を感じさせたいわけじゃないんだ。これ以上はもう――」
「そ、んな。せっかく、あんっ、結ばれるって、あ、ああっ、もう、ダメっ!」
三点攻めの触手ゼリーの振動で理沙は絶頂を得、身体を震わせた。触手ゼリーは役目を終えたかのように跡形もなく消える。片付けがいらず、環境にも優しいアダルトグッズなのだ。
「あ、は、はぁ、はぁ」
拘束具を外し、ぐったりした理沙を緑丸は抱きしめてからベッドに運んだ。
「イクとこ、すごく可愛かった」
「私も緑丸が気持ちよくなるとこ、見たい。抱かないのか?」
「ん――」
「初めてはみんな痛いって聞いてる。私は武術家だ。痛みなんか恐れない」
「しかし――」
心優しい緑丸は小さな理沙が痛がる様子を見ることが耐えられなかった。
「じゃ、今度は緑丸があの椅子に座ってくれ」
「え? 俺が?」
「この道具を使って気持ちよくさせてやりたい」
「ええ? 道具――使うの?」
「だめなのか?」
「い、いや」
まさか自分に使われるという発想がなかったので動揺したが、また同時に興奮もしてしまい緑丸は椅子に座って拘束された。
理沙は拘束した後、ベッドサイドにあったオプションのアイマスクをそっと緑丸に付ける。
「え?」
「見えない方が興奮するだろう」
振動する触手ゼリーが緑丸の乳首に乗せられ、起立した先を筆で撫でられる。
「ううっ!」
唇に理沙の小さな唇を感じたので、貪る様に吸い付き、舌を絡め合った。ゴム手袋が太腿を這いまわり、やがてそっと起立が握られ圧迫され始める。
「あ、き、気持ち、いい、よ」
「よかった」
理沙は緑丸の上にまたがりそっと腰を落とす。
「くぅっ!」
「な、なにしてるの!? だ、だめだ! 無理しないで!」
「う、うぅっ、んっ、くっ」
動けない緑丸は自分の起立が、温かく柔らかいが強い圧力を感じる。
「あ、ああっ、り、さっ」
「あ、は、はっ、はっ、こ、これでちゃんと繋がれた」
自分で挿入しつくした理沙は一息つき、逞しい緑丸の胸の中で深呼吸する。呼吸と痛みが落ち着いてから緑丸のアイマスクを取った。
「理沙さん……。なんて無茶するんだ」
「平気、って言ったじゃないか。確かに痛みはあるが、喜びの方が大きい」
頬を紅潮させ潤んだ瞳を見せる理沙に、緑丸は興奮してしまう。
「うぁっ、な、中、おっきっ、い」
「あ、ご、ごめっ」
興奮のせいで起立が強く硬くなってしまった。
「今日は、もうここまでにしようよ」
「いやだ。緑丸のイクところも見たい」
「いや、動くとまた痛みが増すだろうから、日を改めよう」
「も、もう痛くない」
本当はまだ痛かったが理沙は緑丸にも感じてほしかった。そこで一計を案じ触手ゼリーを千切り、自分の身体に張り付けた。
「な、なにを」
理沙の身体がブルブル振動する。
「うっ、こ、これは」
「どうだ? これなら動かなくても、気持ちがいいんじゃないだろうか。ここにもう一度――」
一瞬ためらいを見せたが、理沙は思い切って自分の花芽にもう一度触手ゼリーを乗せる。
「ふぁっっ!」
「ううぅっ」
振動が二人の繋がっているところを刺激する。理沙はまた耐えられない快感が押し寄せてくるのを感じ、その波に乗じてゆっくり身体を上下させる。
「うっ、り、さ、だ、ダメっ、くっ」
「くっ、うっ、き、もち、よくなって、きた」
長く深いゆっくりとした理沙の動きと振動によって緑丸も絶頂を感じる。
「うぁっ、う、い、きそうだ」
「あんっ、あ、わたし、も、また、イっちゃ、うっ」
「うううっ!」
理沙の中でまた緑丸が大きく硬くなり爆ぜた。
「ああっ、なんて、緑丸、かっこ、いい」
これまでにない苦悩するかのような表情はとても魅力的だった。
荒い息をしながら緑丸は「手の拘束とってもらっていいかな」と理沙に頼んだ。理沙はゆるゆると身体を起こし拘束を取りまた緑丸の胸の中で安らぐ。
その小さな身体を緑丸は宝物のように優しくふわっと包み込んだ。
****************
2人は結ばれた後も鍛錬を怠らず技を磨き合った。こんなに人生を刺激的にしてくれる女性はいないと緑丸はますます理沙に惹かれ続けた。
「やあ、黒彦。何か面白そうなアイテムないかな」
「ん? アダルトショップに行ったらどうだ」
「もう二人で行ったんだけど、なかなかなくてさ」
「ふーん。理沙はお前と気が合うな」
「ああ。彼女もなかなかのアイテムマスターだよ!」
延々と理沙の自慢をのろけて話す緑丸を、桃香はそっと眺める。
「なんか、緑丸さん、キャラ変わったかなあ」
相変わらず優しい木陰のような雰囲気だが、ここのところもっと逞しく感じる。
「そう言えば理沙さんはもっと変わったなあ」
理沙は武術の稽古以外の時は、ブラウスとタイトスカート姿でハイヒールを履くようになった。
「まあでも良く似合ってるからいいね!」
二人が幸せそうで桃香もとても嬉しかった。
黒彦は緑丸から触手ゼリーの上手な使い方を教わり、桃香に試そうと秘かに用意することにした。
緑丸編終わり
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