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優しいメロディーと清らかな歌声に珠子はしばらく耳を傾ける。
葉子の子供たちを世話する姿に、目頭を熱くし珠子は時間を立つのも忘れ見入っていたが「じゃあ、神父様のところへ行ってきますから」と葉子が小屋を出ようとするので、ハッとしまた身を隠した。
葉子が立ち去った後、一人の少年がかごをもって出てきた。
窓から少女が顔を出し、「いっぱいなってるといいね」と言い手を振る。
「きっと甘くて大きいよ」
少年は笑って返した。
どうやら食べ物の調達に行くようだ。
粗末な身なりだが清潔感のある少年は背筋を伸ばし、しっかりとした足取りで小屋の裏の方へ回った。
吉弘と同い年くらいだろうか。
珠子はこっそり後をついて行く。
しばらく歩くと柿の木があり大きな実をつけていた。
人家もなく穴場のようだ。
少年は転がってる大きな岩に上り柿をもぎ始める。
「あ、あと……一個」
もう少しで届くところを指で宙をかき泳ぐようなそぶりをする。
珠子がそっと手を差し伸べてもぎ取り少年に渡した。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして」
珠子が笑うと、少年もにっこり笑う。
戦災孤児であるはずなのに屈託なく明るい。
「ねえ。友の家に住んでいるの?」
「うん」
「子供たちはいっぱいいるの?」
「えーっと僕いれて五人だよ」
珠子の質問になんの警戒も見せず彼は答える。
「そうなのね……。ちゃんとご飯とか食べてる?」
「うん。あんまりないときもあるけど……。でも、戦争してる時のほうが辛かった。今は人の物を盗らなくてもちゃんとしたらもらえるんだよ」
明るく言うが珠子は少年が盗みを働きながら生き延びてきたことに胸を痛めた。
しかし今は違う様でほっとする。
「そう……。あ、あのこれ少しだけど……」
頭陀袋からチョコレートを取り出し手渡す。
「わあっ。チョコレートだ!お姉さん、いいの?」
「うん。みんなでちゃんと分けて食べてね」
「うん!」
「じゃ、さよなら」
「ありがとー。さよならあー」
少年はかごの柿の上にチョコレートをのせて嬉しそうに帰っていった。
葉子の子供たちを世話する姿に、目頭を熱くし珠子は時間を立つのも忘れ見入っていたが「じゃあ、神父様のところへ行ってきますから」と葉子が小屋を出ようとするので、ハッとしまた身を隠した。
葉子が立ち去った後、一人の少年がかごをもって出てきた。
窓から少女が顔を出し、「いっぱいなってるといいね」と言い手を振る。
「きっと甘くて大きいよ」
少年は笑って返した。
どうやら食べ物の調達に行くようだ。
粗末な身なりだが清潔感のある少年は背筋を伸ばし、しっかりとした足取りで小屋の裏の方へ回った。
吉弘と同い年くらいだろうか。
珠子はこっそり後をついて行く。
しばらく歩くと柿の木があり大きな実をつけていた。
人家もなく穴場のようだ。
少年は転がってる大きな岩に上り柿をもぎ始める。
「あ、あと……一個」
もう少しで届くところを指で宙をかき泳ぐようなそぶりをする。
珠子がそっと手を差し伸べてもぎ取り少年に渡した。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして」
珠子が笑うと、少年もにっこり笑う。
戦災孤児であるはずなのに屈託なく明るい。
「ねえ。友の家に住んでいるの?」
「うん」
「子供たちはいっぱいいるの?」
「えーっと僕いれて五人だよ」
珠子の質問になんの警戒も見せず彼は答える。
「そうなのね……。ちゃんとご飯とか食べてる?」
「うん。あんまりないときもあるけど……。でも、戦争してる時のほうが辛かった。今は人の物を盗らなくてもちゃんとしたらもらえるんだよ」
明るく言うが珠子は少年が盗みを働きながら生き延びてきたことに胸を痛めた。
しかし今は違う様でほっとする。
「そう……。あ、あのこれ少しだけど……」
頭陀袋からチョコレートを取り出し手渡す。
「わあっ。チョコレートだ!お姉さん、いいの?」
「うん。みんなでちゃんと分けて食べてね」
「うん!」
「じゃ、さよなら」
「ありがとー。さよならあー」
少年はかごの柿の上にチョコレートをのせて嬉しそうに帰っていった。
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