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63 教会
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店には帰らず、なんとなく歩き続ける珠子の目の前に小さな十字架が目に入る。
(あれ?ここは……)
いつの間にか小高い丘へ登っており、昔、浩一と葉子が結婚式を挙げた教会にやってきていた。
懐かしさで胸がいっぱいになり、近づかず腰を下ろし、素朴な木製の十字架を見つめた。
窓に少し明かりが灯っている。
扉がぎっと空き中から修道女が出てきた。
顔が月明かりに照らされる。
「あっ!」
珠子は息をのんだ。
老いてはいるが間違いない。
葉子だ。
(葉子おかあさま……)
木の陰に思わず身を隠す。
珠子は今の姿を見せたくなかった。
しかし葉子の元気そうな様子を見て、安堵すると同時に一樹の行方も気になった。
一樹はどうしているのだろうか。
一樹の立場であれば早々に戦争に駆り出されはしなかっただろうが、終戦間際の激戦時期にはおそらく出兵したであろう。
(会いたい……)
すぐにでも葉子に問いただしたいがじっとこらえた。
神父に聞いてもいいかもしれないと思いつき、葉子が立ち去ったのを見計らい教会の扉を叩いた。
小さな教会なので神父はすぐさま出てきた。
残念ながら、以前ここにいた神父ではないようだ。
「ハイ。こんなお時間にドウシマシタ?」
「神父さま。すみません」
珠子はスカーフで派手な顔を隠し謝った。
「まあいいでしょう。とりあえずお入りなさい」
「ありがとうございます」
長椅子に腰かけ珠子は穏やかな神父の顔を見る。
外国人の顔は皆同じに見えてしまうが、慈愛に満ちた青い瞳に既視感を覚える。
神父というのはみなこのような人物なのだろうか。
(あれ?ここは……)
いつの間にか小高い丘へ登っており、昔、浩一と葉子が結婚式を挙げた教会にやってきていた。
懐かしさで胸がいっぱいになり、近づかず腰を下ろし、素朴な木製の十字架を見つめた。
窓に少し明かりが灯っている。
扉がぎっと空き中から修道女が出てきた。
顔が月明かりに照らされる。
「あっ!」
珠子は息をのんだ。
老いてはいるが間違いない。
葉子だ。
(葉子おかあさま……)
木の陰に思わず身を隠す。
珠子は今の姿を見せたくなかった。
しかし葉子の元気そうな様子を見て、安堵すると同時に一樹の行方も気になった。
一樹はどうしているのだろうか。
一樹の立場であれば早々に戦争に駆り出されはしなかっただろうが、終戦間際の激戦時期にはおそらく出兵したであろう。
(会いたい……)
すぐにでも葉子に問いただしたいがじっとこらえた。
神父に聞いてもいいかもしれないと思いつき、葉子が立ち去ったのを見計らい教会の扉を叩いた。
小さな教会なので神父はすぐさま出てきた。
残念ながら、以前ここにいた神父ではないようだ。
「ハイ。こんなお時間にドウシマシタ?」
「神父さま。すみません」
珠子はスカーフで派手な顔を隠し謝った。
「まあいいでしょう。とりあえずお入りなさい」
「ありがとうございます」
長椅子に腰かけ珠子は穏やかな神父の顔を見る。
外国人の顔は皆同じに見えてしまうが、慈愛に満ちた青い瞳に既視感を覚える。
神父というのはみなこのような人物なのだろうか。
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