銀木犀の香る寝屋であなたと

３７

　二人の関係は客にも怪しまれてはいるようだが、独身であるので非難の目で見られることはなかった。

たまに珠子に言い寄ろうとする男への防御にもなっていて悪くはないのかもしれない。

また店自体は繁盛していて慌ただしく働いているので淫靡な情人関係には見えなかった。



　おかげで珠子は生活の安定を図ることが出来、キヨのマヒも随分とよくなり軽作業ならこなせるようになった。

もう少しで吉弘は三歳になる。

彼も分別が付いているのかキヨが近所の野良仕事の手伝いに出かけて行っても、メイドのナカが居れば寂しさを我慢する。



　女三人で吉弘を育て上げるという共通の目的は血縁関係よりも強いきずなを生み出していた。

ただこの四人家族の一番いい時期は戦争によって終焉を迎えることとなる。