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気まぐれにしてみる
とある道すがら
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ふとあの喫茶店のことを思い出す。
あのコーヒーおいしかった。
店を出るときに『また来ます』と言って出たのだけど、なかなか入ることが出来なかった。
と言うよりは何かと休店しているのだ。暇さえあれば足を向けているが、なかなか空いている日がない。
ああいった者は徒然に気まぐれなものだ。 近づきたいと思えば遠ざかり、ふとしたところから現れる。
「あら、あの時の。お久しぶりですね」
そう、まさしくこんな感じだ。
驚いて慌てて振り向きたいところだけど、自称鈍感な僕は普通に振り向いて。
「あ、どうも」
という微妙な反応を返してしまう。
もう少しマシな反応は出来ないのか。その先の言葉が出てこない。
「どうも、こんな所でどうしたのですか?」
「いえ、少しコーヒーが飲みたくて」
お店が開いていないと言う事実をこっそり皮肉っぽく言ってみる。今、僕はどんな表情なのだろうか。
「ここら辺と言えば良いところを知っていますよ。一緒にいきましょう?」
そう言うと我先にといった具合に歩きだす。皮肉は全く通じなかった。
ーー ーー ーー
「あの、まだですか?」
思わず呻き声を出す。
「え?」
もうかれこれ30分以上歩きっぱなしだ。近くと言えば10分程度以内という感覚だけど、あやかしものには別の感覚があるらしい。
30分も歩くとかなり家から離れた場所になる。なんとなく歩いていただけなので、道なんてうろ覚えだ。
「もうすぐです。もう見えていますよ」
どういう風に帰ろうかと考えていると、彼女が口を開く。
地面から目線を引き剥がし、正面に目を向ける。正面にあったのは神社だ。
「えっと?」
戸惑いつつも、彼女に疑問の視線を送る。
しかし、彼女は寂れた参道を歩いていく。
そうこうしている間に彼女は躊躇なく石の鳥居をくぐる。
周りを堀で巡らせているその古社は、説明書きに御園神社と書かれてあった。
「ここは?」
とても古い印象を受ける。
とても比較的小さな社殿でありながら、横には社務所が設けられている。つまりは歴史深い、もしくはそれなりの御由緒があるということだろう。
西に向いてたてられているのには何かしらの理由があるのだろうか?
「ここの主祭神は、高良玉垂命なのですけど」
「ええ…?」
「私のことなんですよ」
「なるほど……え?」
あやかしもの扱いしていたが、物凄く高尚な人(神)だったようだ。
「そういえば、名前を聞いていなかったですね」
思い出したように聞いてくる。高良玉垂命はこちらを真っ直ぐに見つめた。
「えっと、篠乃木 科斗です」
「よろしくお願いしますね、篠乃木さん」
「こちらこそ。そう言えば、喫茶店に行っているものだと思っていたのですが?」
「いえ、喫茶店ではなくここであっていますよ」
そう言うと、本殿の北側にある稲荷社まで歩いていく。稲荷社らしく社や鳥居はとても鮮やかな朱色で彩られていた。少し小さめの社は扉が閉じられている。
「入りますよ?」
そう言うと、いきなり扉に手をかけ扉を開く。
「うおわ!?」
扉の向こうから、幼くかわいい声が聞こえた。
「じゃから、ノックをしろといっとるじゃろ!」
扉の向こうから、幼い割には古びた口調が聞こえてきた。
「なにごと!?」
あのコーヒーおいしかった。
店を出るときに『また来ます』と言って出たのだけど、なかなか入ることが出来なかった。
と言うよりは何かと休店しているのだ。暇さえあれば足を向けているが、なかなか空いている日がない。
ああいった者は徒然に気まぐれなものだ。 近づきたいと思えば遠ざかり、ふとしたところから現れる。
「あら、あの時の。お久しぶりですね」
そう、まさしくこんな感じだ。
驚いて慌てて振り向きたいところだけど、自称鈍感な僕は普通に振り向いて。
「あ、どうも」
という微妙な反応を返してしまう。
もう少しマシな反応は出来ないのか。その先の言葉が出てこない。
「どうも、こんな所でどうしたのですか?」
「いえ、少しコーヒーが飲みたくて」
お店が開いていないと言う事実をこっそり皮肉っぽく言ってみる。今、僕はどんな表情なのだろうか。
「ここら辺と言えば良いところを知っていますよ。一緒にいきましょう?」
そう言うと我先にといった具合に歩きだす。皮肉は全く通じなかった。
ーー ーー ーー
「あの、まだですか?」
思わず呻き声を出す。
「え?」
もうかれこれ30分以上歩きっぱなしだ。近くと言えば10分程度以内という感覚だけど、あやかしものには別の感覚があるらしい。
30分も歩くとかなり家から離れた場所になる。なんとなく歩いていただけなので、道なんてうろ覚えだ。
「もうすぐです。もう見えていますよ」
どういう風に帰ろうかと考えていると、彼女が口を開く。
地面から目線を引き剥がし、正面に目を向ける。正面にあったのは神社だ。
「えっと?」
戸惑いつつも、彼女に疑問の視線を送る。
しかし、彼女は寂れた参道を歩いていく。
そうこうしている間に彼女は躊躇なく石の鳥居をくぐる。
周りを堀で巡らせているその古社は、説明書きに御園神社と書かれてあった。
「ここは?」
とても古い印象を受ける。
とても比較的小さな社殿でありながら、横には社務所が設けられている。つまりは歴史深い、もしくはそれなりの御由緒があるということだろう。
西に向いてたてられているのには何かしらの理由があるのだろうか?
「ここの主祭神は、高良玉垂命なのですけど」
「ええ…?」
「私のことなんですよ」
「なるほど……え?」
あやかしもの扱いしていたが、物凄く高尚な人(神)だったようだ。
「そういえば、名前を聞いていなかったですね」
思い出したように聞いてくる。高良玉垂命はこちらを真っ直ぐに見つめた。
「えっと、篠乃木 科斗です」
「よろしくお願いしますね、篠乃木さん」
「こちらこそ。そう言えば、喫茶店に行っているものだと思っていたのですが?」
「いえ、喫茶店ではなくここであっていますよ」
そう言うと、本殿の北側にある稲荷社まで歩いていく。稲荷社らしく社や鳥居はとても鮮やかな朱色で彩られていた。少し小さめの社は扉が閉じられている。
「入りますよ?」
そう言うと、いきなり扉に手をかけ扉を開く。
「うおわ!?」
扉の向こうから、幼くかわいい声が聞こえた。
「じゃから、ノックをしろといっとるじゃろ!」
扉の向こうから、幼い割には古びた口調が聞こえてきた。
「なにごと!?」
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