魔法系男子のゆふるわな日常(希望)

ねじまる

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第一章 青き衣(ジャージ)をまといし者

せいかいは アレでした!

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 現場に近付くにつれて、男達の怒鳴り声が聞こえてくる。

「もっと空気を送れ!」

「これじゃ間に合わねーぞ!」

「手が足りない! 誰かこっちに来てくれ!」

 大勢の男や少年が右往左往と慌ただしく動き回っている。
 間違いなく、村人達だろう。

 俺達が地面に降り立っても誰も気が付かない。
 集中しているのだろう。
 必死に作業を続けている。

 その中に、ノエルの小さな姿を発見した。

「はー! ほー!」

 飛んだり、跳ねたり。
 実に忙しない。

 ぎっちょんぎっちょんと音を鳴らしながら、大きな空気入れのポンプのレバーを上下に動かしている。
 白い布を縫い合わせた大きなものが、ゆっくりと膨らんでいくのが見えた。

 秘密の特訓はこの為だったのか。

「頑張ってるなぁ」

「みゃっ!?」

 彼女は肩を震わし、勢い良くこちらに振り向いた。

「ててててて、てきのスパイめ、なにしにきた!」

 大人である俺に果敢に挑もうとするのか、彼女はファイティングポーズ。
 しかし、その腰はへなちょこに逃げている。
 また叩かれると警戒しているのだろう。

「勇者達はまだ来てないのか?」

 俺がそう言うと、彼女はころりと表情を変え、

「まだだ。まだもりのなからしいが、じかんのもんだいだろう」

 大人びた渋い顔を見せる。

「カウロのじぃちゃんが言っていた『アレ』ってこれか?」

 白くて大きな何かの根本には複数の管が伸び、その先は空気入れに繋がっている。
 男達が大汗を掻いて一生懸命に空気を送っていた。
 ざっと見て、完全に膨らませるとなると小山ぐらいになるだろうか。
 それを二十人ちょいという少数で、五つか六つの『何か』を膨らませるのはもの凄い労力を要するだろう。

「これはオジジさまがこうあんしたのだ。なんどもこれでおいはらってきた」

 彼女は誇らしげに胸を張り、白い物体へ目を向けた。
 青い空の下で、白い物体が少しずつ膨らんでいるのが分かる。

「膨らませば良いんだな?」

 何ができるのか、興味がある。

 俺はノエルが使っていた空気入れのノズルを外した。
 しゅるしゅると穴から空気が漏れてくる。

「あっ! バカモノ! くうきがにげるではないか!」

「まぁ、見てなって」

 俺は空気が漏れる穴に左手を突っ込んだ。
 それから、隙間から漏れないようにと手首の辺りを右手で掴む。

「風の精霊に申し上げる」

 風の呪文を小さく口にした。
 左手から生まれた風が瞬時に白い何かを膨らませる。

「へっ?」

「一瞬で!? マジか!?」

「俺達の今までの苦労って……」

 男達が驚きの表情で振り向く。

 な、何だ、今の?

 思わず自分の手を二度見してしまった。
 魔法を発動させておいて言うのもなんだけど、威力がいつもよりも大きい。

 普段、ポンプよりも早く空気を送ることはできる。
 しかし、瞬時にして膨らますことができるなんて、魔法を増幅させるブースター的なアイテムが身近にないと不可能なはずである。

 それとも俺、いつの間にか魔力がレベルアップしてる?

「おまえ、なにをした! やるではないか!」

 ノエルの素直な反応に思わずニヤリと口元が歪む。
 周りの男達からもどよめきが聞こえてくる。
 俺は得意げに鼻を鳴らし、膨らんで完成した物体を見上げた。

「これは……ホワイトドラゴン?」

 それはそれは、いびつで、可愛らしくデフォルメされた世界最強のドラゴンのバルーンだった。
 鼻面が短く、愛嬌のある白猫のようにも見える。


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