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232話 ケル君2度目の進化でございます!

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「いよいよですね!」
【準備は万端なんだゾ!】


 夕飯を食べ終わり、お風呂に入り、それぞれの部屋(私はロモンちゃんと一緒に)で眠ったその翌朝。
 朝ごはんを食べてからある程度の準備をし、進化を決行することになった。
 ケル君、順当行くなら次はAランクの魔物であるオルトロスになる一歩手前だから首が二つに増えたりはしないはず。そうであってほしい。いままで一つ首でいたケル君の首が二つ以上に増えるのはまだちょっと心の準備ができていない。

 
「いつでも良いぞ」
「それじゃあ、進化しようか!」
【ゾ!】


 ケル君の身体が淡い光に包まれ始めた。私も魔物であるからわかるけれど、あの間にステータスから色々な報告をされたりして、確率なんかもでるから緊張とドキドキが高くなる。
 

「どうなるかな……!」
「わかりませんね、こればっかりは運ですから。あの特別なヘヴンドッグからヘルドッグ系列へと逆戻りすることだってあります」
「うん。だからこそ進化はしっかり見守らないとね」


 やがて光は晴れた。
 満を持して私たちの目の前に現れたのは、とても大きなケル君。
 ……そう言うしかない。大きさと一部の柄以外はそのままだ。どうやら無事にヘヴンドッグ系統に乗れたみたい。
 

「ケルーっ! 随分大きくなったね!」
【ゾーッ! 身体の調子が良いんだゾ! 今ならちっこいアイリスだけじゃなくて、ロモンとリンネ二人を同時に乗せて走れそうなんだゾ!】
「ほんとに、そのくらいの大きさはあるねぇ!」


 大きさで言えばおそらく大きめのライオン。2メートル強くらいかしら。前が1メートルの大型犬くらいだったから、だいたい1.5回りくらいは大きくなったことになる。
 足腰は発達しており、身体自体も大きくてフサフサしてる。ロモンちゃんとリンネちゃんを乗せて走れるというのも実際にできるでしょう。
 

「ふむふむ、予定通りか。名称はこの様子を見ると大方グランヘヴンドッグじゃろう?」
「普通ならね。ケル、ステータス見ても良い?」
【もちろんなんだゾ】


 ヘルドッグ系統の進化は、途中で何の屈折もない順番通りならばトゥーンヘルドッグ、ヘルドッグ、グランヘルドッグ、オルトロス、ケルベロスと進んで行く。
 そして他の魔物と同様に、属性を含めばそれに該当したものになる。ケル君の場合はそれが光属性だった。

 
「……ん?」
「どうしたロモン」


 オレンジ色の光を手から出してケル君のステータスをのぞきはじめたロモンちゃんは、初っ端から首を傾げた。
 

「えーっとね、おじいちゃん。なんかグランヘヴンドッグじゃないよ……?」
「なんじゃと? じゃあなんと表示されてるんじゃ?」
「まー、ままー、ま……マグぅ…マグニフィセント…ヘヴンドッグ? だってさ」


 マグニフィセントヘヴンドッグ?
 かっこよく訳すなら崇高な天界の犬……? なんかすごく強そうな名前ね。


【えっへん、なんだかとっても強そうな名前になったんだゾ! 嬉しいんだゾ!】
「こりゃまた系統に当てはまらない完璧な新種じゃな。アイリスちゃんが回復魔法の名をつけたゴーレムだったのに、進化したらエンジェルゴーレムになったのと同じじゃ」
「こう言う魔物って確か……」
「そうじゃの、これ以降はもう普通の進化を遂げるとは思わないほうがいいな」


 つまりロモンちゃんってば自分の仲魔にした魔物全て、今の所、普通じゃない特殊な進化にまで持って行ってるってことか。
 ヒュー! さすがロモンちゃん!


「もしかしたら、いや確実にロモンは将来、ワシより優秀な魔物使いとなるじゃろうな……」
「そんなまさか! おじいちゃんより凄い魔物使いだなんて……後にも先にもいないんじゃない? それにアイリスちゃんとケルは私が凄いんじゃなくて、それぞれ本人が天才なんだよ?」
「それもたしかにある。しかしそれだけじゃここまで新種を生み出すのは無理じゃ。自身を持っても良いぞ!」
「えへへ……ありがとっ」


 リンネちゃんはここ最近で一番の笑顔を見せた。とてつもなく可愛らしい。ロモンちゃんもリンネちゃんも二人とも褒めて伸びるタイプだから、おじいちゃんにここまで褒められたことは、ロモンちゃんにとってすごく大きなことになると思う。


「さて、名前だけみたところで……まずは姿を確認しよっか!」
「もうモノサシの準備はできとるからな。ケル、じっとしとるんじゃぞ」
【干し肉食べたいからじっとしてるんだゾ!】


 崇高な存在になったらしいのに中身は全く変わってないケル君にすこし安心。おじいさんはケル君の身長・体重などを昨日と同様に測り記録していった。
 やっぱりそこら辺は普通のグランヘルドッグとなんら変わりはないらしい。ケル君自身はグランヘルドッグの個体としてはほんのすこし小さめのようだけど。

 問題は見た目の方。
 毛は抱きつきたくなるくらいフサフサ感が増し、首元と目元にあった赤い模様はそのまま残っている。
 前からの変更点は、そこら以外にも模様が増えていることかな。尻尾とか足の付け根とかに。
 すこしいかつくはなったけど、前からなにか変わったようには見ただけでは思えない。
 ………見ただけでは。何かあるような気がして思えない。

 
「ふむふむ……なるほどな。ロモン、ケルに乗っかれるか?」
「ケル、乗ってみて良い?」
【どうぞなんだゾ!】


 ケル君はその場に伏せ、そこにロモンちゃんが乗っかった。いいなー、楽しそーだなー。でもヘヴンドッグだった頃に幼女の姿の私だけ何回か乗らせてもらったし文句は言えない。


「アイリスちゃんこれやってて楽しそうだから一回乗ってみたかったんだよねー! ど? 重くない?」
【軽いんだゾ! ほんとに乗ってる?】
「それは大きさに伴い筋力が大幅に強化されたからじゃな。そのまま机の周りをぐるっと一周してみてくれんか」
【了解なんだゾ】
「あ、終わったら次ぼくね!」


 ケル君はロモンちゃんを乗せたまま机の周りを歩きはじめた。普通に歩く姿ですら雄々しさが溢れ出てきててカッコいい。


「ちょっとまって!」
【……ゾ? どうかしたのかゾ?】
「何か今変じゃなかった?」


 窓側に差し掛かった時、ロモンちゃんがケル君の歩みを止めた。私は別におかしなところなんて見つけられなかったけどなぁ?


「どうしたんじゃロモン」
「今ちょっと、ケルが光った気がして……そうだ、窓辺! 窓にもっかい近づいてくれる?」
【わかったゾ】


 ケル君はロモンちゃんに言われた通り窓の前に立った。するとなんと言うことでしょう、ケル君の毛並みが全て金色に輝き、光をまとっているではありませんか。
 その上、赤の模様まで全て揺らめいているように見える。


「すごい……綺麗……!」
【ゾ? どうなってるゾ? ちょっとポカポカするんだゾ】
「なんと神々しい。名前の意味はこれかもしれない」
【ゾー?】


 なるほど、これがケル君の一番の特徴ね。陽の光を浴びると金色に輝くようになった。とても神々しい。


【あのー、ロモン。もう動いていいゾ?】
「あ、うん。いいよ! そろそろステータスもちゃんとみないとね!」


 ケル君は机の周りを一周し終え元の位置に戻った。ロモンちゃんは再びオレンジ色の光を出し、ケル君のステータスを確認し始める。
 あれだけ神々しい見た目をしてるんだもの、なにか、すごい効果がついてることを期待しよう。
 

 
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