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208話 私、大いに困惑するのでございます…。

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「もう、なんなんですか? 気になるじゃないですか……どうやら教えてくれないようなので、メモ見せてくださいよ」
「いんや、こりゃ自分の口から行った方がいい」
「そうなんですかぁ……?」


 気になるぅ…。いえ、いいの、普通にガーベラさんが私について何か話してたってだけならここまで気にしてなかったの。周りの反応も気になっちゃうの!
 こうなったら質問をして行くしかない!


「私の悪口でもないとなると……まさか褒め言葉ですか?」
「あー、うん、そそ、そんなところだよ!」
「ちっ……度胸ねーなぁ……半分当たってるからって甘えんなよ」
「本当にそれでも男かい!? ちゃんとアレついてんのかい?」


 えー、嬉しかったのに。
 褒め言葉でも半分正解な程度ってどういうことかしら。正解は正解でもそう言われるとさらに気になる。 
 これより上って何?
 

「ガーベラ! お前が言う気ないならやっぱり俺らが代わりに言おうか?」
「あ、知りたいのでそれでおねいがいします!」
「アイリスちゃんもこう言ってるぜ! ……そのかわりオーケイされてもダメだからなぁ」
「い、いや、それも困る……」


 ガーベラさんってもっと男っぽくてかっこいいイメージあったのになぁ。なんだか今日は頼りないや。せっかく久しぶりに会ったのに。


「そんなに言いたくないんですか?」


 ガーベラさんは頷いた。
 ……ここまで嫌がっているのなら、もう聞くのはやめた方がいいかもね。嫌われちゃうかもしれない。


「わかりました。みなさん、お騒がせしました、お酒を飲むのに戻りましょう」
「けっ、なんでいなんでい」
「見損なったよ」


 ガーベラさんは席に戻る途中でいろんな人から罵倒されている。やっぱり気になるけどこれでよかったのかもしれない。みんなの口ぶりからして、今の関係が何かしら少しは変わってしまうような内容っぽいし。

 とりあえず私はジエダちゃんの隣に座りなおした。私より3つ先に座ったガーベラさんは、周りの人からグイグイとお酒の容器を顔に押し付けられている。
 何かしら、あの遊び。


「……むっ」
「ん、どうしたのマスター」


 数分して、ガーベラさん以外みんな元のテンションに戻りつつあったころ、ギルドマスターは酒を飲む手を止め、このギルドの玄関の方を見たの。


「誰か来る」
「……反応するほどの強者なのか?」
「警戒はしておいた方がいい」


 近くにいた冒険者とマスターのその会話を聞き、全員が警戒態勢に入った。こういうところは流石、戦う職業の人たちって感じよね。
 ……たしか大探知をつけていたら強大な力を感じることができる。

 扉は開かれた。
 その先にいたのは、白髪で赤のメッシュが入った髪の……森で出会ったあの人だった。


「やあやあ! この冒険者ギルドのこの時間帯によく入り浸っていると聞いてやってきたよ!」
「おう、なんだ……! すげぇイケメンの兄ちゃん。誰かお探しか?」

 
 入り口から一番近かった、Aランクの冒険者の人が対応してくれた。例の彼はそちらを向いて返事をする。


「やあ、一般冒険者君。アイリスっていうすごく可愛い女の子を知らないかい?」
「い、一般……いや、たしかに実力のある冒険者としては一般的かもしれないけど……。それよりすごく可愛いアイリスちゃんならそこにいるぜ。何の用だ」
「ちょっと、デートのお誘いにねっ」


 大勢の前でそんなこと言うんだからもう。
 すごく可愛いは本当に余計だと思う。普通よ普通。


「で、デートのお誘いぃ?」
「ああ、きっとすると彼女には言ってある……お、いたいた」


 見つかってしまった。まあ隠れてないし当たり前か。
 彼は私を手招きしている。仕方ないからギルドの入り口まで私は歩んでいった。


「……まさかここを見つけ出すなんて」
「きっとデートのお誘いをするって、言ったはずだよ」


 それって私と前世じゃストーカーっていう覚えがなんとなくあるんだけど。グラブアもそんな感じだったわね……なんか嫌な予感がする。


「そ、それよりいいんですか? 大勢の前に出たくはないんじゃ……」
「連行されて取り調べされるのがめんどくさいだけなんだよ。やましいことは何一つない」


 そう…なのかなぁ、本当に。
 確かにこれだけの怪しいオーラを醸し出している人だもの、取り調べとか面倒だろうけれど。


「アイリスちゃん、知り合いなのか?」
「ええ、まだ一度、数分程度しか会ったことありませんが」
「一度しか会ってないのにこんな馴れ馴れしいのか」


 その言葉を聞いて、特にマスターとガーベラさんなど、私が同じようなタイプの男性からどんな目に会ったか知っている二人が警戒態勢に入った。
 周りの冒険者もみんな、怪しんでくれているみたい。
 持つべきものは友達よね。


「あぁあぁ、そんなに警戒しないでくれよみんな」
「いや……だってアンタさ、怪しすぎるよ。超イケメンだけど
「そ、そうですよ! アイリスさんは優しいですから、そこに漬け込んだりとかするつもりなんじゃないですか! イケメンさん!」


 そうなのよね……この異端な行動を全て許せるくらいイケメンなのよね。女性冒険者の言葉に必ずイケメンという単語が入るようになってるくらいには。


「そこの緑色の髪の女の子、そう、君のいう通りだ。一目で見てわかるくらいアイリスは優しいだろう。何もかもがタイプなんだ、一目惚れなんだよ……」
「ふん、本当のアイリスちゃんも知らずにアイリスちゃんを語るな!」
「半魔半人だろ? 知ってるよ」


 その言葉を聞き、みんなは驚いた。
 と、同時に最初にイケメンの彼を相手してくれた冒険者が私に尋ねてくる。


「アイリスちゃん、こいつに自分の正体明かしたのか?」
「まさか……彼は自分で見抜いてしまったんですよ」
「すごい観察眼だ……」


 そう、すごい観察眼なのよね。
 ケル君がアルケニスを見つけてしまうことも予言しちゃってたし。


「……それでどうだろう、デートの誘いに乗ってくれないかな?」
「ど…どうしましょうかっ」


 イケメン……うん、イケメンなんだもんなぁ。
 でもダメよアイリス。世話好きとイケメン好きを偶然にも利用されたじゃない。


「ダメ?」
「えっと……その……ダメかと言われたら……」
「……ダメだ」
「えっ?」


 私と彼以外の声がする方を向いた。
 ガーベラさんが何かの覚悟を決めたように立ち上がっている。顔を上げることなく、私たちの方にスタスタと近づいてくる。
 ……なんで周りの人たちは嬉しそうな顔をしているのかしら。


「アイリス、またああいう目にあうぞ」
「そ、そうですけど……」
「ああいう目? なにか昔にあったのかな?」
「色々と。それに……」


 ガーベラさんは私と目を直接合わせられるように移動してきた。もちろん、目と目が合う。
 ……なんだか懐かしくて安心する感じ。
 と同時に彼がひどく赤面しているのもわかった。


「それに?」
「……先に今日、彼女をデートに誘おうと思っていたのは俺のほうだ」
「……ほう、そうきたか! 若い槍使いよ!」
「えっ、えっ?」


 今なんて言いました?
 今、なんて言いました?
 ガーベラさんは私をデートに誘うと言いました。
 ……二人揃って私とデートしたいと申しております。実に物好きですが……なんなの、この状況?
 なんで私を取り合ってるの……?

 

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