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126話 まだまだ働くのでございます! 2

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「アイリスちゃん、あの人が私達の貼り付けたやつ受付に出したみたい。もう探さなくて大丈夫だよ」


 ロモンちゃんがわざわざ私のところに言いに来てくれた。優しいなぁ。
 私達との共同クエストメンバー募集の張り紙を手に取りカウンターへと持っていった金髪の青年は、その受付のお姉さんに私達を指されこちらを振り返る。
 それと一緒に私達は受付のお姉さんから手招きされたの。
 呼ばれたなら仕方ないから受付の前へと戻る。


「この方がリンネ様達のメンバー募集を受けて下さるそうですよ? どうします、許可しますか?」


 メンバー募集を向こうから受けたいって言ってきたとしても、断るかどうかは私達が選べる。
 ふむ…本当は女の人の方が良かったんだけどなぁ。


「アイリスちゃんはどうする?」
「ぼく達は全然構わないんだけど」


 この二人が構わないと言っているのなら、私もそれで構わないかな。でもとりあえず、名前とランクと役職だけでも訊いておかないと。


「あの、自己紹介をお願いできませんか? 名前と、ランクと役職を」
「わかった。俺はガーベラ、ランクはこの間Cに上がったばかりで、役職は戦士だよ」
「得物は?」
「槍だな」

 
 ふーむ、話してる感じさわやかでいい感じだし、悪い人という気がしない。
 私と同じ花の名前ってのも悪くないかな。
 ふふん、寝込みを襲われたりしないだろう。
 私が了承のつもりでコクリと頷くとロモンちゃんとリンネちゃんは正しく受け取ってくれたのか、受付のお姉さんに許可することを伝えたの。


「では、これにて依頼の登録は完了しました!」


 受付のお姉さんは依頼登録完了のことを告げると、私達に詳細が書かれた紙を渡し、カウンターの奥へと消えていった。


「今度は君達の名前や役職を教えてくれないか?」


 お姉さんが去ったのを確認し、ガーベラとかいうイケメンはそう話しかけてきた。


「ぼくはリンネ・ターコイズです! 役職は剣士で、得物は双剣です!」
「私はロモン・ターコイズです!  役職は魔物使いです!」

 
 可愛い双子は簡潔に自己紹介を。
 

「ああ、君達が最近話題の、大会で双子で優勝したっていう……」
「そうそう、そうです!」
「へぇ…ところで君は魔物を連れてないの? ふうしょ…とかいう本で持ち運んだりしてるんだっけ」


 ロモンちゃんにそうたずねてきた。
 魔物って言いかたをするに、大会自体は見ておらず話を小耳に挟んだだけなのかも。


「いえ、違いますよ。ちゃんといます」
「ん……?」


 あ、この反応は久しぶりだ!
 こういう反応を見ると楽しみたくなる。だからロモンちゃんも少し遠回りな答えたかをしてるんだ。


「どこにいるのかな?」


 キョロキョロと、ガーベラさんは私達周辺を探しだした。よしここは一発驚かせますか!


「その前に、私の自己紹介してもよろしいですか?」
「あっ…ああ、そうだな」


 短めな前髪を揺らし、私の方をみつめなおすガーベラさん。その瞳はなんだか吸い込まれそうで、なおかつ、どこかで見た気がする…まあ気のせいよね。
 とりあえず自己紹介しなきゃね、ふふ。


「私はアイリスと申します。役職は魔物…ゴーレムです。得物はとりあえず剣ですかね。魔法と徒手を中心に戦いますが」
「ん?」


 イケメンなひたいにシワがよる。


「もう一回…役職あたりからいい?」


 なるほど、何かの幻聴だと思ったのか知らん。
 もう一度言ってあげようね。


「わかりました。役職はゴーレムです。得物は剣ですが、魔法と徒手を中心に戦います」
「……え、役職がゴーレムっていうのは……」
「私が正式な人間ではなく、魔物から人間になった半魔半人ということです」


 ガーベラさんはカッと目を見開いた。
 ふふふ、どうやら本気で驚いてくれたみたい。
 こういう反応はたまに見ると楽しい。


「えええええっ!? は、本当!?」
「本当ですよ。ゴーレムに一旦戻りますね」

 
 私はその場でゴーレムに戻ってみせてみた。
 ガーベラさんは呆けた顔で、信じられないようなものを見るように私の顔を見つめ続けてる。
 しばらくして正気を取り戻したのか、やっとこさ口を開いた。


「……魔物って、人間になれるのか」


 あ、そこ!?
 そこを知らない人も居るんだね、この世界に。
 冒険者やそれに対して仕事をする人たちはほとんどみんな半魔半人がどういうものか知っていたりしたもの。
 とりあえず私はゴーレムから人間の、18歳の姿に戻る。
 

「どうです? 仲魔はおろか、自律した魔物なんかと仕事できないというならば、今から断っていただいても間に合うかと思いますが」
「いや、大丈夫だよ。俺はそんな偏見もってはいない」


 ガーベラさんは首を振る。
 おおっ、この人は本当に良さそうな人だ。安心して仕事ができそう。ま、この人に仕事を与える隙なんてないとは思うんだけどね。


「えーっと、ガーベラさんとロモンさんとリンネさん?」


 カウンターの奥から戻ってきた受付のお姉さんが、声をかけてくる。


「以来の受理をしましたので、早速現地へと向かって頂きたいと思います。あと30分ほど、ギルド内でお待ちください」


 Cランク2組でちゃんと受理されるのか心配だったけれど、よく考えたらこういう魔物駆除・討伐系のものはギルドから出されてることが多いんだった。
 そして、ギルドは私達の事情を知っている。
 だからこんなにすんなり受理されたのね。


「ガーベラさん、せっかくですし、親睦を深めるために打ち合わせみたいなのしましょうよ」


 このパーティのリーダーらしく、ロモンちゃんはそう言い出した。


「うん、リンネちゃん…でいいかな。そうさせてもらおう」


 む、初っ端からリンネちゃんとは馴れ馴れしい。
 まあでも私達のこと『ちゃん』付けで呼ぶ人ってかなり多いし別にいいか。
 …でも念のためな素性を調べてみるのも悪くない。


「ではあそこのテーブルで」
「「はいっ」」


 二人がガーベラさんについていってテーブルのひとつに囲んで座る。その様子を見届けてから、私はギルドマスターの元へ。
 …無論、ガーベラさんの素性や経歴を聞くため。
 少しの間しか一緒にお仕事しないといっても、やっぱり気になるの。


「ギルドマスター、あのガーベラさんとはどういった方なんです?」
「んー…そうだな」


 ギルドマスターによると、ガーベラという冒険者は特に目立った問題点とかはないらしい。
 強いて言えば冒険者になってから私達と同等のスピードでこのランクまで来たってことかしら。
 なんでも、冒険者になるなり自分より高めのランクの依頼をどんどんと受けていったのだとか。
 
 ギルドマスターはここまでをなんでもないようなことのように言ったけど、よくよく考えたら単身で、大会で優勝してやっとこのランクの私達とタメを張るってことだから…ガーベラさん、相当強いわね。


「わかりました、ありがとうございます」
「まあ、夜には来ないし顔なじみないと思うけど、とにかく悪いやつではねぇな」


 去り際にギルドマスターがそう言ってくれる。
 うん、少しだけ話してみてそんな気がするんだ。
 私は、ロモンちゃんとリンネちゃん、そしてガーベラさんが座っている席まで行き、話し合いに混じることにした。
 ま、最悪でも変なことは起こさないでしょう。


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