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108話 長期のお仕事で御座います! 2
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お、やっと仕事か。
「こんなこともあろうかと、剣は準備しといて良かったよ」
リンネちゃんはスペーカウの袋から双剣を取り出しす。
「私達は武器なんてないから、このまま外にいこう」
【はい】
慌てて準備する他の冒険者達のことは後にして、この程度の準備で済む私たち2人と1匹は、魔物が現れたことで停車している馬車から降りた。
私達のことを視認したのか、青年は魔物から目を離さぬままこちらにやってくる。
「えっと、相手はグランガチノイド4匹です! その…乗客の皆様に怪我が無いようにお願いします!」
「えぇ……」
リンネちゃんのため息混じりの声が響く。
グランガチノイド、Dランク。
グランガチという、前足が異常発達したワニのようなEランクの魔物の進化系。
それも、レベルによる進化じゃなくて、環境による進化だっていうのが面白い。
普通のグランガチは普通のワニと基本は同じで、地面を4足歩行に近い感じで歩くんだけど、このグランガチノイドは後脚も強化されていて二足歩行ができる。
その上、人型に近い。
まあ、そんなのは問題じゃないの。
本当の問題は、その守れる側であるお客さん達が、外に出て戦闘の様子を見ようとしてること。
馬車から出てきてこっち見てくんだもん、やりづらい。
【まあ、どちらにせよ私の敵ではないので、さっさと片付けちゃいましょう】
「だねっ! やっちゃえー!」
私はエンジェルゴーレムの姿に変化する。
『おおっ』とかいう声が聞こえたけれど、それは気にしない。
しかし、観客がいるとなると……ちょっと派手なことしたくならない?
というわけで________エクスプロージョンです。
「ゴガッ!?」
「キエアッ!!」
人や馬車や地形に影響を与えないように工夫した、超小規模のエクスプロージョンが起こり、グランガチノイド達は吹き飛んだ。
しばらく4匹ともピクピク動いていたけれど、すぐに動かなくなる。
「「おおおおっ!!」」
お金持ち達からの喝采。
「おお、あっというまに…! ありがとうございます!」
青年は私達に頭を下げると、グランガチノイドの死体を回収してから御手が乗る席へと戻っていった。
私達もさっさと馬車に戻る。
「派手にやったなー。おたくらだけで終わりそうだったから、観させてもらったけど」
戻って早々に、一人の男の冒険者に声をかけられた。
ダガーを腰にさしてることから、職業は盗賊かなんかかもしれない。
「ゴーレムがチェスしてたよね? あのゴーレムがチェスしてたよね? なんなの? なんなの!?」
未だにチェスのことを引きずっているのか、さっきの弓使いっぽいお姉さんがまだそんなこと訊いてくる。
「アンタの見間違いじゃないのか?」
「そ、そんなことないもん! みたもん、私、このゴーレムちゃんがこの娘達とチェスしてるとこみたもん!」
男冒険者に見間違いだと言われ、頬を膨らませながら私のことを指差す弓使いのお姉さん。
何を思ったのか、彼女は先程までリンネちゃんが座ってた場所に腰を下ろす。
「ゴーレムちゃん、勝負!」
はあ…。
まあ、私がチェスしてたのは本当のことだし…。
チラリとロモンちゃんの方を見てみる。
コクリと頷いてくれた。
「おいおい、本気か?」
「うん、本気! だって見間違いなんかじゃないもん! その魔物使いの子がゴーレムちゃんを操作しないか見てて! あ、あとその…誰か念話でこの子にチェスすること伝えて」
ハァ、と溜息をつく男の人が一人。
多分、この弓使いの人の仲間なんだろう。
念話に関しては、使える人と使えない人がいるから仕方ないね。
「えっと…悪いけど、一度言い出したら聞かないタイプなんだ。あのゴーレムと遊ばせてやってくれないか?」
「良いですよ」
男の人の申し出に、ロモンちゃんは快くというべき態度で答えた。
男の人はさらに、私に目を合わせてくる。
【まえの オンナと チェスで あそんでくれ 】
簡単な単語を並べてそう念話してきた。
ふむ、普通のゴーレム相手に合っている念話の送り方だ。
【承知しております。手加減はしないと、彼女に伝えて下さい】
「はっ!?」
そう、普通のゴーレムならね。
男の人は目を見開き、驚愕の二文字をすぐさま連想させるよつな顔になった。
その男の人のことはほっておいて、私は目の前の女の人を方を向き、頷く。
小石視点で周りを見てみれば、どうやらこの騒ぎに、馬車に乗っている残りの冒険者8人全員が試合を見物するようだ。
「じゃあ…どうぞ」
私からって事でいいのか、手をこちらに向ける女の人。
私は、白のポーンを動かした。
◆◆◆
「ま…負け…た?」
終わってみれば私の完勝。
うん、やっぱり弱くなんてなかったの。
「魔物使いの子は…魔法使ってないよね?」
「見てたが、全く使ってない」
ふふふのふ。
ちょっとドヤ顔したくなる。
「……おたくのあのゴーレムはなんなんだ?」
盗賊風の男の人がロモンちゃんにそう尋ねた。
「えっと、あの子はアイリスって言います」
「いや、そうじゃなくて…。なんだあの知能は?」
不思議がるのも仕方ないかもしれない。
いやー、初めて会う人はみんなこんな感じの反応してくれる。スカッとするんだ、これが。
「わるい、次、俺がやってみてもいいか?」
「うん? その子と魔物使いの子がいいって言うなら」
弓使いのお姉さんの、念話が使えるらしい男の人が今度は私の前に座った。
ロモンちゃんからはすでにOK貰ってるみたいだ。
【手加減しませんよ?】
【なんでそんなに喋れ……? まあいい。それは勝負しても良いって意味か?】
【もちろんです】
本日4回目のチェスをし始めた。
勝った方は……そう、私。
「………くっ」
「わー、すごい! もうゴーレムじゃないみたい!」
「つ…次は俺だ! 俺が勝ったら、そんなに頭がいい理由を教えてもらうぜ!!」
剣士っぽい男の人が次は相手をしてくれるそうだ。
私は勝った。
今度は騎士であるとみえる男の人。
また、私が勝った。
次に魔法使いだと思われる女の人。
またまた、私が勝った。
回復魔法使いだと思われる大人しそうな女の人。
ちょっと強かったけど、私が勝った。
最後に盗賊の男の人だったんだけど________
【負けました】
「うしっ!」
負けてしまった。
ロモンちゃんとリンネちゃん以外の人に負けてしまった…。悔しい。悔しいけどものすごく時間が潰せたような気がする。
【さあ、アイリスとかいうゴーレム! おたくのその知能の高さの理由を教えてもらおうか!】
そんな念話を盗賊の男の人は送ってくる。
その念話は私以外の人にも聞けるようにしたみたいで、当人と、ロモンちゃんとリンネちゃん以外の冒険者達が皆、興味津々だという感じで身を乗り出し、私の正体を知ろうとしていた。
私は、今日だけで何度目かわからないアイコンタクトを取る。ロモンちゃんからOKが出された。
【そんな約束した覚えありませんが……仕方ないですね】
私はそのまま、人間の姿になる。
########
もーういーくつ寝ぇーるとー
お正ぅー月ぅー
お正月には______投稿があります。
というわけで、次の投稿は1/1です!
休んだりしないのでご安心ください。
「こんなこともあろうかと、剣は準備しといて良かったよ」
リンネちゃんはスペーカウの袋から双剣を取り出しす。
「私達は武器なんてないから、このまま外にいこう」
【はい】
慌てて準備する他の冒険者達のことは後にして、この程度の準備で済む私たち2人と1匹は、魔物が現れたことで停車している馬車から降りた。
私達のことを視認したのか、青年は魔物から目を離さぬままこちらにやってくる。
「えっと、相手はグランガチノイド4匹です! その…乗客の皆様に怪我が無いようにお願いします!」
「えぇ……」
リンネちゃんのため息混じりの声が響く。
グランガチノイド、Dランク。
グランガチという、前足が異常発達したワニのようなEランクの魔物の進化系。
それも、レベルによる進化じゃなくて、環境による進化だっていうのが面白い。
普通のグランガチは普通のワニと基本は同じで、地面を4足歩行に近い感じで歩くんだけど、このグランガチノイドは後脚も強化されていて二足歩行ができる。
その上、人型に近い。
まあ、そんなのは問題じゃないの。
本当の問題は、その守れる側であるお客さん達が、外に出て戦闘の様子を見ようとしてること。
馬車から出てきてこっち見てくんだもん、やりづらい。
【まあ、どちらにせよ私の敵ではないので、さっさと片付けちゃいましょう】
「だねっ! やっちゃえー!」
私はエンジェルゴーレムの姿に変化する。
『おおっ』とかいう声が聞こえたけれど、それは気にしない。
しかし、観客がいるとなると……ちょっと派手なことしたくならない?
というわけで________エクスプロージョンです。
「ゴガッ!?」
「キエアッ!!」
人や馬車や地形に影響を与えないように工夫した、超小規模のエクスプロージョンが起こり、グランガチノイド達は吹き飛んだ。
しばらく4匹ともピクピク動いていたけれど、すぐに動かなくなる。
「「おおおおっ!!」」
お金持ち達からの喝采。
「おお、あっというまに…! ありがとうございます!」
青年は私達に頭を下げると、グランガチノイドの死体を回収してから御手が乗る席へと戻っていった。
私達もさっさと馬車に戻る。
「派手にやったなー。おたくらだけで終わりそうだったから、観させてもらったけど」
戻って早々に、一人の男の冒険者に声をかけられた。
ダガーを腰にさしてることから、職業は盗賊かなんかかもしれない。
「ゴーレムがチェスしてたよね? あのゴーレムがチェスしてたよね? なんなの? なんなの!?」
未だにチェスのことを引きずっているのか、さっきの弓使いっぽいお姉さんがまだそんなこと訊いてくる。
「アンタの見間違いじゃないのか?」
「そ、そんなことないもん! みたもん、私、このゴーレムちゃんがこの娘達とチェスしてるとこみたもん!」
男冒険者に見間違いだと言われ、頬を膨らませながら私のことを指差す弓使いのお姉さん。
何を思ったのか、彼女は先程までリンネちゃんが座ってた場所に腰を下ろす。
「ゴーレムちゃん、勝負!」
はあ…。
まあ、私がチェスしてたのは本当のことだし…。
チラリとロモンちゃんの方を見てみる。
コクリと頷いてくれた。
「おいおい、本気か?」
「うん、本気! だって見間違いなんかじゃないもん! その魔物使いの子がゴーレムちゃんを操作しないか見てて! あ、あとその…誰か念話でこの子にチェスすること伝えて」
ハァ、と溜息をつく男の人が一人。
多分、この弓使いの人の仲間なんだろう。
念話に関しては、使える人と使えない人がいるから仕方ないね。
「えっと…悪いけど、一度言い出したら聞かないタイプなんだ。あのゴーレムと遊ばせてやってくれないか?」
「良いですよ」
男の人の申し出に、ロモンちゃんは快くというべき態度で答えた。
男の人はさらに、私に目を合わせてくる。
【まえの オンナと チェスで あそんでくれ 】
簡単な単語を並べてそう念話してきた。
ふむ、普通のゴーレム相手に合っている念話の送り方だ。
【承知しております。手加減はしないと、彼女に伝えて下さい】
「はっ!?」
そう、普通のゴーレムならね。
男の人は目を見開き、驚愕の二文字をすぐさま連想させるよつな顔になった。
その男の人のことはほっておいて、私は目の前の女の人を方を向き、頷く。
小石視点で周りを見てみれば、どうやらこの騒ぎに、馬車に乗っている残りの冒険者8人全員が試合を見物するようだ。
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うん、やっぱり弱くなんてなかったの。
「魔物使いの子は…魔法使ってないよね?」
「見てたが、全く使ってない」
ふふふのふ。
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「……おたくのあのゴーレムはなんなんだ?」
盗賊風の男の人がロモンちゃんにそう尋ねた。
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「いや、そうじゃなくて…。なんだあの知能は?」
不思議がるのも仕方ないかもしれない。
いやー、初めて会う人はみんなこんな感じの反応してくれる。スカッとするんだ、これが。
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【手加減しませんよ?】
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【もちろんです】
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勝った方は……そう、私。
「………くっ」
「わー、すごい! もうゴーレムじゃないみたい!」
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今度は騎士であるとみえる男の人。
また、私が勝った。
次に魔法使いだと思われる女の人。
またまた、私が勝った。
回復魔法使いだと思われる大人しそうな女の人。
ちょっと強かったけど、私が勝った。
最後に盗賊の男の人だったんだけど________
【負けました】
「うしっ!」
負けてしまった。
ロモンちゃんとリンネちゃん以外の人に負けてしまった…。悔しい。悔しいけどものすごく時間が潰せたような気がする。
【さあ、アイリスとかいうゴーレム! おたくのその知能の高さの理由を教えてもらおうか!】
そんな念話を盗賊の男の人は送ってくる。
その念話は私以外の人にも聞けるようにしたみたいで、当人と、ロモンちゃんとリンネちゃん以外の冒険者達が皆、興味津々だという感じで身を乗り出し、私の正体を知ろうとしていた。
私は、今日だけで何度目かわからないアイコンタクトを取る。ロモンちゃんからOKが出された。
【そんな約束した覚えありませんが……仕方ないですね】
私はそのまま、人間の姿になる。
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