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292話 預言者様の重大な預言でございます……!
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「き、急に少し体が楽に……」
「うちの娘の回復魔法です、預言者様」
「おお、グライド騎士団長殿。お呼びした皆々様が揃ったのだの……言うても皆んなターコイズ家だがの」
楽になったとはいっても空気は重いままだから預言者様とかいう方の足取りは重い。お父さんの補助はまだまだ必要そうね。
「すまんだの、国王様。実はどうやら昨日食べた生牡蠣が当たってしまったようで……今になって症状が……」
「預言者ならどれが当たる牡蠣か当たらない牡蠣か見分けることできないの?」
「国王様、常日頃申しておりますが、いつ預言が降ってくるかアッシ自身にもわかりませんのでな」
たしかにいつも預言ができるなら城に侵入されて魔王軍幹部達が奪われることも予知できたはずだものね。ちょっと期待してたけどなー、万能じゃないのね。
預言者様はお父さんに支えられたまま私たちの方を勢いよく振り向いた。
「それはそうと、アッシと初顔合わせの方も何人かいるだの。アッシはコハーク。この国の預言者だの。以後お見知りおきを」
「私はアイリスと申します。よろしくお願いします」
【オイラはケルですゾ】
「おお、おお、お噂はかねがね。主にその三人から」
おじいさん達はこの預言者様にも娘自慢をしてるのね。国の重役が三人揃って同じ人物の自慢をして城中を回るって想定してたより遥かに混沌としているわ。
「コハーク様は今までに大災害などの預言をし当てている。この方に救われた命は多いんだ」
「そうだの、グライド騎士団長の言う通り。アッシやアッシの先祖達は他国の預言者に比べて主に多くの人の命に関わる預言が得意なんだの」
でも魔王軍幹部の時はそんな預言が世間に広まったりはしてなかった。街一個が半壊させられたりしたんだけど、その程度じゃまだ預言できるほどの大規模じゃないってことかな。まだ私二年も生きてないし、この方の力を目の当たりにできた機会がないのは仕方ないかしら。
「それで、今回はどのような預言を?」
「……もう何人か薄々感じているんじゃないかな? なにが起ころうとしてるか。そもそもどういう内容でここまでノア騎士団殿ら四人を呼ぶよう兵士に頼んだのかわかっとるだの?」
「あ、あの……まさか……」
「そのまさか。ついさっき、ついさっき預言が降ってきなすった。魔王、正しくは魔王種の魔物が復活したとな」
そう……ついになのね。魔王軍幹部達がせっせと集めてた絶望とやらが十分にたまってしまった。預言者様のいう通りなんとなくわかってたの、この重い空気がまずただ事じゃないし、それに合わせて氷漬けの幹部達がいなくなるなんて、流れ的に。
【じゃあこの怠い空気は魔王の魔法か特技かゾ?】
「いや、これは魔法ではなく重圧だの。人も魔物も目の前に自分より強大な存在が出現した時に感じる。それと同じ。魔王種が出現しただけでアッシ達は本能的に恐怖を感じてるんだの」
【ああ、だからオイラ達は比較的楽なんゾね。それぞれがSランク相当の実力があるから、あんまり魔王にビビってないんだゾ】
「そうそう、そういうことだの! 噂通り、めんこいのに賢いのー! ちなみに魔王種が現れるたびにこうなるらしいの」
なるほど、そういうことね。空気が重くなったと思ってたけど、本当は私たちの呼吸が滞ってただけ。強ければ強いほど魔王を怖がらなくなるから呼吸も楽になる。
それにしても預言者様は魔王のことに関して詳しそう。魔物の研究を専門的にしてるおじいさんより魔王のことだけについては知ってるんじゃないかしら、そんな感じがする。
「魔王のことについてよく知ってらっしゃるのですか? コハーク様は」
「そうだの。預言の力を持った人間は魔王という脅威をほぼ確実に預言できるからの。魔王そのものに関する文献はどこの国でも我々預言者が管理することになっておるんだの」
「そうそうアイリスちゃん! だからね、預言者はどこの国にとっても大切な存在なんだよ。今回はコハークがどこの国より真っ先に預言したしこんな重圧もあるから、うちの国の領土内に魔王がいるってことだね……」
「ふふふ、どこの国でも預言者は生まれながらにして宰相の地位は確定され、特別に高給ももらえるんだの」
そ、そうなんだ。となるとやっぱり魔王はどこの国でも脅威だし、どこの国でも対策は立てられてるってことね。魔王種自体が一番最後に現れたのが何百年も前なのに、その対策をずっと続けてるってことは相当警戒が必要みたい。
「ふぅ、ここまでがノア騎士団長達とグライド騎士団長が来る前に話してたことだよ」
「ジーゼフはアッシの預言の時にその場に居たでな」
「ああ、通りでお父さん、ずっと険しい顔を……」
「と、言うわけで。これから何をするべきかを伝えるよ。このために魔王軍幹部討伐を任せっきりにしてたターコイズ家のみんなを揃えたんだ」
国王様から直々のお願い。……国王様から特別に頼られるなんて、正直すごいと思うの。去年はこんなこと予想もつかなかったわ。相手が魔王というこの世界最大の脅威だけれどできる限りの事はやろう。
「まず一つ目のお願いだよ。魔王が復活しちゃった以上、魔王軍幹部の復活も免れないと思うんだ。今まで頑張って封印してきた皆んなには悪いけど、これは完全に僕の落ち度だよ。本当にごめんなさい。だからもし遭遇したら今度はちゃんと倒して欲しい。ああ……まさかオーニキスが裏切るなんて想像もしてなかった」
「そんな、国王様だけが悪いわけではないですよ! 私達だってあの人のことを信頼しきっていました、誰も気がつけなかったんです!」
「アッシも預言すらできなかった。不甲斐ない」
【……正直、ここにいる誰も悪くないと思うゾ】
「ん? ケル君、それはどういうことかな?」
【ゾ、ノア達には話したオイラの持論、みんなに話すゾ】
ケル君はここに来る前に言った、オーニキスさんはよく考えたら最初から怪しかったという内容を再び話し始めた。
タイミングはあったのに魔王軍幹部への尋問を中々行なおうとせず処刑もしなかった謎。
騎士団長の娘だから使いやすいとはいえ年端もいかず当時実力含めAランク未満だった私たちを積極的に最前線に送り出すという自殺行為をさせた謎。
頭一つの実力でのし上がった宰相なのにいつも指示が遅かった謎。
魔王軍幹部の対策方法に関する文献などを呼んでいたのに対策が甘かった謎。
そしてそれら全て私たちが疑問に思わなかった謎。
「……そうだよ、ケル君。まったくもってその通りじゃないか。おかしいことだらけだ……!」
「そうですの、なぜアッシ達はあの男を信用しきっていたんだの……?」
「まず姫より年下の女の子達を対策の要として雇うなんて僕は本来なら絶対許さないよ。それも、わざわざこの国でも有数の地位が高い家の娘達を。今回は魔王軍幹部と実際対峙した人たちみんなを呼んだから来てもらってるけど……ん?」
国王様が何かに気がついたみたい。幼い顔をワナワナ震わせて、相当悔しがっているように見える。
「そう、そうだよね。うん、なんなら魔王軍幹部が現れるなんて国でも最大の脅威なんだからこの城の実力者全員総出で討伐しに行ってもおかしくないよ! なんなら外部からSランクの冒険者できるだけ雇うのに!」
「それにこの城に勤めているSランク相当の者はなにもグライド殿、ノア殿、ジーゼフだけじゃないんだの。槍の騎士団長ランスロット、千里眼の弓兵タイガーアイ、大魔導士長ペリドットがおる」
え、そんなにSランク相当の人がいたの? みんなやっぱり本か何かで名前は聞いたことあるし、名だたる強豪だけれど、まさかお城に勤めてるなんて。ならなんで私達だけに任せたのかしら。やっぱりオーニキスさんの策略ってことかしら。
「だよねだよね! いや、それよりもっと簡単な話があるよ? ちょっと過労になっちゃうかも知らないけどジーゼフとクリスタルブラックドラゴンのクロ君に最初から全員任せれば被害も労力もまったくなかったんだ。 下手したらジーゼフは勇者なんかより強いからね」
「……そういえばワシの力が危険だからと戦うことを一切禁止し、故郷で七年も長い間休ませたのはなぜだったのかの、国王様」
「え、ジーゼフの力を使っちゃダメだって言った理由? それは強力すぎるから謀反を起こしかねないって、オーニキスが……あー……」
まだお願い一つしか聞いてないし、それも内容はまだあまり詳しくはないんだけど、放置気味に仕方ない。ケル君の言ったことが相当ショックだったみたい。内容が内容だし……。それにしても人って話術だけでここまで一人の人間を疑わないものなのかしら?
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「うちの娘の回復魔法です、預言者様」
「おお、グライド騎士団長殿。お呼びした皆々様が揃ったのだの……言うても皆んなターコイズ家だがの」
楽になったとはいっても空気は重いままだから預言者様とかいう方の足取りは重い。お父さんの補助はまだまだ必要そうね。
「すまんだの、国王様。実はどうやら昨日食べた生牡蠣が当たってしまったようで……今になって症状が……」
「預言者ならどれが当たる牡蠣か当たらない牡蠣か見分けることできないの?」
「国王様、常日頃申しておりますが、いつ預言が降ってくるかアッシ自身にもわかりませんのでな」
たしかにいつも預言ができるなら城に侵入されて魔王軍幹部達が奪われることも予知できたはずだものね。ちょっと期待してたけどなー、万能じゃないのね。
預言者様はお父さんに支えられたまま私たちの方を勢いよく振り向いた。
「それはそうと、アッシと初顔合わせの方も何人かいるだの。アッシはコハーク。この国の預言者だの。以後お見知りおきを」
「私はアイリスと申します。よろしくお願いします」
【オイラはケルですゾ】
「おお、おお、お噂はかねがね。主にその三人から」
おじいさん達はこの預言者様にも娘自慢をしてるのね。国の重役が三人揃って同じ人物の自慢をして城中を回るって想定してたより遥かに混沌としているわ。
「コハーク様は今までに大災害などの預言をし当てている。この方に救われた命は多いんだ」
「そうだの、グライド騎士団長の言う通り。アッシやアッシの先祖達は他国の預言者に比べて主に多くの人の命に関わる預言が得意なんだの」
でも魔王軍幹部の時はそんな預言が世間に広まったりはしてなかった。街一個が半壊させられたりしたんだけど、その程度じゃまだ預言できるほどの大規模じゃないってことかな。まだ私二年も生きてないし、この方の力を目の当たりにできた機会がないのは仕方ないかしら。
「それで、今回はどのような預言を?」
「……もう何人か薄々感じているんじゃないかな? なにが起ころうとしてるか。そもそもどういう内容でここまでノア騎士団殿ら四人を呼ぶよう兵士に頼んだのかわかっとるだの?」
「あ、あの……まさか……」
「そのまさか。ついさっき、ついさっき預言が降ってきなすった。魔王、正しくは魔王種の魔物が復活したとな」
そう……ついになのね。魔王軍幹部達がせっせと集めてた絶望とやらが十分にたまってしまった。預言者様のいう通りなんとなくわかってたの、この重い空気がまずただ事じゃないし、それに合わせて氷漬けの幹部達がいなくなるなんて、流れ的に。
【じゃあこの怠い空気は魔王の魔法か特技かゾ?】
「いや、これは魔法ではなく重圧だの。人も魔物も目の前に自分より強大な存在が出現した時に感じる。それと同じ。魔王種が出現しただけでアッシ達は本能的に恐怖を感じてるんだの」
【ああ、だからオイラ達は比較的楽なんゾね。それぞれがSランク相当の実力があるから、あんまり魔王にビビってないんだゾ】
「そうそう、そういうことだの! 噂通り、めんこいのに賢いのー! ちなみに魔王種が現れるたびにこうなるらしいの」
なるほど、そういうことね。空気が重くなったと思ってたけど、本当は私たちの呼吸が滞ってただけ。強ければ強いほど魔王を怖がらなくなるから呼吸も楽になる。
それにしても預言者様は魔王のことに関して詳しそう。魔物の研究を専門的にしてるおじいさんより魔王のことだけについては知ってるんじゃないかしら、そんな感じがする。
「魔王のことについてよく知ってらっしゃるのですか? コハーク様は」
「そうだの。預言の力を持った人間は魔王という脅威をほぼ確実に預言できるからの。魔王そのものに関する文献はどこの国でも我々預言者が管理することになっておるんだの」
「そうそうアイリスちゃん! だからね、預言者はどこの国にとっても大切な存在なんだよ。今回はコハークがどこの国より真っ先に預言したしこんな重圧もあるから、うちの国の領土内に魔王がいるってことだね……」
「ふふふ、どこの国でも預言者は生まれながらにして宰相の地位は確定され、特別に高給ももらえるんだの」
そ、そうなんだ。となるとやっぱり魔王はどこの国でも脅威だし、どこの国でも対策は立てられてるってことね。魔王種自体が一番最後に現れたのが何百年も前なのに、その対策をずっと続けてるってことは相当警戒が必要みたい。
「ふぅ、ここまでがノア騎士団長達とグライド騎士団長が来る前に話してたことだよ」
「ジーゼフはアッシの預言の時にその場に居たでな」
「ああ、通りでお父さん、ずっと険しい顔を……」
「と、言うわけで。これから何をするべきかを伝えるよ。このために魔王軍幹部討伐を任せっきりにしてたターコイズ家のみんなを揃えたんだ」
国王様から直々のお願い。……国王様から特別に頼られるなんて、正直すごいと思うの。去年はこんなこと予想もつかなかったわ。相手が魔王というこの世界最大の脅威だけれどできる限りの事はやろう。
「まず一つ目のお願いだよ。魔王が復活しちゃった以上、魔王軍幹部の復活も免れないと思うんだ。今まで頑張って封印してきた皆んなには悪いけど、これは完全に僕の落ち度だよ。本当にごめんなさい。だからもし遭遇したら今度はちゃんと倒して欲しい。ああ……まさかオーニキスが裏切るなんて想像もしてなかった」
「そんな、国王様だけが悪いわけではないですよ! 私達だってあの人のことを信頼しきっていました、誰も気がつけなかったんです!」
「アッシも預言すらできなかった。不甲斐ない」
【……正直、ここにいる誰も悪くないと思うゾ】
「ん? ケル君、それはどういうことかな?」
【ゾ、ノア達には話したオイラの持論、みんなに話すゾ】
ケル君はここに来る前に言った、オーニキスさんはよく考えたら最初から怪しかったという内容を再び話し始めた。
タイミングはあったのに魔王軍幹部への尋問を中々行なおうとせず処刑もしなかった謎。
騎士団長の娘だから使いやすいとはいえ年端もいかず当時実力含めAランク未満だった私たちを積極的に最前線に送り出すという自殺行為をさせた謎。
頭一つの実力でのし上がった宰相なのにいつも指示が遅かった謎。
魔王軍幹部の対策方法に関する文献などを呼んでいたのに対策が甘かった謎。
そしてそれら全て私たちが疑問に思わなかった謎。
「……そうだよ、ケル君。まったくもってその通りじゃないか。おかしいことだらけだ……!」
「そうですの、なぜアッシ達はあの男を信用しきっていたんだの……?」
「まず姫より年下の女の子達を対策の要として雇うなんて僕は本来なら絶対許さないよ。それも、わざわざこの国でも有数の地位が高い家の娘達を。今回は魔王軍幹部と実際対峙した人たちみんなを呼んだから来てもらってるけど……ん?」
国王様が何かに気がついたみたい。幼い顔をワナワナ震わせて、相当悔しがっているように見える。
「そう、そうだよね。うん、なんなら魔王軍幹部が現れるなんて国でも最大の脅威なんだからこの城の実力者全員総出で討伐しに行ってもおかしくないよ! なんなら外部からSランクの冒険者できるだけ雇うのに!」
「それにこの城に勤めているSランク相当の者はなにもグライド殿、ノア殿、ジーゼフだけじゃないんだの。槍の騎士団長ランスロット、千里眼の弓兵タイガーアイ、大魔導士長ペリドットがおる」
え、そんなにSランク相当の人がいたの? みんなやっぱり本か何かで名前は聞いたことあるし、名だたる強豪だけれど、まさかお城に勤めてるなんて。ならなんで私達だけに任せたのかしら。やっぱりオーニキスさんの策略ってことかしら。
「だよねだよね! いや、それよりもっと簡単な話があるよ? ちょっと過労になっちゃうかも知らないけどジーゼフとクリスタルブラックドラゴンのクロ君に最初から全員任せれば被害も労力もまったくなかったんだ。 下手したらジーゼフは勇者なんかより強いからね」
「……そういえばワシの力が危険だからと戦うことを一切禁止し、故郷で七年も長い間休ませたのはなぜだったのかの、国王様」
「え、ジーゼフの力を使っちゃダメだって言った理由? それは強力すぎるから謀反を起こしかねないって、オーニキスが……あー……」
まだお願い一つしか聞いてないし、それも内容はまだあまり詳しくはないんだけど、放置気味に仕方ない。ケル君の言ったことが相当ショックだったみたい。内容が内容だし……。それにしても人って話術だけでここまで一人の人間を疑わないものなのかしら?
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