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271話 アンデットのダンジョンでございます! 2

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「ふう」


 やはりCランクのアンデットが混じったところであんまり意味はないわね。相変わらずお金になりそうなものは落としてないし。たしかに持っていた武器などは残っていることがあるけど、そんなの集めたところで二束三文だし、こんなこと言ったら失礼だけどあんまり触りたくない。


「ね、ね、アイリスちゃん」
「何ですかリンネちゃん」
「もし魔物を倒すのに飽きたら次はぼくにやらせてよ」
「おや、剣で斬るのに抵抗があったのでは?」
「魔法なら大丈夫。それにあれだけ大量の魔物、DランクやCランクだったとしても相当な経験値になるよ、今それに気がついたんだ」


 たしかに先に進むために惰性で倒していたけれどリンネちゃんの話通り、経験値を稼ぐにはかなりいいかもしれない。となるとケル君はもうだいぶ稼げたんじゃないかしら。……最近は経験の伸びも少なかったし、ここでしっかりと貯めておけばガーベラさんがSランクになるまでに私もあと2段階は進化できるかな。


「いいこと聞きました。では魔力が尽きるまで私がやりますね」
「え、アイリスちゃん魔力減らないじゃん! ずるいよ!」
「代わり番こにしようよ」
「バレちゃいましたか。ではそうしましょうか」


 独り占めしようと思ったけどそうはいかなかったか。むすっとした表情を浮かべるうちの双子が今日も可愛い。とりあえず三回連続で殲滅きたら次に代わるといった形にすることにした。私は後2回戦える。
 次の団体は前と同様にDランク複数体とCランク1体だった。普通に魔法を撃って倒してしまう。その最中、ロモンちゃんがケル君に質問をしていた。


「そういえばケル、さっきの話し合いに参加しなかったけどもういいの?」
【オイラは強い相手と戦いたいんだゾ。もし隠し部屋が見つかったらその時に代わってほしいゾ】
「そうだね、わかった」


 三度目のアンデットの大群はCランクが2体に増えていたけど特に問題なく倒した。これで私の番は終わり。次はリンネちゃん。
 リンネちゃんは魔法を使って倒すと最初は言っていたけれど、二回目からは光属性の剣撃を飛ばした方が練習になると考えたのかそちらを実行していた。ダンジョンで生まれたとはいえ定義上では仮にも人だったものがスパスパと斬られ、その切断面から浄化されていくのは見ていてとても複雑な気持ちになる。


「ふむむ……やっぱり魔法みたいに一気にズバッとはいかないなぁ。改良の余地があるなぁ」
「もっと広範囲にしたいってこと?」
「うん、そうしたら最上級魔法撃つより魔力の消費しないで済むし」


 2、3回斬撃を放っただけで十数体の敵を倒せるのだから現状で十分だとは思うけど、リンネちゃんもケル君と同じでとことん強さを追求するわね。……そういえば私も最初は結構ガツガツしてたっけ。なんであんまり強さを求めるようにならなくなったのかな。彼氏ができたからかしらん。それともケル君のような優秀な弟分が居るから? でもそろそろあの頃の感覚を取り戻した方がいいよね。


「ぼくは次で最後だね。このダンジョン、どこまで敵が出てくるのかな」
「わからないね。経験値目的だしお金にはならないけど長ければ長いほどいいなぁ」
【しかもダンジョンは長ければ長いほど最後のボスも強いんだゾ。その上モタモタしてると魔物が再出現し始めたりする事例もあったらしいゾ】
「じゃあ逆にそれを狙っていけばいいんじゃない?」
「そうですね!」


 ダンジョンをわざとゆっくり進む……これはお宝目的じゃまず思い浮かばないわよね。お金やアイテムが充実してるからこそ出る提案だと思うわ。でも今の私たちには必要なこと。ガーベラさんのダンジョン探索が終わってもなお私たちはまだ続けてるくらいがちょうどいいんじゃないかしら。
 リンネちゃんの3回目はCランクが3体だった。今度はロモンちゃんの番。


「私は別に技術とか気にしてないし、普通に魔法で一掃するよ」
「あれ、魔人融体したら仲魔と魔物使いの両方に経験値が入るんだよね? そうすればいいんじゃないかな」
「……はっ!!」
「最近、己の鍛錬しすぎて半分忘れてたでしょ」
「は、恥ずかしい……穴があったら入りたいよ」
【なるほゾ……あ、あんなところにちょうどいい穴があるゾ】


 ケル君が天井を見上げながらそう言った。へんな古代風の壁画のど真ん中に大きな穴が空いている。岩を登るような技術がないといけなさそうだけど、この天井の穴を登った先に何かあるんじゃないかしら。


「ほらロモン、穴だよ。多分隠し部屋だけど」
「あ、あんなところ登れないよ! 普通に空飛ぼう。じゃあアイリスちゃんとケル、お願いね!」
「了解しました」


 空を飛べるって便利だけど、もしその手段がなかったらどうやって登ったのかしらあの穴。普通の冒険者じゃ無理そうね。……まあガーベラさんなら槍の技を地面に放った勢いで飛ぶとか、お父さんなら空中を高速で蹴り上がるとかそんなことやりそうだけど。つまり上級者向けってことなのかな。
 私はゴーレムになって緑色の光のような翼を広げ右手にロモンちゃん、左手にリンネちゃんを乗せて飛んでみた。ケル君は自分で空飛んでる。すぐに足をつけるような平坦な場所が見えた。そこに着地して人間に戻る。


「ワクワクするね! 前回よりとってもいいものが手に入れられそう!」
「あの食べ放題の植木鉢より良いものですか」
【きっと強い敵も出てくるゾ。手出し無用なんだゾ、オイラがやるゾ! やるゾ!!】
「気合いバッチリだね!」

 
 私たちはそのまま真っ直ぐ進んだ。もうゴールにたどり着いてしまったのではないかと思うくらい広い部屋に出る。あのダンジョンの天井にこんなものがあるなんて、ほんと、ケル君が気がつかなきゃわからなかったわね。前回もケル君が気づいてたし……きっと強者と戦いたいっていう願望が引き寄せてるのかも。まあ鼻がいいだけかもしれないけど。
 この部屋の奥には人が一人佇んでる。あれも多分アンデットなんでしょう。重たそうな鎧を装着し、手には戦斧が握られている。俊敏さはなさそうだけどパワータイプって感じかな。魔物図鑑には載ってなかったはず。


「ロモン、あの魔物何かわかる?」
「んー、たぶんアンデットナイト系かなぁ……Aランクの魔物だよ」
「じゃあ鎧かあの斧がお宝かな」
「そうかもね」


 鎧も斧も誰もつけないからいらないけど、売れば大金になりそうよね。ケル君はもう待てないとばかりに私たちより一歩前に出ている。


【……Aランクなら相手として不足なしなんだゾ。最初から全力でいかせてもらうんだゾ】
「ケル、頑張ってね!」
「危なくなったらすぐに助けますからね」
「無茶だけはしないでね!」
【わかってるゾ!】


 ケル君は自分に補助魔法をかけ、さらに魔流を纏うことにより補助魔法の重ねがけまでした。属性をまとってで戦うのではなく今回は身体能力でねじ伏せるつもりのようだ。
 修行の成果を私たちに見せつけるようにケル君は斧を持ったアンデットとの距離を一瞬で縮めた。そこで一気に幼体化を解除し、その勢いで体当たりをする。相手は吹っ飛ばされた。


【ってて……硬いんだゾ。物理で挑むより魔法の方が早そうなんだゾ……っと!】


 砂煙の奥から放たれる斧による振り下ろしをケル君は難なく回避した。特訓ですごいわ、ケル君と敵のランク差が逆に見えるもの。


【リスシャイラム!】


 すぐに立ち直したケル君の速さにより、間近で放たれる光属性最大の魔法はアンデットの兜にクリーンヒットした。このままなら楽に勝てちゃいそうね。


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