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252話 SSランクの仲魔でございます!

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「ほっほっほっほっほ」
「お母さんから少しだけ聞いたことはあったけど、実際見ると迫力が違うなぁ、SSランク」


 迫力というか、なんというか。
 極至種だったり超越種だったりするからかもしれないけど、私やケル君にAランクとの劣等的差は全く感じられない。むしろSランクまでの壁が薄いとまで感じてきている。これらはロモンちゃんの手腕もあってこそなんだろうけれど……SSランクは全然違う。一矢報いるのでさえ大変そうな、そんな格の差を感じる。あとワンランク上がればまた違うのかもしれないけど。


「はっ……ははは、はっはっはっは……」
【ジーゼフ、なんでこいつはクロを見て笑ってるんだ?】
【顔が引きつっとるじゃろ。笑うしかない状況って奴だ】
【なるほどなー】


 あれだけ偉そうだった魔王軍幹部であるジンという名前のイフリートサラマンドラ半魔半人態は、少しずつ後退りをしている。さっきSSランクの魔物ですら倒せるほどの火力を出せるっておじいさんが言ってたのに……倒せる火力を出せるのと、実際倒せるのは別ってことかしらね。たしかに魔法を出す前に倒されたりしたら意味ないものね。


「ははは、はははは、は……ふ、ふざ、ふざけるな! 二刀流の剣士かケルベロスを連れた魔物使いが来るという話だったじゃないか! こんな、こんな……自身も魔物も化け物な魔物使いが来るなんて聞いてないぞ!? 貴様らが空を飛べることも!」
「あれ、お母さんとお父さんのこと知ってたの?」
「誰から聞いたんじゃ? その話」


 リンネちゃんとおじいさんがそう指摘すると、ジンは慌てて口を塞いだ。これだけ狡猾な罠を仕掛ける敵だもの、本来ならこんなポロリと情報を出すことなんてなさそうだけどプレッシャーにやられたみたいね。


「これはこれは、どうやら凍結させる前にワシらで個人的に尋問をする必要がありそうじゃの」
「っ……! クソがぁぁぁあ!」


 ジンは叫んだ。全身は光に包まれて行き、あっという間に溶岩が体に投影されたような柄のオオトカゲになる。柄というか、実際に節々から溶岩が垂れ出てるんだけど。これがイフリートサラマンドラね……見た目はかなり強そうだし、実際強いんだと思う。
 でも完全に怯えてるから今まで戦ってきた魔王軍幹部の中でも一番威厳を感じない。


【ははは、こんなはずでは……! こんなはずでは……!】
「まあ、大方、国の英雄を呼び寄せ返り討ちにし、魔王に捧げる絶望とやらを深めるつもりでいたんじゃろうが……」
【……っ!】
「図星じゃな。どっちみち魔物使いの方はワシの可愛い実娘じゃし、両刀使いの方は心底信頼できる義息じゃ。それに可愛い可愛い自慢の愛孫であるこの子達もつくとなると、まず倒すことは無理じゃったろうな。つまり、どっちみちお前さんの計算違いなんじゃよ」
【は…はは……くっ……】


 可愛さに強さは関係ないと思うのですが……。言いたいことはわかるし、私もおじいさんと同じ意見だ。国中の人達を絶望させられるような結果にはならなかったと思う。
 イフリートサラマンドラは後退りをやめた。いや、やめたというより本格的に逃げる姿勢になった。私達に背を向け、思い切り地面を蹴飛ばす。一瞬でかなりの距離を離れられてしまう。


【おぼえてろぉぉぉぉぉぉ!】
【逃げてるけども?】
【仕方ないの、やれ】
【了解した】


 ブラッククリスタルドラゴンのクロ……敬意を込めてクロさんと呼ばせてもらおう。クロさんは口を開けて魔法陣を展開した。土色と水色が混合したそれから現れるのは槍状の水晶。
 形成された水晶はまっすぐイフリートサラマンドラのもとに飛んで行く。


【ぐがあああああ!】
【おー、当たったな】
【どこに当たった? もう歳じゃから見えんな……】
「尻尾の根元あたりにグッサリ刺さってるよ、おじいちゃん」
「なに、尻尾? こりゃあかん」
「サラマンドラってトカゲ系の魔物だっけ。ということは……」


 私も追って魔物視点で確認する。ここからSランクの魔物の速さでいけそうなくらい離れた地点で、尻尾に深々とさっきの水晶が刺さってるイフリートサラマンドラが確認できる。でも、私が確認できた10秒後に身をよじらせて自分の尻尾を切り捨ててしまった。なるほど、トカゲの尻尾切りね。

 
「どうしよ、逃げちゃうよおじいちゃん!」
「そうなの……? とりあえず探知の範囲内には入るようにしなきゃ……」
「ふむ、リンネとロモン、そんな心配する必要はないぞ」
「「え?」」


 おじいさんはクリスタルを吐いてから大人しくしてるクロさんに近づくと、尻尾を手に取った。


【魔人融体じゃ】
【あの程度の魔物に使うの?】
【たしかにワシらの敵ではないが、逃すのはマズイ】
【了解した】


 おじいさんほどの使い手の魔人融体……どうなるのかしら。とんでもないことになるのだけはわかるけど。ここら一帯を破壊し尽くすとか?


「あ、身体支えなきゃ!」
「リンネ、その必要はないぞ」
「あれ?」


 魔人融体したはずのおじいさんの身体の方が喋ってる。魔人融体は使った術者が自分の仲魔に精神を送り込む技だから、その身体が立って喋るなんてことはありえない。実は融合してなかったとかならわかるけど……でも、今のおじいさんには魔人融体を使った時の特徴が現れているしそれはない。


「どうなってるの?」
「詳しいことは後で教えてあげよう。まずはイフリートサラマンドラを捉える方が先決じゃ。クロ、いけるな?」
【どの程度で行く?】
「一点集中じゃ。殺さん程度でな」
【難しいことを言う。しかしそれしかないんだろう】


 さっきまで念話でクロさんに話してたはずなのに、今度は普通に喋って指示をしている。これは魔人融体した時の特徴でもあるけど、口が動いてるのはおじいさんの本体の方だ。
 おじいさんがクロさんの尻尾から手を離すと、クロさんは宙に飛び上がった。


【リスドゴドラム】


 クロさんは空中で土属性の最上級魔法を唱える。クロさんを中心に、先ほどと同じような水色と土色が混合した魔法陣が展開された。どうやらクリスタルが魔法として存在しているのではなく、土魔法をクリスタルに変えてるみたい。
 発現された魔法は、やっぱり見事に全部クリスタルで、次々と魔法陣からミサイルのように発射された。


【……方角ってこっちであってたっけか?】
「あってるぞ。ワシの探知が間違ったことがあるか」
【ないない。じゃあ全部撃ち尽くしちゃうね】 
「いや、半分じゃ」
【了解した】


 イフリートサラマンドラはすでにかなり離れてるはずなんだけど、どうやらおじいさんには探知ができてるみたい。明らかに大探知の範囲を超えている。そしてその探知で捉えた先をクリスタルで砲撃するんだ。シンプルだけどなんとも恐ろしい。その芸当は普通じゃできないから。
 うーん……クロさんもおじいさんも謎だらけだけど、どちらかというとおじいさんがさっきから普通の魔物使い離れしたことばかりをしている。どうやってやってるかわかんないのも沢山あるし……。


「まだまだ目指す先があるね……!」
「ん、よかったね、ロモン」
「うん、お姉ちゃん」


 ロモンちゃんが目をキラキラ輝かせながらそう言った。
 こうしてロモンちゃんのやる気を出すのも、おじいさんの計算のうちだったのかもしれない。私がいうのもなんだけど、人間離れしてるわ……。
 
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