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第46話 街へ行く
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城の前に馬車が用意されていた。茶色の毛並みの馬が一頭。その手綱を握る御者の男性が一名。彼は使用人のひとりで、ダルテという名の中年の男性だ。
そこにイーシャともうひとりの侍女が乗ることになっていたはずだった。
御者の後ろに屋根のついた部屋があり、ふたり座れるようになっている。足元に荷物を置ける空間もあり、中はゆったりしている。
リアナは馬車の座席にイーシャと横並びに座り、まだ見ぬ街に心躍らせた。リアナが乗るので、もうひとりの侍女は城にとどまることになった。
身分の高い仕立てのいい服を着ると目立ってしまうため、侍女の服を借りた。これでどこからどう見ても普通の娘に見えるだろう。
「ハッ!」
ダルテが手綱を弾ませ馬を走らせる。馬は迷うことなく一目散に道を進んで行く。途中、小石などで多少ガタガタと揺れることはあったが、おおむね順長に街へと着いた。獣も現れなかった。
ミラファ家が統治している町ではない。もっと店の多い大きな街まで遠出してきた。ここはミラファ家の管轄ではない。
日頃の食料品は、馴染みの業者が運んで来るので、買い出しする必要はない。だが、日常に必要な小物や消耗品、使用人たちの使うものなどは、こうして時折買いに出ていた。
リアナは身分上、このような場所に気軽に来てはいけないのだが、ずっと城から出られないのはやはり退屈だった。
街の名前はデルシャン。昼の時間はのんびりと平和な街だが、夜になるとそうでもない。闇夜にまぎれて強盗や放火や暴行などが横行することもある。だが、それはどこの街でも同じだ。物騒な街のほうが比較的多く、現代日本の感覚の持ち主であるリアナはそこをいまいち理解しきれていないところがある。女が庶民の街でひとりで暮らすのは常に危険と紙一重であり、だからこそデュレンはどこにも行かずに城にいろと告げるのだ。
馬車から降りて街を歩く。御者のダルテは馬車で待機だ。ふたりについてきてもいいのだが、不在のうちに馬車が盗まれることもあるので、見張りを兼ねている。
昼は子供たちが道端で遊びまわっていたり、多くの店が開いていることもあり、比較的安全だ。余計な寄り道はせず、必要なものだけを買い揃えていく。
リアナはイーシャと共に街並みを眺めながら雑貨店に寄り、衣料店に寄った。活気ある街は退屈だったリアナには刺激的で、とても楽しい。昼間は酒場も開いていないので、物騒な輩はどこかに身を潜めているのだろう。
荷物もふたりで分けて持つ。無理を言ってついてきたので、荷物を持つのは当たり前だと思っていたのだが、初めはイーシャがダメですと嫌がっていた。なにがなんでも半分持つと奪い取ったような形だ。
「では、そろそろ戻りましょう」
買い物も終わり、イーシャがそう告げた時、リアナの頬すれすれの位置にナイフが飛んできた。
そこにイーシャともうひとりの侍女が乗ることになっていたはずだった。
御者の後ろに屋根のついた部屋があり、ふたり座れるようになっている。足元に荷物を置ける空間もあり、中はゆったりしている。
リアナは馬車の座席にイーシャと横並びに座り、まだ見ぬ街に心躍らせた。リアナが乗るので、もうひとりの侍女は城にとどまることになった。
身分の高い仕立てのいい服を着ると目立ってしまうため、侍女の服を借りた。これでどこからどう見ても普通の娘に見えるだろう。
「ハッ!」
ダルテが手綱を弾ませ馬を走らせる。馬は迷うことなく一目散に道を進んで行く。途中、小石などで多少ガタガタと揺れることはあったが、おおむね順長に街へと着いた。獣も現れなかった。
ミラファ家が統治している町ではない。もっと店の多い大きな街まで遠出してきた。ここはミラファ家の管轄ではない。
日頃の食料品は、馴染みの業者が運んで来るので、買い出しする必要はない。だが、日常に必要な小物や消耗品、使用人たちの使うものなどは、こうして時折買いに出ていた。
リアナは身分上、このような場所に気軽に来てはいけないのだが、ずっと城から出られないのはやはり退屈だった。
街の名前はデルシャン。昼の時間はのんびりと平和な街だが、夜になるとそうでもない。闇夜にまぎれて強盗や放火や暴行などが横行することもある。だが、それはどこの街でも同じだ。物騒な街のほうが比較的多く、現代日本の感覚の持ち主であるリアナはそこをいまいち理解しきれていないところがある。女が庶民の街でひとりで暮らすのは常に危険と紙一重であり、だからこそデュレンはどこにも行かずに城にいろと告げるのだ。
馬車から降りて街を歩く。御者のダルテは馬車で待機だ。ふたりについてきてもいいのだが、不在のうちに馬車が盗まれることもあるので、見張りを兼ねている。
昼は子供たちが道端で遊びまわっていたり、多くの店が開いていることもあり、比較的安全だ。余計な寄り道はせず、必要なものだけを買い揃えていく。
リアナはイーシャと共に街並みを眺めながら雑貨店に寄り、衣料店に寄った。活気ある街は退屈だったリアナには刺激的で、とても楽しい。昼間は酒場も開いていないので、物騒な輩はどこかに身を潜めているのだろう。
荷物もふたりで分けて持つ。無理を言ってついてきたので、荷物を持つのは当たり前だと思っていたのだが、初めはイーシャがダメですと嫌がっていた。なにがなんでも半分持つと奪い取ったような形だ。
「では、そろそろ戻りましょう」
買い物も終わり、イーシャがそう告げた時、リアナの頬すれすれの位置にナイフが飛んできた。
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