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第41話 会話

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 手の平にデュレンの体温が伝わってくる。
 気まずくなったり息が詰まったりするようなこともなく、不思議とリアナも落ち着いてそこに座っていられた。
 デュレンは黙ってまぶたを閉じる。眠っているわけではない。ただ目を閉じてじっとしている。
「訊いてもいい?」
「何を」
「あなたはどうやって狩り人になったの?」
 デュレンが怪訝そうな顔で目を開けた。
「なぜ、そんなことを?」
「ロシアンナが、私が訊けば話してくれるかもって言っていたから」
 デュレンがふっと笑った。
「そのことはまだ誰にも話してはいない。おまえに話すつもりもない」
「……そうよね」
 やはり皆リアナを買いかぶりすぎなのだ。まだ出会ったばかりのリアナにそこまで心を開くはずがなかった。
「あなたが話してくれないから、いろんな人からいろんな話を聞いた。狩り人になったきっかけや、五年間どこかへ行ってしまったこと、その間、城を管理してくれていた叔父さんとは仲が悪いこと、帰ってきたあなたが追い出してしまったこと」
「……余計なことをベラベラ喋る奴がいるんだな」
 デュレンは怒っているわけではなかったが、呆れたような声でつぶやく。
「私が何も知らないままでいるのが嫌だったのよ」
 デュレンが再びまぶたを閉ざす。
「今日は青狼を仕留めたんだ。ただ相打ちになった。仕留めた証拠の尻尾を持ち帰ることはできなかった。早くその場から離れないと他の獣が集まってきて喰われてしまうからな。満身創痍の俺にはもう戦う力は残っていなかった。教会の司祭の治癒魔法はどんな怪我も治すことはできるが、死んだ者を生き返らせる力はない。死んだら終わりだ」
 ぞっと背筋が寒くなるような話を、デュレンは平常心で話していた。
「でも俺はまだ死ぬわけにはいかない。やるべきことはまだたくさん残っている。獣を狩った報酬なんてどうだっていい。俺は賞金のために狩っているわけではないから。ただ、この世からすべての獣を消し去りたいだけだ。でも実際は、狩っても狩ってもきりがない。奴らはまた現れ、数を増やし、根絶やしにすることができない」
「この世に狩り人はどのぐらいいるの?」
「それは俺にもわからない。ほとんどの狩り人は身を潜め、正体を明らかにしない。俺を狩り人だと知っているのもこの城の連中ぐらいだし、国王もそのことは知らないだろう。隠してはいないから風の便りで広まってる可能性もあるが。だが、俺の狩り場に他の狩り人が現れることは滅多にない。偶然の出会いから協力して狩ることもあるが、中には手柄のために出し抜こうとする奴もいるし裏切る奴もいる。狩り人になる理由は皆違うから、同じ狩り人だからという理由で安易に仲良くなるようなこともない。中には人を狩る狩り人もいるからな」
 デュレンはそこまで言うと、疲れたように吐息した。
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