淫らな伯爵と灼熱の蜜夜

彩森ゆいか

文字の大きさ
上 下
34 / 49

第33話 デュレンの過去

しおりを挟む
 ハリスの話はさらに続く。
「デュレン様がまだ十歳の頃、ご両親が隣町まで馬車で出かけたけど、そのまま帰って来なかったんだ。後からわかったんだけど、獣に襲われて馬車は粉々、馬も死んでたって。デュレン様のご両親も無残な姿になって、調べてみるとどう考えても獣の仕業だったって」
「どうしてそんなに詳しいの? デュレンが十歳の頃はまだあなた三歳なのに」
「ロシアンナが教えてくれたんだよ。ここで働く使用人を取り仕切ってるおばちゃんが」
「なるほど」
 リアナは、挨拶した程度でまだろくに会話もしたことがない中年女性を思い出した。人柄は悪くなさそうなのだが、いつも忙しそうなので声をかけそびれていたのだ。
 リアナの世話は主にタニアとイーシャがしているので、この広い城ではなかなかロシアンナと出会うことがない。
「それからデュレン様は人が変わったようになって、狩り人になると告げて城を飛び出して行ってしまったんだって。でも五年後の十五歳に戻ってきて、その時にはもう立派な狩り人になっていたんだ。デュレン様が不在の五年間は、母方の叔父さんが城を守ってくれてたんだけど、デュレン様が戻ってきた時に追い出しちゃって」
「どうして?」
「あんまり仲がよくないんだ。叔父さんって言っても、血が繋がってるわけじゃないから」
「そうなんだ……」
 いろいろ複雑そうだ。陰謀や策略なども当たり前のように日常にある世界なのだろう。考えるだけでリアナは疲れてしまった。亜姫の世界は平和だったなと懐かしく思う。
 戻りたい。そんな思いにかられたが、もう無理なのはわかっている。亜姫はもうこの世にいない存在で、今はリアナとして生きるしかないのだ。
 ふう、とため息が漏れた。
「リアナ様?」
「なんでもないわ。話を聞いてるだけで疲れちゃったの。デュレンの人生は思ってた以上に大変なんだなと思って」
「うん。だから、リアナ様がデュレン様の支えになってくれると俺もうれしいんだ。デュレン様ってなかなか人を信用したりしないっていうか、俺たちには優しいけど、ちょっとそんなところもあるから、リアナ様がお嫁さんになってくれると心強い。なにしろデュレン様が気に入って連れて来た人なんだから」
「そんなに期待されても、私にできることなんて何もないわよ。どっちかって言ったら足手まといにしかならないし、お荷物だと思うんだけど」
「そんなことないよ。リアナ様はデュレン様の癒やしなんだ。俺はそう信じてる」
 きらきらした眼差しでハリスに断言されて、リアナは苦笑するしかなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...