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第14話 熱視線

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「綺麗になったな」
 スープを飲もうとスプーンを持ったところで、急にそう言われ、リアナは反射的に頬を染めた。こんなことを言い出す人だとは思っていなかったので驚いた。危うくスプーンを落とすところだった。
「そ、そりゃあ、綺麗にするためにお風呂に入ったんですから」
「それは謙遜か? それとも本当にわかっていないのか? さっきまで汚れていたしボロボロだったからひどかったが、洗ったら見違えるほど綺麗になった。そのナイトドレスは母の物だが、おまえのほうがよく似合う。母は胸が少し足りなかったからな」
 リアナの顔が真っ赤に染まった。
「ど、ど、どこを、見てるんですか。食事に集中したいんですけど……っ」
「集中すればいいだろ?」
 邪魔をしているのはどこのどいつだ。
 急にノーパンだったことを思い出して、リアナは内心で焦った。年頃の男と二人きり。ナイトドレスは薄い生地で身体の線が丸わかりだ。これは危機ではないのか?
 考え過ぎだと何度も自分に言い聞かせる。まだ出会ったばかりだ。初対面のようなものだ。いくらなんでも、そんなことはないはず。
 食事に集中しよう。意識するな。目の前にいるのは野菜だ。カボチャだ。照れた結果なんでもなかったら、逆に恥ずかしいではないか。
 スープを飲み、ステーキにナイフを入れ、フォークで口に入れて咀嚼する。やっぱりダメだ。デュレンの視線が気になりすぎる。
「……見、ないで、ください」
「だから、どうして」
「食べているところをじっと見られていると恥ずかしいからです」
 リアナは正直に答えた。そこまで言わなければ配慮してくれないような気がしたからだ。
「だから、気にするな」
 気になるから言っているのだ。
 リアナはため息をつき、諦めることにした。目の前にいるのはカボチャだ。気にするな。
 だが、やはり気になる。舌の動きも喉の動きもすべて見られているようで、動揺で手が震える。心臓はバクバクと鳴り、静まる気配がない。
 デュレンが会話してくれるのならまだしも、リアナから話しかけない限り彼はずっと無言で、ただ食べている彼女を見ているだけなのだ。しかも至近距離で。
 もはや拷問だった。
 それでも空腹が勝って、リアナは完食した。
「ごちそうさまでした」
 両手を合わせる。
「おまえは何歳だ?」
 急な質問に驚いて、リアナは顔をあげた。
「十八ですけど」
「そうか。俺は二十歳だ」
 やはり若かった。二十七歳の感覚で見るとすごく年下のように思えたが、リアナは十八歳なので実際は年上なのだ。ややこしい。
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