悠久の大陸

彩森ゆいか

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第50話 現実世界

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 ログアウトした。
「……また、びちゃびちゃだ……」
 起き上がった那月は、吐精で股間が大変なことになっているのを嫌そうに眺めた。
 度重なる絶頂で頭がおかしくなりそうだ。何か別の生き物に作り変えられている気分だった。
 服を脱いで股間を綺麗にして新しい服を着る。はぁ、とため息をつきながら時計を見た。まだ日曜日の朝だ。
 空腹を満たすために那月はカップラーメンを作り、久しぶりにテレビをつけて、もそもそと食った。自分で身体のあちこちに触れてみるが、感度があがっているようなこともない。あれはあくまでもゲームの中だけの感覚なのだ。
 ヴァーチャルであんな気持ちいいセックスばかりしていると、リアルではできなくなりそうな気がしてくる。
(勃つのかなー俺)
 カップラーメンを食べ終わってから、ズボンと下着をずり下ろす。萎えた股間をそっと握り、ゆるゆると刺激を与えてみた。
(……あれ?)
 硬くならない。刺激が足りないのだろうか。
 リュウトとスオウにいいようにされていた時を思い返してみた。すると、みるみる手の中のものが膨れ上がる。
(うあー……マジかよ)
 二人からめちゃくちゃに犯されていた時を思い返した。痛いほど手の中のものが硬くなる。
(嘘だろ。マジかよ……っ)
 那月は熱に突き動かされるように、手の中のモノをしごいた。
「あっ……あっあっ……」
 慌ててティッシュで尿道口を塞ぐ。ビクビクと全身が震えた。
「ぅあっ……はっ……はぁっ、はぁっ……」
 イッてしまった。二人にやられているところを思い出しながら。
「……やべぇ。俺、やべぇ。マジでヤバイ……」
 さああああっと青ざめる。このままではまともな生活が送れなくなってしまう。
「ゲームはしばらく控えよう。そうしよう。正常に戻さないと」
 那月はしばらくログインしないことを心に誓った。

 月曜日になり、大学へと向かった。まだ頭のどこかが変になっているような気がしていたが、それをなんとか振り払いながらキャンパスの敷地内へと入る。
 リュウトとスオウとのセックスにはある種の中毒性があり、またあの感覚になってみたいような欲望が頭をもたげそうになる。何度も脳裏にちらつくあの光景を、那月は必死で忘れようとした。
「先輩、おはようございます」
 いきなり声をかけられ、那月は内心でビクッとしながら振り向いた。高校時代からの腐れ縁の後輩の、富谷辰泰だった。
「……あぁ、おはよう」
「昨日、連絡したんすよ。シカトなんてひどいじゃないですか」
「……ああ、ごめん……忘れてた」
「ひどいなあ」
 責める言葉を放ちながらも、辰泰はそれほど気にしていない素振りを見せる。
 並んで歩きながら、ちらちらとこちらを見るので、那月は思わず軽くにらんだ。
「なんだよ」
「いや、ちょっと見ない間になんか色っぽくなったなあって」
「…………っ」
 バッと那月の顔が赤く染まった。辰泰がびっくりした顔で那月を見つめる。
「……え?」
「いや、なんでもない……今のは忘れろ」
 那月は逃げるように駆け出した。置き去りにされた辰泰はぽかんとした顔で立ち尽くす。
「……先輩」
 それから辰泰は少し意味深な表情を浮かべ、わずかにニヤけた。

 講義の内容が頭に入ってこない。
 那月は教室の席でぼんやりしていた。ゲームのせいで脳が疲れているのかもしれない。ゲーム中は寝ているのではなく、覚醒した状態のまま横たわっているだけなのだ。寝不足なのも那月をおかしくさせている要員なのかもしれない。
 やはり脳裏に何度もあの光景がちらついてくる。リュウトやスオウと快楽に耽っている時や、絶頂の瞬間にボスモンスターに殺された時のこと。思い出すだけで勃起しそうになるので、那月は必死で振り払う。
(数字のことでも考えよう。計算式)
 頭の中で計算式を唱えた。それでなんとか治まったが、これでは先が思いやられる。那月はため息をついた。
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