悠久の大陸

彩森ゆいか

文字の大きさ
上 下
39 / 80

第39話 メインストーリーを進めよう

しおりを挟む
 メインストーリーは順調に進んだ。
 雪平ゆきひら海咲みさき海咲の原作小説の内容に添ったストーリーが展開される。プレイヤーはその物語を俯瞰で眺める第三者のような立場で、登場人物たちからお使いを頼まれたり、モンスターを倒すよう言われたり、遠い場所まで行ったりする。
 わりと地道な内容なので、人によっては退屈でかったるくて面倒くさかったりもするのだろう。
 実際、スオウは途中からすでに飽きていて、ナツキの傍でずっと文句を言っている。
 自由に好き勝手に行動したいタイプほど、メインストーリーは苦手なのだろう。
 ナツキはそんなスオウを無視して、メインストーリーを満喫していた。
「おまえ、さっきからうるさいよ。楽しさが半減するだろ?」
 振り返って文句を言うと、スオウが捨てられた子犬のような目で見つめてきた。
「俺はただ、せっかくアダルト空間にいるんだから、ナツキとエッチなことをしたいだけで」
「俺はゲームをやりに来てるんだってば」
「メインストーリーに参加してる最中はエッチなことできない仕様になってるから、俺のストレスが溜まる」
「うるせーなー、もう」
 そう言えばリュウトが一向に戻って来ない。ステータス画面を見ると、どうやらとっくにログアウトしている。リアルが忙しいのだろうか。
「…………」
 リュウトはナツキが他の男とずっと一緒にいることとか気にならないのだろうか。スオウのわかりやすい嫉妬を見ていると、こちらのほうが普通の反応のような気がする。逃げれば探してでも追いかけてくるのに、どうして今は放置されているのだろう。
(わっかんね。考えるのやめとこ)
 メインストーリーを進めてみて、ひとつ気になっていることがある。ナツキはスオウを見た。
「ん?」
「なあ、スオウって雪平海咲の原作小説って読んでる?」
「読んでない」
 即答だった。
「やっぱりな。メインストーリーへの興味のなさから、そうだろうと思った」
「アニメなら見たことあるよ」
「リュウトはどうなんだろう」
「あいつのことは今はいいじゃん。いないんだから」
「……おまえってホント……」
「ん?」
「……いや、なんでもない……」
 ナツキは呆れたようにため息をつき、メインストーリーをさらに進めた。スオウもしぶしぶついてくる。
 メインストーリーのモンスターは徐々に強くなっていき、戦うのがだんだん手強くなる。とはいえスオウのレベルが高いこともあり、わりとさくさく進められた。彼はさっさとメインストーリーを終わらせたいと思っているので、非常に協力的だ。
「第一話終わったー。第二話も進めようぜ」
 メインストーリーの第一話が終わり、エンディングも見終わった。ナツキがそう言うと、スオウは「えー?」と嫌そうな反応を見せる。
「第二話はまた今度にしない? 結構長いし。息抜きに違うクエストやらない?」
「おまえってホントに……」
「ん?」
「わかったよ。第二話はまた今度にする。で、どのクエストやるんだよ?」
「幻惑の実を拾いに行きたい」
「…………」
 スオウの下心が見え見えで、むしろ清々しさすら感じた。
 ウラクの町に戻り、幻惑の実を拾うクエストを選んだ。スオウのリクエストに応えてしまったのは、メインストーリーの第一話を丸ごと手伝ってもらったからでもある。
 あと、少なからずナツキも、興味がないわけではなかった。スオウがそれほどまでに推してくるこのクエストが、いったいどういうものなのかだんだん気になってきていた。
 クエストを受けた後、二人でスフィルの森へと向かう。
 森には数々のモンスターがいたが、たいしたことなかった。そもそもスオウと一緒にいたら、どのモンスターも雑魚だ。剣を振り上げ、戦うことにも慣れたナツキは、スオウと共にサクサクとモンスターを倒して行く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

無理やりお仕置きされちゃうsubの話(短編集)

みたらし団子
BL
Dom/subユニバース ★が多くなるほどえろ重視の作品になっていきます。 ぼちぼち更新

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので

こじらせた処女
BL
 大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。  とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

松本先生のハードスパンキング パート1

バンビーノ
BL
 中学3年になると、新しい学年主任に松本先生が決まりました。ベテランの男の先生でした。校内でも信頼が厚かったので、受験を控えた大事な時期を松本先生が見ることになったようです。松本先生は理科を教えていました。恰幅のすごくいいどっしりした感じの先生でした。僕は当初、何も気に留めていませんでした。特に生徒に怖がられているわけでもなく、むしろ慕われているくらいで、特別厳しいという噂もありません。ただ生活指導には厳しく、本気で怒ると相当怖いとは誰かが言っていましたが。  初めての理科の授業も、何の波乱もなく終わりました。授業の最後に松本先生は言いました。 「次の授業では理科室で実験をする。必ず待ち針をひとり5本ずつ持ってこい。忘れるなよ」  僕はもともと忘れ物はしない方でした。ただだんだん中学の生活に慣れてきたせいか、だらけてきていたところはあったと思います。僕が忘れ物に気がついたのは二度目の理科の始業ベルが鳴った直後で、ほどなく松本先生が理科室に入ってきました。僕は、あ、いけないとは思いましたが、気楽に考えていました。どうせ忘れたのは大勢いるだろう。確かにその通りで、これでは実験ができないと、松本先生はとても不機嫌そうでした。忘れた生徒はその場に立つように言われ、先生は一人ずつえんま帳にメモしながら、生徒の席の間を歩いて回り始めました。そして僕の前に立った途端、松本先生は急に険しい表情になり、僕を怒鳴りつけました。 「なんだ、その態度は! 早くポケットから手を出せ!」  気が緩んでいたのか、それは僕の癖でもあったのですが、僕は何気なくズボンのポケットに両手を突っ込んでいたのでした。さらにまずいことに、僕は先生に怒鳴られてもポケットからすぐには手を出そうとしませんでした。忘れ物くらいでなぜこんなに怒られなきゃいけないんだろう。それは反抗心というのではなく、目の前の現実が他人事みたいな感じで、先生が何か言ったのも上の空で聞き過ごしてしまいました。すると松本先生はいよいよ怒ったように振り向いて、教卓の方に向かい歩き始めました。ますますまずい。先生はきっと僕がふてくされていると思ったに違いない。松本先生は何か思いついたように、教卓の上に載せてあった理科室の定規を手に取りました。それは実験のときに使う定規で、普通の定規よりずっと厚みがあり、幅も広いがっしりした木製の一メートル定規です。松本先生はその定規で軽く素振りをしてから、半ば独り言のようにつぶやいたのでした。「いまからこれでケツひっぱたくか……」。  

処理中です...