悠久の大陸

彩森ゆいか

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第31話 三人パーティ

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「おい、こら」
 見かねたスオウが不機嫌な様子で口を開いた。ようやくリュウトは、ナツキの他にも人がいたことに気づいた様子で、視線をそちらへと向ける。
「誰?」
「俺は、ナツキの」
 そこまで言ってスオウは言いよどんだ。
「いや、俺はナツキの……ナツキのことが好きで」
「出会ったばかりで、もう好きに?」
 リュウトが突っ込みを入れると、スオウがますます不機嫌になった。
「時間なんか関係ないだろ。とにかく俺はナツキのことが好きなんだ」
「奇遇だな。俺もナツキのことが好きだ」
 リュウトとスオウの間で火花が散った。
「あの……」
 ナツキが困惑しながら口を開く。
「俺はどっちとも恋愛する気ないんだけど」
「提案がある」
 ナツキの声をさえぎるように、リュウトが口を開いた。
「二人でナツキを共有しないか」
「は?」
 ナツキとスオウが同時に驚きの声をあげた。
 リュウトはいいことを思いついたような顔で、嬉々としている。
「今後は三人でパーティを組んで行動しよう。どちらがナツキに手を出しても怒らない、文句も言わない。ここはゲームの世界だから、多少の無理や無茶をしてもナツキの身体を傷つける恐れはない。俺は三人ですることになっても構わない。どうだ?」
「どうだって言われても」
 スオウは激しく戸惑っていた。
「俺はナツキとは離れたくない。でも三人は……」
 スオウの言葉をさえぎるように、間髪入れずにリュウトが口を開いた。
「二輪挿しには興味はないか?」
 スオウの目が輝いた。
「ある」
「なら、決まりだな」
 あっさりと二人の意見が一致し、ナツキは心底から焦った。
「待っ、俺の意見っ」
「そういうわけだから、ナツキ」
 リュウトが振り返ると、ナツキの端末の画面にパーティの誘いが表示された。
「……俺の、意見……」
 心の中で涙を流しながら、ナツキはしぶしぶ「YES」を押した。これで三人組のパーティとなった。パーティの最大人数は三人までなので、ゲームを進めやすいちょうどいい人数が揃ったことになる。しかし問題はそこではない。
 リュウトが、座り込んでいるナツキの腕をつかんだ。
「よし、じゃあ行こうか、ナツキ」
 青空を背に爽やかに微笑むリュウトは、眩しいほどに美しかった。
 悲しい気持ちになりながらも、ナツキは腕を引かれて立ち上がる。全裸な上に精液でどろどろになっている自分の姿がとても惨めだ。
 しかし、リュウトが呪文を唱えると、キラキラと小さな光が舞い、ナツキの全身はたちまち綺麗になった。
「装備し直して」
 言われるがままに服を身につけ、装備を直す。スオウだけではなく、リュウトも身体を綺麗にする魔法が使えるらしい。
(今、一番欲しい魔法だな……レベルいくつで使えるようになるんだろ)
 ため息つきつつ準備を終えると、リュウトがひとつ頷いた。
「出発するぞ」
 いつの間にか仕切っている。パーティの主導権は自動的にリュウトが握ってしまったようだ。
「どこ行くんだよ」
 スオウがぼやくように言う。
「とりあえず町に向かおう」
 スオウが嫌そうな顔になる。
「俺たちそっちから来たんだけど」
「宿屋に行きたいんだ。三人になったお近づきの印に」
 リュウトが不穏なことを言った。たちまちナツキは嫌な予感に襲われる。
 警戒しつつ、聞いてみた。
「宿屋に、何をしに?」
「着いてから教える」
「今言えよ」
 ナツキが不機嫌にむくれた。
「またエッチなことするつもりかよ? 俺もう昨日からずっとやってばっかりなんだけど。体力も精神力ももうもたないんだけど」
「昨日から?」
 スオウが目を丸くした。
 リュウトがふっと笑う。
「何のためにアダルト空間にいると思ってるんだ。純粋にゲームするだけのつもりなら、最初からこっち側には来ないだろ」
「あっ!」
 ナツキが急に思い出したように声をあげた。
「リュウト嘘ついただろ。アダルト空間と全年齢空間、自由に行き来できるとか。行けないじゃないか」
 リュウトがきょとんとした。
「いずれは行けるから嘘をついたわけじゃない。少なくとも俺は自由に行き来できるからな」
「でも俺は行けない」
 ナツキがすねる。そんな彼をリュウトは微笑ましそうに眺めた。
「もっとレベルをあげればいいじゃないか。俺と組めば強いモンスターとも対峙できるし、高い経験値も入るんだから。マイペースにゲームやりたいって言って、パーティ組むの拒否したのはナツキのほうだろ」
「そうだけど……」
「アダルト空間に行ってみたいか聞いた時に、拒否しなかったのはナツキのほうだろ」
「そうだけど……」
 ナツキの立場は弱かった。言い負かされてしまう。
 さらにリュウトは話を続ける。
「ゲーム内でセックスしたいって少なからず思ったんだろ?」
「……そうだけど……でも、こういう意味じゃなかったし」
「こういう意味って?」
 リュウトが不思議そうに問いかける。ナツキは言い淀んだ。
「だから……男に抱かれるつもりで来たわけじゃなかった」
 リュウトが真面目な顔でナツキを見つめた。
「俺は抱くつもりで連れて来たよ。何の下心もなくボランティアでわざわざこっちまで連れて来ると思うか?」
「……そうだけど……」
 やはり立場は弱いのだ。
 リュウトがふっと微笑んだ。
「とにかく、三人パーティになったことだし、互いのルールを決めるためにも、一度、町の宿屋に行こう」
「……互いの、ルール……?」
「いいから来い」
 怪訝そうな顔になるナツキの腕をつかみ、リュウトが歩き出した。慌ててスオウもついてくる。
「おいこら、俺を置いて行くな」
 ナツキはドキドキしながらリュウトの横顔を眺めた。一度は逃げた身、リュウトが怒っていないはずがなかった。いったい何をされるのだろう。考えるとめまいを起こしそうだった。
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