25 / 80
第25話 パーティを組もう
しおりを挟む
ナツキが恨みがましい気持ちでリュウトを思い浮かべている間、そんなことなど露ほども知らない青年が口を開いた。
「俺、スオウって言います。名前聞いてもいいですか?」
あまり名前は言いたくなかったが、しぶしぶ教えた。
「……ナツキ」
「え?」
スオウが何故か絶句した。まさか知り合いだろうかと、内心でナツキが焦る。
だが、スオウが名前のことで特に何も言わなかったので、ナツキはホッと胸を撫でおろした。杞憂だったようだ。
しかし、スオウは戸惑う様子を見せる。
「ええと、ナツキさん……。ナツキって呼んでもいいかな。君ね、その姿で一人でアダルト空間をウロウロするのは、襲ってくださいって言ってるようなものなんです」
「え、そうなの?」
ナツキは純粋に驚いた。
「もうちょっと、自分の容姿を気にしようか?」
呆れたように言われ、ナツキは内心で面白くなかった。自分の姿でゲームをするのはそんなに悪いことなのだろうか。もっと容姿を作り込んだほうがよかったのだろうか。ムキムキキャラなら、きっとこんな扱いも受けなかったのだろう、とは思うが。
「だから、俺を用心棒として雇ってください。モンスターから守れる自信ありますから。モンスターだけじゃない。あらゆる危険から守ります」
「…………」
スオウから意気揚々と言われ、ナツキはためらった。
「レベルは?」
「五十九ですね」
「……リュウトより弱いのか」
「え?」
「いや、なんでもない」
アダルト空間から出られないとなると、こちら側でこの先もやっていくしかない。となると単独行動は確かに不安だ。
「じゃあ、変なことは何もしないという条件つきでなら、パーティ組んでもいいですよ」
「わかりました。何もしません」
ピコンと音が鳴り、スオウからのパーティの誘いが表示された。「YES」を押す。
「では、さっそく冒険に行きましょう」
スオウが喜々として歩き出した。ナツキはしぶしぶついていく。自分のペースでゲームをやりたかったのになあと内心でぼやいた。
「メインクエストはもうやりました?」
横を歩くスオウに問いかけられ、ナツキは小さく頷く。
「途中までなら」
「どこで行き詰まってるんですか? 教えますよ?」
「行き詰まってるって言うか……モンスターが強くて進めなくなっただけ」
「俺と一緒なら倒せますよ。レベル五十九なんで」
「あのさ、ちょっと思ったんだけど、俺のレベルに合わせて行動したらつまんなくないの?」
ナツキが言うと、スオウはぶんぶんと左右に首を振った。
「全然。むしろ楽しいと言うか、嬉しいと言うか」
「嬉しい?」
「ナツキのような綺麗な人と一緒に行動できて」
「……はあ」
綺麗と言われてもピンと来なかった。リアルではあまり言われたことがなかったからだ。
姿形はリアルとほとんど同じで、違うのは服装や装備ぐらいだ。ある意味、リアルの自分がコスプレしているような状態である。だから余計、綺麗と言われるのが不思議だった。ナツキは自分では普通の顔だと思っている。
スオウがつきあってくれると言うので、メインクエストを進めることにした。
メインクエストには段階があり、チャプター1、チャプター2、チャプター3と話が続いていく。ナツキが行き詰まっているのはそのチャプター1で、まだほんの初期の段階なのだ。
やはりレベル五十九のスオウと一緒にいると、ゲームは笑えるほどの早さでサクサクと進んだ。モンスターも軽々となぎ倒して行くし、ラスボスもあっさり倒してしまう。メインクエストのチャプター1はあっという間に終わってしまった。
本筋から脱線してまったり過ごしたい気持ちもあるナツキは、チャプター2はまだやらずにスオウと新しい町へ向かった。ようやく初心者の村から脱出したのである。
「ところで、スオウはなんで初心者の村にいたんだ?」
「何かやり残してることはないかと思って、一通り村や町を巡っていたんです。そしたらちょうどナツキと出会って。運命の出会いだと思ってます」
「大げさだな」
ナツキは笑った。
「で、なんで一人でいたんだ?」
「結構いろいろな人と組んだり別れたりしてたんで、ある程度のクエストも終わってしまったし、しばらく一人で行動しようかなって思ってたところで。ちなみにアダルト空間に来たのも最近で、ほんの好奇心からで」
「へえ」
「俺、ほとんどのことやり尽くしてて暇ですから。ナツキのやりたいことにつきあいますよ」
「じゃあ、新しい町のクエストでも引き受けようかな」
「気をつけてくださいね。ここはアダルト空間なんですから」
「え?」
どういう意味なのかと不思議に思い、スオウを見た。彼はそれ以上の余計なことは言わなかった。ナツキは首をかしげる。
新しい町に着いた。ウラクの町という。広くて大きな町だった。人も多く、賑わっている。
ここに到着するまでの街道では、数々のモンスターと出会ったが、スオウと一緒なのでサクサクと倒せた。パーティを組んでいるので、スオウが倒しても経験値はナツキにも入る。
だが、そもそもゲームを始めたばかりの初心者がうろつけるような場所なので、劇的にレベルがあがるようなこともなかった。
「俺、スオウって言います。名前聞いてもいいですか?」
あまり名前は言いたくなかったが、しぶしぶ教えた。
「……ナツキ」
「え?」
スオウが何故か絶句した。まさか知り合いだろうかと、内心でナツキが焦る。
だが、スオウが名前のことで特に何も言わなかったので、ナツキはホッと胸を撫でおろした。杞憂だったようだ。
しかし、スオウは戸惑う様子を見せる。
「ええと、ナツキさん……。ナツキって呼んでもいいかな。君ね、その姿で一人でアダルト空間をウロウロするのは、襲ってくださいって言ってるようなものなんです」
「え、そうなの?」
ナツキは純粋に驚いた。
「もうちょっと、自分の容姿を気にしようか?」
呆れたように言われ、ナツキは内心で面白くなかった。自分の姿でゲームをするのはそんなに悪いことなのだろうか。もっと容姿を作り込んだほうがよかったのだろうか。ムキムキキャラなら、きっとこんな扱いも受けなかったのだろう、とは思うが。
「だから、俺を用心棒として雇ってください。モンスターから守れる自信ありますから。モンスターだけじゃない。あらゆる危険から守ります」
「…………」
スオウから意気揚々と言われ、ナツキはためらった。
「レベルは?」
「五十九ですね」
「……リュウトより弱いのか」
「え?」
「いや、なんでもない」
アダルト空間から出られないとなると、こちら側でこの先もやっていくしかない。となると単独行動は確かに不安だ。
「じゃあ、変なことは何もしないという条件つきでなら、パーティ組んでもいいですよ」
「わかりました。何もしません」
ピコンと音が鳴り、スオウからのパーティの誘いが表示された。「YES」を押す。
「では、さっそく冒険に行きましょう」
スオウが喜々として歩き出した。ナツキはしぶしぶついていく。自分のペースでゲームをやりたかったのになあと内心でぼやいた。
「メインクエストはもうやりました?」
横を歩くスオウに問いかけられ、ナツキは小さく頷く。
「途中までなら」
「どこで行き詰まってるんですか? 教えますよ?」
「行き詰まってるって言うか……モンスターが強くて進めなくなっただけ」
「俺と一緒なら倒せますよ。レベル五十九なんで」
「あのさ、ちょっと思ったんだけど、俺のレベルに合わせて行動したらつまんなくないの?」
ナツキが言うと、スオウはぶんぶんと左右に首を振った。
「全然。むしろ楽しいと言うか、嬉しいと言うか」
「嬉しい?」
「ナツキのような綺麗な人と一緒に行動できて」
「……はあ」
綺麗と言われてもピンと来なかった。リアルではあまり言われたことがなかったからだ。
姿形はリアルとほとんど同じで、違うのは服装や装備ぐらいだ。ある意味、リアルの自分がコスプレしているような状態である。だから余計、綺麗と言われるのが不思議だった。ナツキは自分では普通の顔だと思っている。
スオウがつきあってくれると言うので、メインクエストを進めることにした。
メインクエストには段階があり、チャプター1、チャプター2、チャプター3と話が続いていく。ナツキが行き詰まっているのはそのチャプター1で、まだほんの初期の段階なのだ。
やはりレベル五十九のスオウと一緒にいると、ゲームは笑えるほどの早さでサクサクと進んだ。モンスターも軽々となぎ倒して行くし、ラスボスもあっさり倒してしまう。メインクエストのチャプター1はあっという間に終わってしまった。
本筋から脱線してまったり過ごしたい気持ちもあるナツキは、チャプター2はまだやらずにスオウと新しい町へ向かった。ようやく初心者の村から脱出したのである。
「ところで、スオウはなんで初心者の村にいたんだ?」
「何かやり残してることはないかと思って、一通り村や町を巡っていたんです。そしたらちょうどナツキと出会って。運命の出会いだと思ってます」
「大げさだな」
ナツキは笑った。
「で、なんで一人でいたんだ?」
「結構いろいろな人と組んだり別れたりしてたんで、ある程度のクエストも終わってしまったし、しばらく一人で行動しようかなって思ってたところで。ちなみにアダルト空間に来たのも最近で、ほんの好奇心からで」
「へえ」
「俺、ほとんどのことやり尽くしてて暇ですから。ナツキのやりたいことにつきあいますよ」
「じゃあ、新しい町のクエストでも引き受けようかな」
「気をつけてくださいね。ここはアダルト空間なんですから」
「え?」
どういう意味なのかと不思議に思い、スオウを見た。彼はそれ以上の余計なことは言わなかった。ナツキは首をかしげる。
新しい町に着いた。ウラクの町という。広くて大きな町だった。人も多く、賑わっている。
ここに到着するまでの街道では、数々のモンスターと出会ったが、スオウと一緒なのでサクサクと倒せた。パーティを組んでいるので、スオウが倒しても経験値はナツキにも入る。
だが、そもそもゲームを始めたばかりの初心者がうろつけるような場所なので、劇的にレベルがあがるようなこともなかった。
21
お気に入りに追加
442
あなたにおすすめの小説



身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。



塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる