悠久の大陸

彩森ゆいか

文字の大きさ
上 下
14 / 80

第14話 ダンジョン

しおりを挟む
 村の西側の一番奥に、初心者ダンジョンはあった。村から離れた場所ではなく、誰もが気軽に行けるようになっているため、隣接している。ナツキもこれまで何度か入ったことのあるダンジョンだった。
 見た目は洞窟なのだが、やはりゲームなので、中に入ると迷路のようになっている。初心者ダンジョンなので、あまり入り組んではいないが、ランダムで毎回迷路の形が変わるようになっている。
 リュウトが左手首の端末を操作してパネルを開き、アイテムを取り出した。見たことのないアイテムだった。ちょうど手のひらに収まるサイズで、紋章エンブレムのような形をしている。厚みはなく、布製のようにも見える。
 ナツキは問いかけた。
「それは?」
「秘密兵器」
 ニヤッとリュウトが笑った。
 リュウトが紋章エンブレムを洞窟に向けてかざすと、まばゆい光が二人を覆った。紋章エンブレムは使用済みアイテムとして、消えてなくなっていく。
 ふたりは同時に洞窟の中へと瞬間移動していた。仲間でなくても、まったくの見知らぬ他人でも、この瞬間に紋章エンブレムをかざした者と同じ場所にいると、一緒に入れてしまう仕様になっている。
 一度入ってしまうと、ボスモンスターを倒すか、ゲームオーバーにならないと出られない。
「行くぞ」
 リュウトがさっさと歩きだす。ナツキは慌てて後を追った。
 洞窟の中はダンジョンなので、うっすらと明るい。本物の洞窟とはだいぶ違う。真っ暗ではモンスターが見えないから、戦えなくなってしまう。なので少し明るくなっている。
 ごつごつした岩肌の壁面には灯りが取りつけられており、炎が揺らめいているが、永久に消えない仕様だ。水をかけて無理矢理消そうとしても消えない。油を燃料にして燃えていることになっているが、燃え尽きることもない。
 通常なら洞窟内でこれだけ炎が燃えていれば、酸素の心配をしなければならないが、そこもゲームなので心配は無用だ。
「そうだ。パーティを組もう、ナツキ。その方が効率いい」
 突然、リュウトがそんなことを言い出した。
「パーティ?」
「今のままソロプレイヤーとしてモンスターと戦うと、経験値がそれぞれ分かれて入る。パーティを組んでいると、仲間として経験値が二人同時に入る。きっと、ほとんど俺が倒してしまうだろうから、そうなるとナツキには全然経験値が入らなくなるから、ナツキに経験値を入れるためにはパーティを組んだほうがいいんだ」
 ナツキは少しためらったが、しぶしぶパーティを組むことにした。ナツキが何もしなくても、リュウトがモンスターを倒すだけで自動的にナツキにも経験値が入る。非常に楽にレベルアップできるということなのだが、ゲームとしての面白味が半減してしまうということでもある。
「向こうに着くまでの間だけなら」
 という条件でパーティを組んだ。
 パーティを組んだからと言って、見た目や行動が変わるわけではない。ステータス上で仲間だと表示されるだけだ。実際にモンスターを倒して経験値を得るまで、実感はない。
 急にザワッと空気が変わった。モンスターの存在を感じる。エンカウントしたようだ。
 リュウトとナツキは同時に身構えた。
「グワアッ」
 暗い通路の奥から泥のバケモノのようなモンスターが現れた。人の形をしているが、まるでゾンビのような動きで、手や顔から泥が滴り落ちている。目と思われる辺りには黒い空洞しかなく、薄気味悪さばかりが漂っている。
 つかもうとするかのように手を伸ばしてくる。リュウトの剣が閃いた。
 ザンッ!
 一瞬だった。泥のモンスターはあっという間に霧散し、アイテムや金貨をドロップする。パーティを組んでいるせいか、同じアイテムがナツキの元にも入ってきた。お得感が増す。
 泥のモンスターは他にもいた。洞窟の奥から次々と姿を現す。ためらいのないリュウトの剣がしなやかに舞い、軽やかな足取りが地面を蹴る。
 ザンッザンッザンッ!
 次々に斬っていく。鮮やかな早さだった。まるで舞うように戦うその姿は美しく、ナツキはしばし見惚れていた。
「やっぱり弱いな」
 泥のモンスターを倒し終えたリュウトが、物足りなさそうに小さくつぶやいた。振り返る。
「行くぞ、ナツキ」
「あ、うん」
 走るリュウトを慌てて追った。
 その後もモンスターは次々現れ、あっさりとリュウトに斬られていく。泥以外のモンスターも現れたが、やはり斬られていく。
 リュウトがモンスターを斬れば斬るほど、ナツキの経験値が増えていき、レベルもあがった。ドロップアイテムも増えた。アイテム枠を空けるために、いらないものは売っていく。戦っていないのにこんなにあがっていいのだろうかと、軽く罪悪感を覚えるほどだ。
 リュウトも同じように経験値は得ているのだが、すでにレベルが高すぎて、この程度の経験値ではもう何も変わらない。ドロップしたアイテムも増えてはいるが、アイテム欄の枠も多すぎるほどなので、増えすぎて困るようなこともないので放置している。
 やがて洞窟の突き当たりに到着した。そこには小さな部屋があり、祭壇のようなものがあった。
「ここだな」
 リュウトが小さくつぶやいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無理やりお仕置きされちゃうsubの話(短編集)

みたらし団子
BL
Dom/subユニバース ★が多くなるほどえろ重視の作品になっていきます。 ぼちぼち更新

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集

夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。 現在公開中の作品(随時更新) 『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』 異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

【R18】BL短編集

いろあす
BL
がっつりめのエロBLをお求めの皆様へ。 奴隷契約。怪しいきのこ。各種玩具に触手まで取り揃えております。あと新鮮な生姜も。 軽い導入→すけべ→ハピエンが基本。エロだけ欲しい方は*マークを探してください。 各話の内容を下記よりご参照の上お好みのお話をお読みいただければと思います。 お気に召すものがありますように。 【のんびり雑談】 →敬語、言葉攻め、強制・連続絶頂、前立腺、潮吹き 【ロングアイランド・アイスティー】 →甘め、攻フェラ、誘い受、ハッピーエンド 【家なき子】 →玩具(ローター、ニプルクリップ、ディルド、ブジー)・前立腺・強制絶頂・失禁・失神・潮吹き、結腸、尿道、メス堕ち、ハッピーエンド 【冒険の書】 →ファンタジー、触手、前立腺、時間停止(少)、潮吹き、結腸責め、強制・連続絶頂、尿道、ハッピーエンド? 【探偵物語】 →強制・連続絶頂、潮吹き、甘々、ハッピーエンド 【九蓮宝灯】 →鬼畜、イラマチオ、潮吹き、前立腺、連続絶頂、失神、ハッピーエンド(多分) 【2憶4000万の男】 →焦らし、攻フェラ、メンソール、強制・連続絶頂、前立腺、潮吹き、(洗脳?)、ハッピーエンド? 【スイングボーイズ】 →3P、攻フェラ、イラマチオ、喉イキ、前立腺、強制絶頂、潮吹き、呼吸管理、ハッピーエンド 【物実の鏡】 →続編(冒険の書)、じれじれ後甘々、ストーリーメイン、ハッピーエンド 【蓼食う虫も好き好き】 →催淫、連続絶頂、潮吹き、素股、青姦、甘め、ハッピーエンド 【皇帝ペンギン】 →ほんのりハーレム、攻フェラ、前立腺、連続・強制絶頂、潮吹き、溺愛鬼畜、ハッピーエンド 【開発事業は突然に】 →視姦オナ、イラマチオ、結腸、メスイキ、前立腺、連続絶頂、強制絶頂、鬼畜、ハッピーエンド 【部屋とワセリンと鋏】 →前立腺、失神、強制・連続絶頂、巨根、結腸、溺愛鬼畜、ハッピーエンド 【しょうがあるけどしょうがない】 →敬語攻、鬼畜、ビッチ受、山芋、生姜(フィギング)、前立腺、強制・連続絶頂、ハッピーエンド 【頭が痛いと言ってくれ!】 →催眠(脳イキ)、焦らし、強制・連続絶頂、潮吹き、ハッピーエンド エロだけ欲しい方は*マークを探してください。 プロットもなければ登場人物も全く考えずに書き進める行き当たりばったり作品ばかりです。 容姿の描写を省くことが多いのでお好みに合わせて妄想力を滾らせてください。 導入が長いことが増えてきたので、開始時は1週間くらい放置したらちょうどいいと思います。 ストーリーなんていらねぇ、ただエロが読みたいんだ。って時、覗いてやってください。 少しでも楽しんでいただけると幸いです。

ご主人様に調教される僕

猫又ササ
BL
借金のカタに買われた男の子がご主人様に調教されます。 調教 玩具 排泄管理 射精管理 等 なんでも許せる人向け

処理中です...