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第14話 ダンジョン
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村の西側の一番奥に、初心者ダンジョンはあった。村から離れた場所ではなく、誰もが気軽に行けるようになっているため、隣接している。ナツキもこれまで何度か入ったことのあるダンジョンだった。
見た目は洞窟なのだが、やはりゲームなので、中に入ると迷路のようになっている。初心者ダンジョンなので、あまり入り組んではいないが、ランダムで毎回迷路の形が変わるようになっている。
リュウトが左手首の端末を操作してパネルを開き、アイテムを取り出した。見たことのないアイテムだった。ちょうど手のひらに収まるサイズで、紋章のような形をしている。厚みはなく、布製のようにも見える。
ナツキは問いかけた。
「それは?」
「秘密兵器」
ニヤッとリュウトが笑った。
リュウトが紋章を洞窟に向けてかざすと、まばゆい光が二人を覆った。紋章は使用済みアイテムとして、消えてなくなっていく。
ふたりは同時に洞窟の中へと瞬間移動していた。仲間でなくても、まったくの見知らぬ他人でも、この瞬間に紋章をかざした者と同じ場所にいると、一緒に入れてしまう仕様になっている。
一度入ってしまうと、ボスモンスターを倒すか、ゲームオーバーにならないと出られない。
「行くぞ」
リュウトがさっさと歩きだす。ナツキは慌てて後を追った。
洞窟の中はダンジョンなので、うっすらと明るい。本物の洞窟とはだいぶ違う。真っ暗ではモンスターが見えないから、戦えなくなってしまう。なので少し明るくなっている。
ごつごつした岩肌の壁面には灯りが取りつけられており、炎が揺らめいているが、永久に消えない仕様だ。水をかけて無理矢理消そうとしても消えない。油を燃料にして燃えていることになっているが、燃え尽きることもない。
通常なら洞窟内でこれだけ炎が燃えていれば、酸素の心配をしなければならないが、そこもゲームなので心配は無用だ。
「そうだ。パーティを組もう、ナツキ。その方が効率いい」
突然、リュウトがそんなことを言い出した。
「パーティ?」
「今のままソロプレイヤーとしてモンスターと戦うと、経験値がそれぞれ分かれて入る。パーティを組んでいると、仲間として経験値が二人同時に入る。きっと、ほとんど俺が倒してしまうだろうから、そうなるとナツキには全然経験値が入らなくなるから、ナツキに経験値を入れるためにはパーティを組んだほうがいいんだ」
ナツキは少しためらったが、しぶしぶパーティを組むことにした。ナツキが何もしなくても、リュウトがモンスターを倒すだけで自動的にナツキにも経験値が入る。非常に楽にレベルアップできるということなのだが、ゲームとしての面白味が半減してしまうということでもある。
「向こうに着くまでの間だけなら」
という条件でパーティを組んだ。
パーティを組んだからと言って、見た目や行動が変わるわけではない。ステータス上で仲間だと表示されるだけだ。実際にモンスターを倒して経験値を得るまで、実感はない。
急にザワッと空気が変わった。モンスターの存在を感じる。エンカウントしたようだ。
リュウトとナツキは同時に身構えた。
「グワアッ」
暗い通路の奥から泥のバケモノのようなモンスターが現れた。人の形をしているが、まるでゾンビのような動きで、手や顔から泥が滴り落ちている。目と思われる辺りには黒い空洞しかなく、薄気味悪さばかりが漂っている。
つかもうとするかのように手を伸ばしてくる。リュウトの剣が閃いた。
ザンッ!
一瞬だった。泥のモンスターはあっという間に霧散し、アイテムや金貨をドロップする。パーティを組んでいるせいか、同じアイテムがナツキの元にも入ってきた。お得感が増す。
泥のモンスターは他にもいた。洞窟の奥から次々と姿を現す。ためらいのないリュウトの剣がしなやかに舞い、軽やかな足取りが地面を蹴る。
ザンッザンッザンッ!
次々に斬っていく。鮮やかな早さだった。まるで舞うように戦うその姿は美しく、ナツキはしばし見惚れていた。
「やっぱり弱いな」
泥のモンスターを倒し終えたリュウトが、物足りなさそうに小さくつぶやいた。振り返る。
「行くぞ、ナツキ」
「あ、うん」
走るリュウトを慌てて追った。
その後もモンスターは次々現れ、あっさりとリュウトに斬られていく。泥以外のモンスターも現れたが、やはり斬られていく。
リュウトがモンスターを斬れば斬るほど、ナツキの経験値が増えていき、レベルもあがった。ドロップアイテムも増えた。アイテム枠を空けるために、いらないものは売っていく。戦っていないのにこんなにあがっていいのだろうかと、軽く罪悪感を覚えるほどだ。
リュウトも同じように経験値は得ているのだが、すでにレベルが高すぎて、この程度の経験値ではもう何も変わらない。ドロップしたアイテムも増えてはいるが、アイテム欄の枠も多すぎるほどなので、増えすぎて困るようなこともないので放置している。
やがて洞窟の突き当たりに到着した。そこには小さな部屋があり、祭壇のようなものがあった。
「ここだな」
リュウトが小さくつぶやいた。
見た目は洞窟なのだが、やはりゲームなので、中に入ると迷路のようになっている。初心者ダンジョンなので、あまり入り組んではいないが、ランダムで毎回迷路の形が変わるようになっている。
リュウトが左手首の端末を操作してパネルを開き、アイテムを取り出した。見たことのないアイテムだった。ちょうど手のひらに収まるサイズで、紋章のような形をしている。厚みはなく、布製のようにも見える。
ナツキは問いかけた。
「それは?」
「秘密兵器」
ニヤッとリュウトが笑った。
リュウトが紋章を洞窟に向けてかざすと、まばゆい光が二人を覆った。紋章は使用済みアイテムとして、消えてなくなっていく。
ふたりは同時に洞窟の中へと瞬間移動していた。仲間でなくても、まったくの見知らぬ他人でも、この瞬間に紋章をかざした者と同じ場所にいると、一緒に入れてしまう仕様になっている。
一度入ってしまうと、ボスモンスターを倒すか、ゲームオーバーにならないと出られない。
「行くぞ」
リュウトがさっさと歩きだす。ナツキは慌てて後を追った。
洞窟の中はダンジョンなので、うっすらと明るい。本物の洞窟とはだいぶ違う。真っ暗ではモンスターが見えないから、戦えなくなってしまう。なので少し明るくなっている。
ごつごつした岩肌の壁面には灯りが取りつけられており、炎が揺らめいているが、永久に消えない仕様だ。水をかけて無理矢理消そうとしても消えない。油を燃料にして燃えていることになっているが、燃え尽きることもない。
通常なら洞窟内でこれだけ炎が燃えていれば、酸素の心配をしなければならないが、そこもゲームなので心配は無用だ。
「そうだ。パーティを組もう、ナツキ。その方が効率いい」
突然、リュウトがそんなことを言い出した。
「パーティ?」
「今のままソロプレイヤーとしてモンスターと戦うと、経験値がそれぞれ分かれて入る。パーティを組んでいると、仲間として経験値が二人同時に入る。きっと、ほとんど俺が倒してしまうだろうから、そうなるとナツキには全然経験値が入らなくなるから、ナツキに経験値を入れるためにはパーティを組んだほうがいいんだ」
ナツキは少しためらったが、しぶしぶパーティを組むことにした。ナツキが何もしなくても、リュウトがモンスターを倒すだけで自動的にナツキにも経験値が入る。非常に楽にレベルアップできるということなのだが、ゲームとしての面白味が半減してしまうということでもある。
「向こうに着くまでの間だけなら」
という条件でパーティを組んだ。
パーティを組んだからと言って、見た目や行動が変わるわけではない。ステータス上で仲間だと表示されるだけだ。実際にモンスターを倒して経験値を得るまで、実感はない。
急にザワッと空気が変わった。モンスターの存在を感じる。エンカウントしたようだ。
リュウトとナツキは同時に身構えた。
「グワアッ」
暗い通路の奥から泥のバケモノのようなモンスターが現れた。人の形をしているが、まるでゾンビのような動きで、手や顔から泥が滴り落ちている。目と思われる辺りには黒い空洞しかなく、薄気味悪さばかりが漂っている。
つかもうとするかのように手を伸ばしてくる。リュウトの剣が閃いた。
ザンッ!
一瞬だった。泥のモンスターはあっという間に霧散し、アイテムや金貨をドロップする。パーティを組んでいるせいか、同じアイテムがナツキの元にも入ってきた。お得感が増す。
泥のモンスターは他にもいた。洞窟の奥から次々と姿を現す。ためらいのないリュウトの剣がしなやかに舞い、軽やかな足取りが地面を蹴る。
ザンッザンッザンッ!
次々に斬っていく。鮮やかな早さだった。まるで舞うように戦うその姿は美しく、ナツキはしばし見惚れていた。
「やっぱり弱いな」
泥のモンスターを倒し終えたリュウトが、物足りなさそうに小さくつぶやいた。振り返る。
「行くぞ、ナツキ」
「あ、うん」
走るリュウトを慌てて追った。
その後もモンスターは次々現れ、あっさりとリュウトに斬られていく。泥以外のモンスターも現れたが、やはり斬られていく。
リュウトがモンスターを斬れば斬るほど、ナツキの経験値が増えていき、レベルもあがった。ドロップアイテムも増えた。アイテム枠を空けるために、いらないものは売っていく。戦っていないのにこんなにあがっていいのだろうかと、軽く罪悪感を覚えるほどだ。
リュウトも同じように経験値は得ているのだが、すでにレベルが高すぎて、この程度の経験値ではもう何も変わらない。ドロップしたアイテムも増えてはいるが、アイテム欄の枠も多すぎるほどなので、増えすぎて困るようなこともないので放置している。
やがて洞窟の突き当たりに到着した。そこには小さな部屋があり、祭壇のようなものがあった。
「ここだな」
リュウトが小さくつぶやいた。
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