悠久の大陸

彩森ゆいか

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第13話 アダルト空間への誘い

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 リュウトが口を開いた。ナツキはじっと彼を見つめて話を聞く。
「こっちの全年齢の世界と、裏側のアダルト空間は表裏一体なんだ。見た目はほとんど変わらない。だけど違う。向こう側でも同じクエスト同じモンスターが出てきて普通にクリアできる。でもこっちにはないクエストやモンスターもいるし、こっちにはないスキルがある。ようするに、表のゲームと同じだけど、追加されてるシステムがあるってこと」
「たとえば?」
「残念ながら、こっちでは言えない。表と裏は違うサーバーで運営されてるんだ。向こうでは普通に言える言葉が、こっちではNGワードとして登録されてる。言おうとするとピー音が入るようになってる」
「ピー音?」
「だから、ピー、ピー、ピーが、ピーで、ピー」
「……理解した」
「言いたくても言えないんだ。優秀なシステムだろ? 表のサーバーと裏のサーバーは自由に行き来できる。でも誰でも行けるわけじゃない。向こう側に行くためにはある条件を満たさないといけない。間違って紛れ込む人が現れないように厳重になってる。ようするに、より玄人向けになってる。安易には入れないんだ」
「へえ」
 ナツキはふと疑問に思い、口にした。
「もしフレンド登録やパーティを組んでる人がアダルト空間にいて、さっきみたいに呼んだら、ワープして誰でも行けたりしないんですか?」
「そう思うだろ? それがそうはいかないんだ。騙して裏に連れて行ったりしないように、できないようになってる。まあ、ある意味、犯罪防止だよな。やってみればわかるけど、エラーになって忠告メッセージが出る」
「なるほど」
「だから、条件を満たしてる俺は自由に行き来ができるけど、ナツキは条件をクリアしない限り向こう側に行くことはできないんだ。結構面倒くさいけど、やる?」
「……やって、みようかな」
 好奇心が勝ってしまった。
「直接連れて行くのは無理だけど、サポートはしてもいいんだ。ナツキが向こう側に行くためのサポートは惜しまないよ」
 そう言われても、右も左もわからないナツキは戸惑ってしまう。
「でも、何をすればいいのか、どこに行けばいいのか、全然わからないんだけど」
「そう。わからないようになってる。ネットで検索すると入口はここだとか、行くための攻略みたいなのがたくさんあるけど、入口は毎日のように変わるから攻略記事はあてにならないんだ。ある程度レベルあげてからじゃないと無理って書いてある記事とかもあるけど、そんなこともない。レベル一でも行こうと思えば行ける。行き方さえわかればね」
「でも、毎日入口が変わるのに、どうやって見つけたらいいのか……」
「まず一人じゃ無理だ。すでに向こう側に行ったことある奴がサポートしない限り、行くのなんて不可能だよ。なぜなら、自由に行き来できる人は今日の入口がどこにあるか知ってる。端末を見れば、書いてあるから」
「えっ、そうなんですか?」
「うん」
 ふふっとリュウトが笑った。
 ナツキは再び疑問が湧いたので質問する。
「でも、そしたらすでに行き来できる人がネットで、今日の入口はここだって書けば、大勢の人に知れ渡るんじゃ?」
「それが、そんな簡単なことでもないんだよ。入口に行くまでにクリアしないといけないことがいくつかあって、それらも毎日内容が変化するから。それに、たぶんだけど、それぞれにランダムに方法が割り振られてるみたいなんだ。俺に表示されてる方法はこれだけど、他の人に表示されてる方法は違う内容だったりね」
 途方のなさにナツキは深く息をついた。
「……入り組んでるんですね……」
「安易に入れないっていうのは大事なんだ。このゲームを長く運営し続けるには。誰でも簡単に入れるようになると、犯罪も増えてしまうし。ようは、アダルト空間への執念があるヤツしか行けない」
「なるほど」
 ナツキは思わず笑った。そして、さらに疑問が湧いたので質問してみた。
「じゃあ、アカウントの売買をされた場合は? アダルト空間に行ったことあるアカウントを売って、買った人が入れるようになる、みたいな」
「それも無理だよ。最初にゲームをスタートした時に脳波とアカウントが紐付けされて、すべてサーバーに記録されてる。売買して違う人間がアクセスしても、新規でキャラクターを作るところから始まって、購入したキャラクターではゲームを始めることができない。ちなみに家族が同じ機械でゲームした場合も、新規でキャラクターを作成するところから始まる。キャラクターの共有はできないんだ。だから、なりすますこともできない」
「なるほどね」
 思っていた以上に、このゲームは高度なシステムで成り立っているようだった。
「説明も終わったし、じゃあ行こうか」
 リュウトが両腕を高く持ち上げ、大きく伸びをした。ナツキは戸惑う。
「どこに?」
 リュウトがにやりと笑う。楽しそうな顔だ。
「村の中にある初心者ダンジョン」
「え?」
 ナツキはわけがわからぬまま、リュウトの後を追った。
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