11 / 80
第11話 スキル磨き
しおりを挟む
ナツキの行動範囲はまだ村とその周辺のみだった。村の外には洞窟などのダンジョンがあるのだが、そこはまだモンスターが強すぎて行けない。村の中にも初心者用のダンジョンがあり、ナツキはほぼそこの出入りを繰り返しているだけだった。
この頃になると、ナツキのレベルは十になっていた。初めのうちはレベルがあがるのも早い。だが、モンスターと戦ってばかりでは飽きるので、少し寄り道をすることにした。
技術スキルを上げるため、料理をしてみたり、裁縫をしてみたり、農作業をしてみたり、楽器を練習してみたり、発掘をしてみたり、商売をしてみたり、植物を採取してステータス回復のさまざまなポーションを作ってみたり、金塊を掘ってみたり、金属から武器や防具を作ってみたり、アイテム作成をしてみたり、あらゆるスキルのレベル一の段階のものだけ一通りかじったが、最終的に落ち着いたのは村の中にある釣り堀での釣りだった。
釣った魚は売り買いすることもできる。実際に店舗を持つのではなく、左手首の端末からデータ上だけに存在する架空の店を作り、そこにアイテムを登録して値段をつけて出品するのだ。買いたい人は自分の端末から大量の店にアクセスして、欲しい商品をリーズナブルな価格、あるいは高級なレアアイテムを大金をはたいて購入する。
とはいえそれらはゲーム内通貨のロンだけでやりとりをしているので、現実のお金が動くわけではない。
魚も料理も薬草類も武器もなんでも置ける。ゲームなので腐ることもない。村の店に売ることもできるが、出品したほうが高値で売れることもある。
ナツキはちょっと試しに作ってみたアイテムを登録してみたが、ゲーム初期の頃に作れるものはすべてのプレイヤーが作れるものでもあるので、当然ながら売れるわけがなかった。ただ、魚介類は料理スキルに使う人がいるのか、意外と売れる。
最終的に釣りにはまったのは売れるせいもあるのだが、釣りゲーム自体も面白かった。やはりそこはゲームなので、いつまでも釣れずに待ちぼうけになるようなこともなく、一定時間以上が経過すると必ず何かが引っかかるのだが、もっと高級な魚を釣りたかったら、釣り竿も高級なものを買う必要がある。課金すれば買えないこともないのだが、ナツキはそこまでしなかった。初心者用の安い釣り竿でも楽しいので、今はこれで満足だ。
だが、これらアイテムには耐久力というものがあり、使いすぎると最終的には壊れるようになっている。壊れたら修理に出すこともできるのだが、それが結構高い。
釣った魚をすべて売りさばいたが、初級レベルで釣れる魚なんてたかが知れている。思っていたよりもロンは増えておらず、高い武器や防具は買えそうになかった。これならモンスターと地道に戦ったほうが、よっぽどロンが増える。
しかし釣りスキルはあがった。さらにスキルの数値をあげるには、膨大な時間をかける必要があるのだが、さんざん釣りをして気が済んだナツキは次のことをしようと思った。
アイテム所持枠がまだ三十枠ぐらいしかないので、すぐにいっぱいになってしまうのが軽いストレスになっていた。
課金……。脳裏によぎった。二千円ほど出せば、アイテム所持枠があと二十枠は増やせられる。二千円なら出せない金額ではない。
だが、まだ当分は課金なんてしないだろうと思っていたナツキは、クレジットカードを登録していなかった。それをするためには、一回ゲームを中断して現実世界に戻らなくてはならない。
「うーん。しょうがないか」
ナツキは観念してゲームを中断した。
セーブは自動セーブなので何も操作はいらない。左手首の端末を操作してパネルを開き『ゲームを終了する』を選べばいいだけだ。たとえば家族に起こされ強引に中断されるなどの強制終了でも、それまでの記録は自動的にセーブされている。親切設計なのだ。
この頃になると、ナツキのレベルは十になっていた。初めのうちはレベルがあがるのも早い。だが、モンスターと戦ってばかりでは飽きるので、少し寄り道をすることにした。
技術スキルを上げるため、料理をしてみたり、裁縫をしてみたり、農作業をしてみたり、楽器を練習してみたり、発掘をしてみたり、商売をしてみたり、植物を採取してステータス回復のさまざまなポーションを作ってみたり、金塊を掘ってみたり、金属から武器や防具を作ってみたり、アイテム作成をしてみたり、あらゆるスキルのレベル一の段階のものだけ一通りかじったが、最終的に落ち着いたのは村の中にある釣り堀での釣りだった。
釣った魚は売り買いすることもできる。実際に店舗を持つのではなく、左手首の端末からデータ上だけに存在する架空の店を作り、そこにアイテムを登録して値段をつけて出品するのだ。買いたい人は自分の端末から大量の店にアクセスして、欲しい商品をリーズナブルな価格、あるいは高級なレアアイテムを大金をはたいて購入する。
とはいえそれらはゲーム内通貨のロンだけでやりとりをしているので、現実のお金が動くわけではない。
魚も料理も薬草類も武器もなんでも置ける。ゲームなので腐ることもない。村の店に売ることもできるが、出品したほうが高値で売れることもある。
ナツキはちょっと試しに作ってみたアイテムを登録してみたが、ゲーム初期の頃に作れるものはすべてのプレイヤーが作れるものでもあるので、当然ながら売れるわけがなかった。ただ、魚介類は料理スキルに使う人がいるのか、意外と売れる。
最終的に釣りにはまったのは売れるせいもあるのだが、釣りゲーム自体も面白かった。やはりそこはゲームなので、いつまでも釣れずに待ちぼうけになるようなこともなく、一定時間以上が経過すると必ず何かが引っかかるのだが、もっと高級な魚を釣りたかったら、釣り竿も高級なものを買う必要がある。課金すれば買えないこともないのだが、ナツキはそこまでしなかった。初心者用の安い釣り竿でも楽しいので、今はこれで満足だ。
だが、これらアイテムには耐久力というものがあり、使いすぎると最終的には壊れるようになっている。壊れたら修理に出すこともできるのだが、それが結構高い。
釣った魚をすべて売りさばいたが、初級レベルで釣れる魚なんてたかが知れている。思っていたよりもロンは増えておらず、高い武器や防具は買えそうになかった。これならモンスターと地道に戦ったほうが、よっぽどロンが増える。
しかし釣りスキルはあがった。さらにスキルの数値をあげるには、膨大な時間をかける必要があるのだが、さんざん釣りをして気が済んだナツキは次のことをしようと思った。
アイテム所持枠がまだ三十枠ぐらいしかないので、すぐにいっぱいになってしまうのが軽いストレスになっていた。
課金……。脳裏によぎった。二千円ほど出せば、アイテム所持枠があと二十枠は増やせられる。二千円なら出せない金額ではない。
だが、まだ当分は課金なんてしないだろうと思っていたナツキは、クレジットカードを登録していなかった。それをするためには、一回ゲームを中断して現実世界に戻らなくてはならない。
「うーん。しょうがないか」
ナツキは観念してゲームを中断した。
セーブは自動セーブなので何も操作はいらない。左手首の端末を操作してパネルを開き『ゲームを終了する』を選べばいいだけだ。たとえば家族に起こされ強引に中断されるなどの強制終了でも、それまでの記録は自動的にセーブされている。親切設計なのだ。
14
お気に入りに追加
438
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
松本先生のハードスパンキング パート1
バンビーノ
BL
中学3年になると、新しい学年主任に松本先生が決まりました。ベテランの男の先生でした。校内でも信頼が厚かったので、受験を控えた大事な時期を松本先生が見ることになったようです。松本先生は理科を教えていました。恰幅のすごくいいどっしりした感じの先生でした。僕は当初、何も気に留めていませんでした。特に生徒に怖がられているわけでもなく、むしろ慕われているくらいで、特別厳しいという噂もありません。ただ生活指導には厳しく、本気で怒ると相当怖いとは誰かが言っていましたが。
初めての理科の授業も、何の波乱もなく終わりました。授業の最後に松本先生は言いました。
「次の授業では理科室で実験をする。必ず待ち針をひとり5本ずつ持ってこい。忘れるなよ」
僕はもともと忘れ物はしない方でした。ただだんだん中学の生活に慣れてきたせいか、だらけてきていたところはあったと思います。僕が忘れ物に気がついたのは二度目の理科の始業ベルが鳴った直後で、ほどなく松本先生が理科室に入ってきました。僕は、あ、いけないとは思いましたが、気楽に考えていました。どうせ忘れたのは大勢いるだろう。確かにその通りで、これでは実験ができないと、松本先生はとても不機嫌そうでした。忘れた生徒はその場に立つように言われ、先生は一人ずつえんま帳にメモしながら、生徒の席の間を歩いて回り始めました。そして僕の前に立った途端、松本先生は急に険しい表情になり、僕を怒鳴りつけました。
「なんだ、その態度は! 早くポケットから手を出せ!」
気が緩んでいたのか、それは僕の癖でもあったのですが、僕は何気なくズボンのポケットに両手を突っ込んでいたのでした。さらにまずいことに、僕は先生に怒鳴られてもポケットからすぐには手を出そうとしませんでした。忘れ物くらいでなぜこんなに怒られなきゃいけないんだろう。それは反抗心というのではなく、目の前の現実が他人事みたいな感じで、先生が何か言ったのも上の空で聞き過ごしてしまいました。すると松本先生はいよいよ怒ったように振り向いて、教卓の方に向かい歩き始めました。ますますまずい。先生はきっと僕がふてくされていると思ったに違いない。松本先生は何か思いついたように、教卓の上に載せてあった理科室の定規を手に取りました。それは実験のときに使う定規で、普通の定規よりずっと厚みがあり、幅も広いがっしりした木製の一メートル定規です。松本先生はその定規で軽く素振りをしてから、半ば独り言のようにつぶやいたのでした。「いまからこれでケツひっぱたくか……」。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる