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第9話 フレンド登録
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しかし目の前の男はナツキを物色するように黙って眺めた後、いきなりピコンと電子音を立てた。ナツキの目の前になにやら画面が現れる。パーティの誘いの画面だった。
「え」
ナツキは慌てた。目の前には「リュウトさんからパーティの誘いがきています」「YES」「NO」の半透明なパネルが浮いている。
「俺と組むと楽にゲームが進められるけど?」
ナツキは困惑した。
「……あの、リュウト、さん? どうして俺を?」
リュウトはにやりと笑う。
「なんとなく、気に入ったから」
「……でも俺、マイペースに地道にゲーム進めたいんですよね。ゆっくりと噛み締めるように。一足飛びとかよりも。リュウトさん強そうだから、簡単に先に進めちゃいそうだし」
「あ、そういうの望んでない系?」
「望んでない系です」
リュウトは残念そうに、ふっと笑った。
「じゃあ、フレンド登録させて。フレンド登録は、三人までって決まってるパーティとは違って、無限に登録できるから」
「リュウトさん、誰とも組んでないんですか?」
「いや、組んだり組まなかったり、いろいろ。今はいない」
「なんで強そうなのに初心者エリアにいるんですか?」
「初心者しかいない場所だからだよ。新しい友達探そうと思って」
パーティの誘いのパネルは消えたが、今度は「リュウトさんからフレンドの誘いがきています」「YES」「NO」のパネルが現れた。
ナツキは迷いつつも指先を持ち上げて「YES」を押した。パネルがピコンと一回点滅し、キラキラと輝く。パネルがシュッと消えると「リュウトさんがフレンドになりました」という合成音声がナツキの脳内に響いた。
端末のパネルを開くと、確かにフレンド欄にリュウトの名前と顔アイコンがある。ステータスも載っていた。
「フレンド登録すると、お互い全然違う場所にいても連絡が取り合えるようになるんだ。パーティほど密接な関係じゃないけど、簡単なメッセージのやりとりぐらいならいつでもできる」
「へえー」
「俺に用があったらいつでも呼んで。わからないことがあれば、なんでも答えるから」
「あ、はい」
「じゃあ俺は、自分のレベルに合ったエリアに行くから。頑張って」
「あ、ありがとうございます」
ナツキは戸惑いつつも去っていくリュウトを見送った。風のように現れ、風のように去られ、いったいなんだったのかと思う。
改めて端末を開き、リュウトのステータスを眺めてみると、レベル百五十二と書いてある。
「……強すぎだろ」
素直にパーティを組めば、驚くほどのハイペースで経験値が入り、あっという間に強くなってしまうだろう。それではゲームの醍醐味がない。右も左もわからない状態で試行錯誤しながら進んで、地道にモンスターと戦って、少しずつ強くなるほうが絶対に楽しい。
誘われるままフレンド登録をしてしまったが、今後こちらから声をかける可能性は極めて低かった。そもそも、なんで彼が声をかけてきたのかさえも、よくわからない。
「まあ、いっか」
ナツキはゲームを再開することにした。手近なNPCの村人に話しかけ、新しいクエストをもらう。そうして地道にゲームを進めていくと、気づいた頃にはレベル五になっていた。
クエストにはストーリークエストという、ゲーム内でメインに扱われる物語がある。やるもやらないも自由だし、途中で脱線することも可能だ。悠久の大陸は自由度の高いゲームなのである。
ずっと釣りをしていることも可能だし、ずっと農作業していることもできる。料理の腕を極めたり、音楽の達人になることもできる。戦闘のプロにもなれるし、優秀な賢者になることもできる。その自由度の高さも、このゲームの人気の秘訣なのだ。自分のやりたいことだけをやり続けられる。
だから本来は、アダルト空間を探さなくても充分楽しめるゲームなのである。
弱い初期モンスターを倒すことにも慣れてきたナツキは、貯まったロンで買い物をすることにした。現在の所持金は八百二十五ロン。まだ強くて高級な武器や防具は買えないが、今よりも少しマシな装備が欲しかった。
村の中央によろず屋がある。武器も防具もその他の便利な道具もすべてここで売っている。無駄に移動しなくても済むので、一ヶ所でまとめて販売してくれるのはとても助かる。
現在の武器は短剣。防具は布の服と布の靴だ。木の棒は売っても二ロンでたいした額にはならず、新たに何が買えるだろうかと商品を物色した。
「え」
ナツキは慌てた。目の前には「リュウトさんからパーティの誘いがきています」「YES」「NO」の半透明なパネルが浮いている。
「俺と組むと楽にゲームが進められるけど?」
ナツキは困惑した。
「……あの、リュウト、さん? どうして俺を?」
リュウトはにやりと笑う。
「なんとなく、気に入ったから」
「……でも俺、マイペースに地道にゲーム進めたいんですよね。ゆっくりと噛み締めるように。一足飛びとかよりも。リュウトさん強そうだから、簡単に先に進めちゃいそうだし」
「あ、そういうの望んでない系?」
「望んでない系です」
リュウトは残念そうに、ふっと笑った。
「じゃあ、フレンド登録させて。フレンド登録は、三人までって決まってるパーティとは違って、無限に登録できるから」
「リュウトさん、誰とも組んでないんですか?」
「いや、組んだり組まなかったり、いろいろ。今はいない」
「なんで強そうなのに初心者エリアにいるんですか?」
「初心者しかいない場所だからだよ。新しい友達探そうと思って」
パーティの誘いのパネルは消えたが、今度は「リュウトさんからフレンドの誘いがきています」「YES」「NO」のパネルが現れた。
ナツキは迷いつつも指先を持ち上げて「YES」を押した。パネルがピコンと一回点滅し、キラキラと輝く。パネルがシュッと消えると「リュウトさんがフレンドになりました」という合成音声がナツキの脳内に響いた。
端末のパネルを開くと、確かにフレンド欄にリュウトの名前と顔アイコンがある。ステータスも載っていた。
「フレンド登録すると、お互い全然違う場所にいても連絡が取り合えるようになるんだ。パーティほど密接な関係じゃないけど、簡単なメッセージのやりとりぐらいならいつでもできる」
「へえー」
「俺に用があったらいつでも呼んで。わからないことがあれば、なんでも答えるから」
「あ、はい」
「じゃあ俺は、自分のレベルに合ったエリアに行くから。頑張って」
「あ、ありがとうございます」
ナツキは戸惑いつつも去っていくリュウトを見送った。風のように現れ、風のように去られ、いったいなんだったのかと思う。
改めて端末を開き、リュウトのステータスを眺めてみると、レベル百五十二と書いてある。
「……強すぎだろ」
素直にパーティを組めば、驚くほどのハイペースで経験値が入り、あっという間に強くなってしまうだろう。それではゲームの醍醐味がない。右も左もわからない状態で試行錯誤しながら進んで、地道にモンスターと戦って、少しずつ強くなるほうが絶対に楽しい。
誘われるままフレンド登録をしてしまったが、今後こちらから声をかける可能性は極めて低かった。そもそも、なんで彼が声をかけてきたのかさえも、よくわからない。
「まあ、いっか」
ナツキはゲームを再開することにした。手近なNPCの村人に話しかけ、新しいクエストをもらう。そうして地道にゲームを進めていくと、気づいた頃にはレベル五になっていた。
クエストにはストーリークエストという、ゲーム内でメインに扱われる物語がある。やるもやらないも自由だし、途中で脱線することも可能だ。悠久の大陸は自由度の高いゲームなのである。
ずっと釣りをしていることも可能だし、ずっと農作業していることもできる。料理の腕を極めたり、音楽の達人になることもできる。戦闘のプロにもなれるし、優秀な賢者になることもできる。その自由度の高さも、このゲームの人気の秘訣なのだ。自分のやりたいことだけをやり続けられる。
だから本来は、アダルト空間を探さなくても充分楽しめるゲームなのである。
弱い初期モンスターを倒すことにも慣れてきたナツキは、貯まったロンで買い物をすることにした。現在の所持金は八百二十五ロン。まだ強くて高級な武器や防具は買えないが、今よりも少しマシな装備が欲しかった。
村の中央によろず屋がある。武器も防具もその他の便利な道具もすべてここで売っている。無駄に移動しなくても済むので、一ヶ所でまとめて販売してくれるのはとても助かる。
現在の武器は短剣。防具は布の服と布の靴だ。木の棒は売っても二ロンでたいした額にはならず、新たに何が買えるだろうかと商品を物色した。
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