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第7話 初めての戦闘
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布の服、布の靴、武器は短剣しかない。
チュートリアルクエストだからモンスターは弱いはずだが、それでも生まれて初めての戦闘は緊張する。心臓が激しく鼓動し、全身の血の気が引き、喉がカラカラになる。短剣を握る手が小刻みに震える。
ナツキの身体は実体ではなく、電子で構成されたコンピューターの中の存在だ。ナツキというひとりのプレイヤーの情報を持った、ただのデータだ。脳波がゲーム世界と繋がっているだけの状態だが、それでも普段生きているのと変わらない身体の変化が起きている。ドキドキもするし、緊張もする。仮想空間の中に存在しているが、体感は本物だった。
先程までやっていた作業系や生産系のチュートリアルクエスト中でも、体感は本物だと思っていたが、戦闘になると一段と実感する。
冷や汗で額が濡れ、緊張で息苦しくなる。ごくりとむりやりツバを飲み込み、周囲の気配を探る。モンスターの姿はまだ見えない。だが、確実にロックオンはされている。いつどこから飛び出してくるのかと、ひたすら待ち続ける。
「チューッ」
一匹の巨大なネズミがナツキの目の前に飛び出してきた。一定の距離を保つのがゲーム内ルールなのか、不意打ちで飛びかかってはこなかった。そういう風にプログラムされているのだろう。薄暗い物置の中だが、モンスターを取り巻くようにうっすらと光が見え、その姿がちゃんと目で確認できるようになっている。
凶悪な顔をした巨大なネズミは、大型犬ほどの大きさだろうか。毛並みはグレーで硬そうだ。正直な気持ち、怖いという感情が先に立った。コントローラーを握って遊ぶRPGでは、一番最初に出てくるモンスターはかわいい姿をしているものが多かった。なんとなくそんな感覚で物置にやってきたのだが、どうやらこのゲームのモンスターはリアルに近い姿になっているらしい。アニメのような絵柄ではなかった。
これでは怖じ気づく初心者ゲーマーも多そうだなとナツキは思った。
「チューッ」
モンスターのネズミが鳴いた。こちらに飛びかかってこようと前足を床に叩きつける。牙を剥きながら跳んだ。ナツキは焦りながらも短剣を振り上げた。当たった。確実な手応え。
シューッと霞のようにモンスターのネズミが消えた。呆気なかった。
「え、お、終わり?」
ナツキは戸惑ったが、ネズミが消えた辺りの地面には、わずかな通貨とアイテムのチーズが落ちていた。ネズミのモンスターからドロップされたものだ。ステータスを確認すると、わずかながら経験値も増えていた。
チュートリアルクエストの内容を確認すると、どうやら今のと同じネズミを十体ほど倒さねばならないらしい。この物置は狭そうだが、そんなにたくさんのネズミがいるのか。
ドクンッと空気が変わった。新しいモンスターがエンカウントしたのだ。毎回一匹ずつ出てくるらしい。これを十回も繰り返すのか。まだゲームは始まったばかりなのに、ナツキは少々うんざりとした。コントローラーを握って戦うのとはまるで違う緊張と疲労感があったからだ。
「チューッ」
次のネズミが現れた。少し慣れてきたナツキは、大きく深呼吸をした。改めてネズミを真っ向からにらみつける。
チュートリアルクエストだからモンスターは弱いはずだが、それでも生まれて初めての戦闘は緊張する。心臓が激しく鼓動し、全身の血の気が引き、喉がカラカラになる。短剣を握る手が小刻みに震える。
ナツキの身体は実体ではなく、電子で構成されたコンピューターの中の存在だ。ナツキというひとりのプレイヤーの情報を持った、ただのデータだ。脳波がゲーム世界と繋がっているだけの状態だが、それでも普段生きているのと変わらない身体の変化が起きている。ドキドキもするし、緊張もする。仮想空間の中に存在しているが、体感は本物だった。
先程までやっていた作業系や生産系のチュートリアルクエスト中でも、体感は本物だと思っていたが、戦闘になると一段と実感する。
冷や汗で額が濡れ、緊張で息苦しくなる。ごくりとむりやりツバを飲み込み、周囲の気配を探る。モンスターの姿はまだ見えない。だが、確実にロックオンはされている。いつどこから飛び出してくるのかと、ひたすら待ち続ける。
「チューッ」
一匹の巨大なネズミがナツキの目の前に飛び出してきた。一定の距離を保つのがゲーム内ルールなのか、不意打ちで飛びかかってはこなかった。そういう風にプログラムされているのだろう。薄暗い物置の中だが、モンスターを取り巻くようにうっすらと光が見え、その姿がちゃんと目で確認できるようになっている。
凶悪な顔をした巨大なネズミは、大型犬ほどの大きさだろうか。毛並みはグレーで硬そうだ。正直な気持ち、怖いという感情が先に立った。コントローラーを握って遊ぶRPGでは、一番最初に出てくるモンスターはかわいい姿をしているものが多かった。なんとなくそんな感覚で物置にやってきたのだが、どうやらこのゲームのモンスターはリアルに近い姿になっているらしい。アニメのような絵柄ではなかった。
これでは怖じ気づく初心者ゲーマーも多そうだなとナツキは思った。
「チューッ」
モンスターのネズミが鳴いた。こちらに飛びかかってこようと前足を床に叩きつける。牙を剥きながら跳んだ。ナツキは焦りながらも短剣を振り上げた。当たった。確実な手応え。
シューッと霞のようにモンスターのネズミが消えた。呆気なかった。
「え、お、終わり?」
ナツキは戸惑ったが、ネズミが消えた辺りの地面には、わずかな通貨とアイテムのチーズが落ちていた。ネズミのモンスターからドロップされたものだ。ステータスを確認すると、わずかながら経験値も増えていた。
チュートリアルクエストの内容を確認すると、どうやら今のと同じネズミを十体ほど倒さねばならないらしい。この物置は狭そうだが、そんなにたくさんのネズミがいるのか。
ドクンッと空気が変わった。新しいモンスターがエンカウントしたのだ。毎回一匹ずつ出てくるらしい。これを十回も繰り返すのか。まだゲームは始まったばかりなのに、ナツキは少々うんざりとした。コントローラーを握って戦うのとはまるで違う緊張と疲労感があったからだ。
「チューッ」
次のネズミが現れた。少し慣れてきたナツキは、大きく深呼吸をした。改めてネズミを真っ向からにらみつける。
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