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第5話 蝶は愛される

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 以来、霧也は頻繁に通って来るようになった。
 いつも俺を指名してくれる。
 俺が知らないだけで、他の人も指名していたらどうしよう。
 そんなこともちらっと思ったりしたこともある。
 でも詮索はしないようにしていた。
 俺だけを指名してくれている、と思い込んでいたほうが幸せだからだ。
 霧也とすると、他の誰とするよりも気持ちよかった。
 心も身体も満たされる。
 そんな風になるのは霧也が相手の時だけだ。

 着物をはだけた俺の足の間で、玉を優しく撫でさすりながら、霧也が俺の竿を頬張っている。
 他の客の時は、俺がそれをやる役目だ。
 霧也はなぜか、俺がより気持ちよくなるように、いろいろしてくれる。
 竿の根元から先っぽまでを、舌で丁寧に舐め尽くし、口に入れて頭を上下に動かしている。
 俺はベッドの上で仰向けになって身悶え、霧也の行為を享受する。
 男娼と客じゃない。
 俺たちは愛し合っている。
 いつしかそんな風に思うようになっていた。
「うっ、くっ」
 びくびくと震えて、吐精した。霧也は迷わず喉を鳴らして嚥下している。
「アキト、今日はどうしたい?」
 霧也が息をつき、問いかけてきた。
「……なにが?」
「正常位がいいか、立ちバックがいいか、騎乗位がいいか、わんわんスタイルがいいか。選んでくれ」
「……わんわんスタイルってなんですか……?」
「後背位。四つん這いで後ろから挿れる」
 慣れているから平気なはずなのに、ちょっと恥ずかしくなったのはなんでだろう。
「俺はどれでもいいです」
「選んでくれよ」
「じゃあ……わんわんで」

 四つん這いというよりも、上半身うつ伏せで、尻だけを高く上げた体勢だった。
 崩れて乱れた着物を纏ったまま、はだけた尻を突き出している。
 霧也ががっしりと腰をつかんだ。
「あんっ、んっ」
 背後から深々と貫かれたかと思えば、急に両腕を後ろからつかまれる。
「うっ」
 腕だけ後ろに引っ張られた。肩が痛い。抜けそうだ。
 ガツガツと尻を突かれ、ガクガクと全身が揺れる。
「うっ、くっ、んぅっ、うっ」
「レイプしてるような気分になるな」
「……悪趣味ですね」
 上半身を起こされた。二の腕をつかまれ後ろに引っ張られるせいで、上半身がのけぞってしまう。
 ズンッと突かれた。
「うぁっ」
 勢いよく腰を叩きつけられる。突かれるたびに全身がガクガクと揺れる。
「あっ、ひぁっ、あぁっ、あっ、んっ」
「むりやりしているような気分になるな」
 霧也の声は嬉しそうだ。
 さんざん突き上げ俺を鳴かせた後、霧也は俺を羽交い締めにした。
「あぁっ」
 そのままガクガクと揺らされる。うなじのそばに霧也の顔があり、今にも噛まれるのではないかという予感に震えた。
 チョーカーに守られたうなじが本当に噛まれることはなかったが、噛まれるかもしれない、噛まれないかもしれないというスリルはあった。
 霧也の腰が叩きつけられるたび、熱くて大きなものが容赦なく出入りし、俺の奥まで蹂躙してくる。
「うぁっ、あっ……んっ、くっ、はっ、あぁっ」
 なにも考えられない。
 俺はもうただ鳴き叫ぶだけの生き物だった。
 熱い粘膜をガツガツと突き上げられ、脳が煮えたようにぐらぐらとする。
 どくんっと霧也が達し、中に熱いものが注ぎ込まれた。
「うっ、あぁっ……」
 気が遠くなる。
 気持ちよすぎて狂いそうだ。
 ラットじゃない時の霧也の竿の根元には、コブのようなものは出ない。
 だから射精の仕方も量も普通だ。
 ヒートとラットの交わりの時のような、狂ったあの感覚とは違っていた。
 達したら冷静さを取り戻してしまう霧也を、俺はぼんやりと眺めた。
「よかったか?」
「……ん……」
 俺はこくりとうなずいた。
 優しく頭を撫でられる。心地よかった。

 俺は霧也のものになりたい。
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