ひとりでこっそり暮らしていた僕はクマ獣人と幸せになります

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静かな涙

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ベッドで目を覚ました僕の横には床に座って頭を下げるルーカスさんがいる。

「すまなかった。酒と媚薬のせいとは言えめちゃくちゃに抱いてしまった。フィルは初めてなのに・・・。本当にすまない。昨日のことはできれば無かったことにしてくれ!もっと、もっとちゃんとするつもりだったんだ。こんなはずでは無かったんだ!」

僕は体のあちこち、特にアソコが痛くてまともに動けない。
媚薬による体の疼きはすっかりなくなっているが、倦怠感と頭痛、喉の痛みに苦しむ僕はそんなルーカスさんをぼーっと見つめている。

フィルは初めてなのに・・・ってことはルーカスさんはすでに経験があったってことか。
だからどうした。
そんなの普通のことなんだろう?多分。
僕は今までずっと一人だったから正直、みんながどれくらいの年齢で初めての経験をするのかわからない。
僕は今18歳。この前この国では18歳から成人だと教えてもらった。
だから僕ももう成人だ。
こういうことをしても許される年齢だ。

でも、初めて知った。
男同士で性交できることを。
肌と肌が触れ合う気持ちよさを。
気持ちがいいと白い液体が出ることを。
自分の名前を何度も呼ばれる嬉しさを。
大きな体で包み込まれる安心感を。

その全てを目の前のこの男から教えられた。
正直怖かった。自分でも見たことがない場所を暴かれあんなにも巨大なモノを入れられるのは。
痛かったし苦しかった。
でも、途中からこんなにも僕に執着するこの人が愛おしく思えた。
僕を求めてくれるのが嬉しかった。

でも、あれは事故だ。薬と間違えて媚薬を飲んだのは自分だ。
ルーカスさんもその被害者だ。
その結果、こんな過ちを犯してしまったんだ。

だからこんなに頭を下げて謝罪しているんだろう。
あれは過ちだったから・・・。
そう、間違いだったんだ。
無かったことにしようと言うのはそう言うことだろ?

僕は謝って欲しいわけじゃない。
僕を抱いたことを後悔してほしくない。

なんでこんなこと思うんだろう。
一緒に暮らすようになって、一緒に毎日ご飯を食べて、一緒に洗濯して、一緒に掃除して、一緒に店の整理して。
僕の生活にはいつの間にかルーカスさんが入り込んでいる。
それが最近当たり前だった。
もう家の中では偽物の耳と尻尾はつけないし、外套も着ていない。
僕の素顔を見られることになんの抵抗もなくなっていた。
初めて、母さん意外に気を許せる人ができたんだ。
「おはよう」「おやすみ」を言える関係になれたんだ。



でも・・・僕は人族。ルーカスさんは獣人。
決して交わることはないんだ。
体の関係を持ったとしても将来が約束されるわけじゃない。

離れよう。それしかない。これ以上この男に後悔させないように。
番がいなくなると狂ってしまうと言っていたけど、多分大袈裟に言っただけだろう。
僕がいなくなれば他を探すだけだ。



体が動くようになったら、この家を出よう。
僕は涙を見られないように、そっと窓側を向いた。










ルーカスside

やってしまった。
初めてフィルを抱くときには優しく快楽でトロトロするつもりだった。

だが、行為が終わって正気に戻ったとき目の前には身体中に噛み跡があり頸からは血を流して気を失っているフィルがいた。
フィルが気を失っていることには途中から気づいていたが止められなかった。
酒と媚薬を飲んでいたからと許されることじゃない。
フィルは何も知らなかったはずだ。
初めての性行為がこんなことではトラウマになってしまうかもしれない。
俺のことを怯えるようになるかもしれない。
それだけはなんとかして避けなければ!!

最近やっとフィルは俺に心を許してくれるようになったんだ。
薬草を育ててくれて、閉店した後は一緒に薬の補充も手伝ってくれるようになった。
俺は毎日毎日番とともに居れることが嬉しくて幸せだった。
この幸せを壊したくない。

とにかく謝ろう。謝って済むことではないが俺にはそうすることしかできない。
こんなはずじゃ無かったんだ。
できればもう一度最初から抱き直したい。
昨日のことは忘れて、もう一度愛を確かめ合いながら優しく抱きたい。

フィルは何も言わなかった。
ただ、俺の謝罪を聞いてるだけだった。
いや聞いているのかもわからなかった。途中から顔を窓側に向けてしまってフィルの表情が見えなかった。
だが、動けないフィルの体を拭いたり、着替えさせたりと触れることに拒絶はされなかったから安心した。
きっと声が掠れて喋りたくても喋れないんだろう。

首を縦に振ったり横に振ったりと意思表示はしてくれたから、てっきり許してくれたと思っていた・・・。




その三日後フィルは少しぎこちないが動けるようになりほっとした。
だが、喉はまだ痛いみたいであまり喋ることはなかった。


俺はフィルとの関係を確かなものにするために、フィルに留守番を頼んであるところに向かった。
宝石店だ。
この国では伴侶がいるものは互いに首飾りをつける風習がある。
フィルにプロポーズするために数日前に頼んでいた首飾りを取りに来たんだ。
俺が身につけるものは漆黒のブラックダイヤモンド。
フィルがつけるものは琥珀色のアンバーストーン。
互いの瞳の色だ。

この首飾りを贈りプロポーズをしよう。
特別な場所ではなくいつもの家になるが早くこれを渡したい。
フィルは喜んでくれるだろうか。
俺の思いを受け取ってもらえるだろうか。

期待と緊張でソワソワしながら家に帰った。


「ただいまー」

いつもはお帰りなさいと返してくれるが返事はない。
まぁ喉を痛めているからな。

2階に上がり部屋を覗く。
あれ?シャワーを浴びているのか?

風呂場を覗くがいない。
トイレにもいない。
裏庭にもいない。




フィルの荷物が・・・ない。

俺は手に持っていた首飾りが入った箱を床に落とした。












すんごくいいところですが、1週間投稿おやすみします。
申し訳ありません!!!!


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