ひとりでこっそり暮らしていた僕はクマ獣人と幸せになります

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薬には要注意

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ルーカスside


フィルに「人族に会えるかもしれないから」と俺の家に無理やり留まらせた。
人族は絶滅したかもしれないと言われており、もし居たとしてもおそらく会えることはないだろう。
フィルは自分と同じ人族に会えるかもしれないと期待しているため良心が痛むが、フィルと離れることができないためなんとしても一緒にいる理由が必要だったんだ。
許してくれフィル。




フィルは俺の家の裏庭で植物を育て始めた。庭の半分は野菜、もう半分は薬草だ。
薬草の実物を見れば、それを頭の中で想像し自分の髪一本を土に埋める。
すると次の日にはもう薬草が手に入る。
何度見ても不思議な力だ。

だがそのおかげで高い薬草を仕入れる必要がなくなり、その分安く販売できる。
店の売り上げも上々だ。

フィルの家には週1回一緒に行く。
フィルが友達だという動物たちは冬眠から覚め、毎日家に来ているようだ。
その子達が飢えないようにと、せっせと1週間分の植物を育てるフィル。

一方動物たちは、たまにしか顔を見なくなったフィルを心配しているようだ。
玄関の前には木の実がたくさん積まれていた。
心配した動物たちがフィルのために運んだのだろう。
言葉は通じないと言うのに不思議な光景だ。

「みんな。僕は週に一度しか来ないけど、植物はたくさん植えてるから心配しないでね。あと僕がいない間は家を守ってくれると嬉しいな。」

動物に話しかけるフィルが可愛らしい。
動物たちもまるで「了解した」というふうに耳をピクピクさせている。




そんな生活が続いたある日、常連のお客さんからお酒をいただいた。
もし、フィルが飲めるなら晩酌でもしよう。

夕飯を食べ終わり、まったりしているフィルを誘うと。
「僕、お酒飲んだことがないので自分が飲めるかわからないんです」
と言った。

この国では成人は18歳からだが酒の年齢制限はない。
だから皆だいたい15歳を過ぎたくらいから飲み始める。

「なら試しに飲んでみないかい?もし飲めそうになかったらやめたらいいよ」

「・・・そうですね。ではいただきます。」


グラスに注いで乾杯。
一口味わうと果実のいい香りがしてうまい。
これなら初めてのフィルも飲めるだろう。

「・・・これ本当にお酒ですか?とても美味しいです」

「よかった。気に入ったなら遠慮せずに飲んで」

それから、フィルは何杯もおかわりした。
白い頬がピンク色に染まり、少しぼーっとした姿がなんとも色っぽい。
これはまずい。今まで、理性をフル稼働して自分の性欲を隠してきたのにお酒の間違いで襲ってしまいましたなんてあってはならない。
「・・・フィル。流石にもうやめといたらどうかな。酔いは後から来るからね」

「わかりました。おいしくてつい飲み過ぎちゃいました。」

「念のため二日酔いの薬を飲んでおくかい?」

「そうですね。じゃ僕とってきます」

「場所はわかるかい?」

「はい。最近薬品の補充を手伝っているので覚えました。」

「なら俺は水を用意しておくよ。」

フィルは少し足元がふらついているがすぐ近くだし大丈夫だろう。
新たなコップを二つ用意し水を酌み待っていると、薬を手にしたフィルが戻ってきたのだが

「あのルーカスさん。店の外側に誰かいるみたいなんですけど・・・」

「え?誰だろう。ちょっと見てくるよ」
とっくに店を閉めているのに・・・と思いながら向かうと。
子供が熱を出したので解熱剤を売って欲しい、という近所の女性だった。

薬局を経営しているとたまにこういうことがあるんだ。
その女性に解熱剤を渡し、リビングに戻るとフィルはもう薬を飲んだ後だった。

薬は液体で水に薄めて飲むタイプだ。
「ルーカスさんのお水にも入れてますからどうぞ」
と言われ

「ありがとう」とその水を一口飲むと・・・あれ?こんなに甘かったか?
もう一口飲む・・・やはりおかしい。この薬は少し苦味があるはずで甘いわけないんだが。

「フィル?薬が入っていた瓶み見せてくれないかい?」

「瓶ですか?はい、これです。」

「こっこれは!!・・・フィル、これは二日酔いの薬じゃないよ!これは媚薬だよ!!」
獣人には一年に一度発情期がある。カップルまたは伴侶の発情期に付き合うために媚薬を買い求める客がいるため店で売っているんだ。
酔い止め薬は赤色、媚薬は濃いピンク。
確かに色が似ている。フィルが間違えるのも無理はない。

「え!?びっ媚薬???・・・そういえばさっきから体が熱くて・・・はぁはぁ・・・」
フィルの頬はさっきよりも上気しており、呼吸が乱れている。

そういう俺も体が熱い。
酒を飲んでる上に媚薬を飲んでしまうと、たとえ少量でも効果は倍増する。
これはまずい。理性が抑えきれない。
今すぐ離れないと!!

「フィル!一緒にいてはダメだ。俺はフィルを傷つけたくない。二階に上がれそうか?」

「はぁはぁはぁ・・・だめ・・です。体が動かない」

「・・・わかった。俺が運ぼう」

俺もそろそろ限界だ。本当は目の前のフィルを犯したくて犯したくて堪らないんだ。
少しでも触れてしまうともう我慢できないかもしれない。
だが、ソファーでは気が休まらないだろう。なんとか運ぶまで持ってくれよ俺の理性!!!!













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