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同じ屋根の下
しおりを挟むルーカスside
雪が本降りになったことを理由にフィルを家に招いた。
実は本降りになるまで待ってましたとは口が裂けても言えない・・・。
我が家は店の奥と2階が住居スペースだ。
2階は寝室で、一階はリビングになっている。
リビングにフィルを通して、あったかいお茶を用意する。
「ありがとうございます」
と言い、小さなお口でフーフーしている。その唇に吸いついてもいいだろうか、いやいいわけがない。
俺の家にフィルがいるだけで俺の脳内は花びらが舞い、ラッパが鳴りっぱなしだ。
だめだだめだ!冷静にならないと!せっかく家に来てくれたんだから怖がらせないように、まずは世間話でも。
「雪止むといいねぇ。フィルは隣の街に住んでいるのかい?」
「いえ・・・隣町ではありません。」
「違うのかい?じゃあいつもどこから来てるんだい?」
「それは・・・すごく遠いところです」
「そうなのか、でも街ならここ以外にもあるだろう?どうして遠いこの街に野菜を売りに来てるんだい?」
「・・・シエルさんがとても親切だから」
「なるほど!実は俺もシエルさんにはたくさんお世話になっているんだよ。薬局を経営するには薬学の知識だけじゃやっていけないからね。経営について相談に乗ってもらってるんだ」
「そうなんですか。」
「あっ!!俺家に連れてきちゃったけど、家族が待っているだろう?心配するかもしれないね」
「・・・それは大丈夫です。僕は一人暮らしなので」
「え?・・・フィルは今いくつだい?」
「18歳です」
「18!????あっ、すまないもう少し下だと思っていた。フィルは可愛らしいから」
「やめてください。僕は全然可愛くないですよ」
「そんなことないさ!俺はフィルの顔を初めてみた時、可愛すぎて死ぬかと思ったくらいだ!」
「ふふふっ僕の顔で死なれたら困りますよ」
「ーーーーっ!!!!やっぱりすごく可愛いよ。・・・」
フィルの笑顔が俺を萌え死にさせようとしている。
これはまずい。心拍数と俺の息子が。
(我が息子よ、静まりたまえ。お前の出番はいつか必ず訪れる!)
この笑顔を誰にも見られてはいけない。
俺だけに向けてもらわなければ!
フィルは恋愛には疎そうだし、まずは家族と仲良くなるのも手かもしれない。
「18歳なら親元を離れて暮らしているんだね。寂しくないかい?」
「いえ、僕の両親はいません。父は生まれた時からいませんでしたし、母は5年前になくなりました。兄弟もいません」
フィルは一人暮らしなのか。
1人で生計を立てるのはまだ若いフィルには困難が多いだろう。
誰か助けてくれる人はいるのだろうか。
「・・・そうだったのか。辛い思いをしたね。じゃ、あの売りに来てる野菜もフィル一人で作っているのかい?」
「そうです」
「一人だと大変だろう?俺にできることはないかい?」
「大丈夫です。これまでも一人でやってこれましたし、これからも大丈夫です」
大丈夫だとフィルは言うが、その目は寂しを含んでいる。
今まで誰にも頼ることができず、なんとか自分で頑張ってきたことが今では当たり前になっているんだろう。
「そうか。でももし何か困ったことがあったら遠慮なく頼ってほしい。」
「どうしてルーカスさんは僕にそこまでしてくれるんですか?」
「君が何よりも大切だからだよ。」
本当は愛を伝えたい。
君が番かもしれないと伝えたい。
だが、まだ早い。
もっと仲良くなってからでないと!
「・・・僕にはよくわかりません。」
「今はそれでいいよ」
そんな会話をしていると雪がさらに激しく降り出した。
これはもう外に出ない方が良さそうだ。
「フィル、雪が激しくなってきた。この中を帰るのは危険だ。雪は明日まで止みそうにないから今日は泊まっていってくれ」
「え?泊まる?そこまで迷惑はかけれません!」
「迷惑じゃないよ。むしろ俺のことを思うなら泊まっていってほしい。この中を帰ると言われたら俺は心配で眠れない」
しばらくフィルは悩んでいたが、最後には折れてくれた。
フィルが泊まることが決まり、踊り出したいほど嬉しいけど、顔には出さずに夕飯の準備をする。
「風呂の準備をするから、夕飯を作っている間に入っておいで」
大丈夫だよ。フィルの裸を想像して夕飯が作れませんでしたなんてことにはならないようにするから。
でも、風呂上がりのフィルを見て俺は我慢ができるのか?いや、我慢するんだ!
我が息子をへし折ってでも平常心を保つんだ!がんばれ俺!!
「お風呂は結構です」
なにーー!?
俺の楽しみが奪われてしまう!
「だめだよ。体が冷えているだろうからしっかり暖まらないと。ほら外套脱いで?」
「!?ぼっ僕、お風呂入ってきます!!!」
外套を脱げせようとしたら急にお風呂場に行っちゃった。
もしかして、照れてるのかもしれない。本当に可愛いなぁ。
外套脱いだくらいじゃ、俺は興奮しないよ(多分)。
その頃フィルは正体がばれそうになって焦っていたなんて俺は全然知らなかったよ・・・。
短編で終わらす予定だったのですが、ちょっと長くなりそうで・・・。
長編に変更します。ごめんなさい。
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